「他の教科はそこそこなのに、英語だけがどうしても伸びない」。集団塾に通わせているのに成績が動かず、個別指導や家庭教師に変えるべきか迷う。英語だけが伸びないとき、判断の分かれ目はどこにあるのでしょうか。
ここでは、塾を売る立場ではない進路メディアとして、英語だけ伸びない理由と、今の塾を「辞める・併用する・続ける」の見分け方を、公的なデータをもとに整理します。
- 英語だけ伸びないのは能力の問題とは限りません。英語は積み上げ型で、語彙も授業の外での反復に依存する教科。一度つまずくと自力で戻りにくくなります。
- 「集団塾が悪い」わけではありません。ただ、英語だけ止まっている子には一斉授業の構造が合いにくい場面があります。
- 乗り換えの分かれ目は形態ではなくつまずいた瞬間に、その場で双方向に見てもらえるか。まず「どこで止まっているか」を切り分けるのが先です。
なぜ英語「だけ」が伸びないのか(他の教科は平気なのに)
英語だけが伸びないのは、「頭が悪い」からとは限りません。英語という教科の性質が関係しています。英語は前の内容が次の土台になる積み上げ型で、しかも覚える量が多いからです。
文部科学省の学習指導要領解説(外国語編)によると、扱う語彙は小学校で600〜700語、中学校で新たに1,600〜1,800語、高校で新たに1,800〜2,500語。12年間の累積で約4,000〜5,000語にのぼり、以前の課程(中学1,200語+高校1,800語=約3,000語)から大きく増えました[2]。
同じ解説は、語彙は一度提示して終わりではなく「繰り返し何度も触れるうちに徐々に定着が深まる」ものだと明記しています[2]。つまり英語は、授業の時間だけで完結せず、授業の外での反復を前提に設計されている教科なのです。だから一度どこかでつまずくと、その先の内容が続けて崩れ、自力では戻りにくくなります。
加えて、日本語を母語とする子にとって英語の「音の仕組み」は、日本語と質的に違います。この音の処理のしにくさが英語の語彙や読み書きに影響することは、国内の査読論文でも報告されています[3]。英語だけ、ほかの教科と違うつまずき方をする子がいる。これは感覚だけの話ではありません。
まず大切なのは、「英語ができない」とひとくくりにせず、どこで止まっているかを切り分けることです。単語量なのか、文法のある単元なのか、音と綴りの結びつきなのか。ここが違えば、必要な手立ても変わります。単語量が足りていないなら、まずはおすすめの英単語帳で土台を積み直すだけで動き出すこともあります。
- 語彙:そもそも知っている単語が少なく、英文を見ても知らない語だらけになる。
- 文法のある単元から:be動詞と一般動詞、時制、文型など、特定の単元から急に分からなくなった。
- 音と綴り:単語を何度書いても覚えられない、読み方と綴りが結びつかない。
- 文のつながり:単語は分かるのに、文になると何を言っているか分からなくなる。
思い当たる箇所が中1・中2の内容にあるなら、その学年まで戻って直すのが近道です。学年が上の子ほど「戻る」判断がしにくいのですが、英語は土台が崩れたまま先に進んでも積み上がりません。
集団塾で英語「だけ」が伸びにくいのはなぜか
ここで大事なのは、集団塾そのものが悪いわけではないということです。競い合いや一定のペースが合う子は、集団のほうがよく伸びます。ただ、英語だけ止まっている子にとっては、一斉授業の構造が不利に働く場面があります。
理由は3つです。1つ目は、進度が一斉に進むこと。つまずいた地点に戻ってはくれないので、積み上げ型の英語では差が開き続けます。2つ目は、先生が一人ひとりの隣までは来られないこと。英語は「分かったつもり」が外から見えにくく、隣で手元を見てもらわないとズレに気づけません。3つ目は、英語は前提が1つ抜けると以降が連鎖して崩れるため、ほかの教科より置いていかれやすいことです。
個人の努力不足に見えて、実は構造の問題であることがあります。だからこそ、責めるより先に「どこで止まっているかを切り分け、その地点をその場で見てもらえる場に移せるか」を考えるほうが、結果につながります。
集団塾・個別指導・家庭教師は「英語で」どう違うか
3つの形態を、英語という教科の観点で並べると違いが見えます。ポイントは費用よりも、つまずいた瞬間に、その場で双方向に見てもらえる頻度です。
| 種類 | 双方向・頻度 | 費用の目安(相場) | 英語で向く場面 |
|---|---|---|---|
| 集団塾 | 一斉・一方向/進度は固定 | 中学生 月2〜3万円台が最多帯 | 基礎が概ねでき、競い合いで伸びる子 |
| 個別指導塾 | 双方向だが頻度は週1〜2が中心 | 中学生 月2〜3万円台〜 | 苦手科目だけ立て直したい子 |
| 家庭教師 (オンライン含む) | 双方向・その場で個別対応しやすい | 中学生 月1〜4.5万円(相場) | つまずきの切り分けから伴走したい子 |
費用は特定の一社でも「学年・回数・科目で個別見積り」が基本で、公式に金額を出していない塾もあるため、上の数字は幅として見てください。大事なのは価格の1円差ではなく、「英語のつまずきを、その場で直してもらえる形か」です。個別指導塾でも、生徒2人に先生1人で実質ほったらかしになれば集団と変わりませんし、家庭教師でも週1回・非同期のやり取りだけなら止まったままになります。
「今の集団塾を辞めていいのか」への答え
ここが一番迷うところです。塾側のサイトは「辞めるべき」とも「うちが合わない子もいる」とも書きにくい立場にあります。中立の目で見ると、答えは「辞める・併用する・続ける」の3択で、子の状態によって変わります。
- 続ける:他教科は伸びていて英語も授業についていけている/競い合いで本人が伸びるタイプ。英語は家庭学習や単語で補う。
- 併用する:全体は集団で回せているが、英語だけ止まっている。英語だけを個別や家庭教師で立て直すのが現実的。得意教科の環境を壊さずに済みます。
- 辞めて移す:授業が苦痛で座っているだけになっている/英語以外にも置いていかれ始めた。つまずいた地点まで戻って、その場で双方向に見てもらえる形へ。
ひとつ、正直にお伝えしたいことがあります。「個別に変えれば伸びる」わけではありません。形態を変えただけでは、成績が動かないことがあります。
なぜ、個別にしても伸びないことがあるのか。「どこで止まっているか」を切り分けないまま、今の学年の内容を教え続けてしまうからです。中1の単元でつまずいた子に中3の問題を解かせても積み上がりません。だから、形態を変えることより先に「切り分け」があるのです。
この「その場で切り分けてもらえるかどうか」を、我が家は身をもって経験しました。
筆者の体験
我が家には子どもが2人いて、塾との相性は対照的でした。長女のときに痛感したのは、「質問できること」と「つまずきが直ること」は別だ、ということです。仕組みとしては、分からないところを質問できました。でも、どこで止まっているのかを一緒に切り分けてもらえないと、やり取りを重ねても前には進みませんでした。
一方、長男が高校受験のときに通ったのは、先生1人に生徒2人という形の塾でした。こちらはその場ですぐ質問でき、分からないところをその場で教えてもらえて、本人はよかったと言っていました。
振り返ると、効いたのは「個別にしたこと」そのものより、つまずいた瞬間にその場で双方向に見てもらえたかどうかでした。英語だけ伸びないときほど、この「その場で一緒に切り分けてもらえるか」が分かれ目になると感じています。
もし今、「どこでつまずいているか」を一度きちんと切り分けたいなら、指導を始める前の無料の学習相談から様子を見るのも一つの手です。いきなり契約しなくても、「今の成績で、まず何を優先すべきか」だけを相談できるサービスもあります。
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英語だけ極端に苦手なときは、背景に特性があることも
ここまで読んでも、「うちの子は努力しても英語だけがどうしても……」という場合、ごくまれに、読み書きや音の処理の特性が関係していることがあります。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)は、日本語を読むことに困難がなくても、英語で大きな困難が見られる場合があると説明しています[5]。文字の表記のしくみが日本語と英語で違うためで、英語が学習の中心になる場面ではとりわけ制約が大きくなる、とされています。英語だけ極端に苦手な背景に、読み書きや音韻処理の特性が関わっていることがあるのは、国内の研究でも報告されています[4]。
ただし、これは家庭で判断したり、塾や家庭教師で「診断」したりするものではありません。アルファベットや単語がどうしても覚えられない、板書や音読だけ極端に苦手、といった様子が長く続くなら、学校のスクールカウンセラーや専門の相談機関に一度相談してみてください。無理に「英語が苦手なだけ」と片づけないことが、その子にとっての近道になることがあります。
まとめ:形態より「その場で切り分けてもらえるか」
- 英語だけ伸びないのは能力の問題とは限らない。積み上げ型で語彙も反復に依存するため、一度つまずくと自力で戻りにくい。
- 集団塾は悪ではないが、英語だけ止まった子には一斉授業の構造が合いにくい。
- 「個別に変えれば伸びる」ではない。まず「どこで止まっているか」を切り分けるのが先。
- 乗り換えの分かれ目は形態でなく「つまずいた瞬間に、その場で双方向に見てもらえるか」。辞める・併用・続けるを子の状態で選ぶ。
英語を立て直せると、進路の選択肢はぐっと広がります。英語を武器にできれば、英語だけで受験できる大学の一覧という道も見えてきます。まずは今のつまずきを切り分けるところから始めてみてください。どこで止まっているか分からないときは、無料の学習相談で今のつまずきを確かめるだけでも一歩前に進みます。
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参考情報・出典
- 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査 調査結果の概要」(2026年公表・支出者平均:中学校 公立約34.9万円)
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編」(語彙数・段階的定着)
- 津田知春・高橋登(2014)「日本語母語話者における英語の音韻意識が英語学習に与える影響」『発達心理学研究』第25巻第1号
- 大谷康太・三盃亜美・福田有美(2024)「日本人学生における外国語としての英語の読み書き困難と日本語および認知能力との関連」『LD研究』第33巻第1号
- 日本学生支援機構(JASSO)「発達障害 限局性学習症」
- 塾選「塾の費用相場は?小中高生ごとの平均料金表や月謝を抑えるコツ」(集団指導・個別指導の費用相場。比較メディアのアンケート集計・週1回換算ではない点に注意/2026年更新)
- コエテコ「オンライン家庭教師の料金相場(月謝)は高いのか?」(家庭教師の費用相場=中学生10,000〜45,000円・高校生10,000〜57,000円程度。比較メディア調べ/2026年更新)
