「看護師になりたいけど、大学に行く必要があるの?」
「専門学校でも同じ資格が取れるなら、大学に行く意味は?」
これらは看護師を目指す際に、多くの人が抱える疑問です。
確かに、日本では看護師になるために複数の教育ルートがあり、どの道を選んでも同じ国家資格を取得できます。では、なぜわざわざ4年制大学を選ぶ人がいるのでしょうか?
この記事では、看護師を目指す皆さんが抱える疑問に対して、客観的な視点から大学と専門学校の違いを解説します。
看護師になるための3つのルート
まず、看護師になるための主な教育ルートを確認しましょう。
- 専門学校(3年制)
- 最短で看護師資格を取得できる
- 実習時間が多く、実践的なスキルが身につく
- 学費が比較的安い
- 短期大学(3年制)
- 専門学校と同じ3年間で卒業
- 短期大学士の学位を取得できる
- 地域によっては選択肢が少ない
- 大学(4年制)
- 学士の学位を取得できる
- 幅広い教養科目を学べる
- 研究や論文作成のスキルが身につく
どのルートを選んでも、卒業後は同じ看護師国家試験を受験し、合格すれば看護師として働くことができます。
2025年3月に発表された第114回看護師国家試験では、合格率が90.1%(新卒者は95.9%)となっています。
大学・短期大学・専門学校の進学情報サイト
なぜ「大学は必要?」という疑問が生まれるのか
この疑問が生まれる背景には、以下のような理由があります。
- 大学の方が学費が高い傾向にある
- 4年間の学費・生活費は3年間より負担が大きい
- 1年早く働き始められる専門学校の魅力
- 看護師は「手に職」の実践的な仕事
- 専門学校の方が実習時間が多いという認識
- 現場ですぐに活躍したいという希望
- どのルートでも就職率はほぼ100%
- 初任給の差は月額5,000円~10,000円程度
- 年収換算すると約10万円の差
- 「結局同じ仕事をするなら」という考え
- とりあえず看護師になることが目標
- キャリアアップや専門性についてまだ考えていない
- 大学院進学や研究職は視野にない
大学と専門学校
それぞれの特徴を比較
では、実際に大学と専門学校にはどのような違いがあるのでしょうか。主要な項目で比較してみましょう。
教育内容の違い
専門学校
- 看護に特化したカリキュラム
- 実習時間が全体の約1/3を占める
- 即戦力となる実践的スキルの習得に重点
大学
- 一般教養科目(語学、心理学、社会学など)も必修
- 看護研究や統計学など、研究手法も学ぶ
- 批判的思考力や問題解決能力の育成に重点
取得できる資格・学位
専門学校
- 看護師国家試験受験資格
- 専門士の称号
大学
- 看護師国家試験受験資格
- 学士(看護学)の学位
- 保健師・助産師の受験資格(選択制の大学が多い)
- 養護教諭一種免許状(一部の大学)
卒業後のキャリアパス
専門学校卒業
- 臨床現場での即戦力として活躍
- 経験を積んでから認定看護師を目指す
- 働きながら大学や大学院に編入学する道もある
- 専門学校卒業後に助産師・保健師養成校への進学も可能(1年制)
大学卒業
- 臨床現場での活躍はもちろん可能
- 大学院進学がスムーズ(専門看護師、教育・研究職への道)
- 管理職への昇進が比較的早い傾向
- 一般企業への転職時に「大卒」として扱われる
- 在学中に助産師・保健師の受験資格取得も可能(選択制の大学多数)
実は重要な「見えない違い」
数字や制度だけでは見えない、重要な違いもあります。
- 大病院では大卒者を優遇する傾向がある
- リーダーや管理職への昇進スピードに差が出ることも
- 給与の昇給率が異なる場合がある
- 大学:「なぜそうなのか」を深く考える姿勢
- 専門学校:「どうやるか」を効率的に学ぶ姿勢
どちらも看護師として大切だが、アプローチが異なる
- 大学:他学部の学生や研究者との交流機会
- 専門学校:現場の看護師との密接な関係
将来のキャリアに影響する可能性
- 大卒:一般企業への転職が比較的容易
- 専門卒:看護師としての専門性を活かす道が中心
人生の予期せぬ変化への対応力の違い
どちらを選ぶべき?自分に合った選択のポイント
最適な選択は、あなたの状況や目標によって異なります。以下のチェックリストを参考に考えてみましょう。
専門学校が向いている人
□ 最短で看護師として働き始めたい
□ 実践的なスキルを重視したい
□ 経済的負担を最小限にしたい
□ 明確に臨床看護師として働きたい
□ 地元で就職したい
大学が向いている人
□ 幅広い知識や教養を身につけたい
□ 将来的に管理職や教育職を目指したい
□ 研究や大学院進学に興味がある
□ 保健師や助産師の資格も取りたい
□ 看護以外のキャリアも視野に入れたい
正解はひとつではない
「看護師になるのに大学は必要か?」という問いに対する答えは、「あなたが看護師としてどんなキャリアを描きたいか」によって変わります。
専門学校でも大学でも、素晴らしい看護師になることはできます。大切なのは、自分の価値観、経済状況、将来の目標を総合的に考えて選択することです。