国際バカロレア(IB)は世界的に認められた教育プログラムとして注目を集めていますが、実際にIBを経験した学生はどのような学びを得て、どのようなキャリアパスを歩んでいるのでしょうか。
大阪の公立IB高校を卒業し、ギャップイヤーを経て全額奨学金でアメリカのリベラルアーツカレッジに進学することが決まったニキータさんの経験から、IBの実態と海外大学進学への道のりをお伝えします。
公立でもできる世界水準の教育
ニキータさんは大阪の公立中学校に通っていた中学2年生の時に、初めて海外大学という選択肢を知りました。
その後、YMCAが運営し大阪府が設置する水都国際高校に進学。この学校は、公立の学費でありながらインターナショナルスクールに近い環境を提供している特徴的な教育機関です。

入学時の英語力については、英検2級程度あれば十分対応できるとのこと。高校では科目の約半分が英語での授業となり、数学や物理などを英語ネイティブの教師から学ぶという環境で、英語力を自然と伸ばすことができました。
IBプログラムの実態
「大学レベル」の学びとは
IBのディプロマプログラム(DP)は高校2年生と3年生で履修するカリキュラムですが、ニキータさんによると「大学レベルの学力が求められる」非常に高度なプログラムだそうです。
特に印象的だったのは、美術の授業でのアプローチ。一般的な日本の美術教育とは大きく異なり、作品制作のプロセスを徹底的に言語化することが求められました。

技術の高さだけでなく、作品のコンセプトや制作過程での思考を詳細に記録し、それが評価の対象となります。
このような教育方法は批判的思考力を養い、自己表現の手段としてアートを捉える視点を育みます。
自分がどんな人で何を伝えたいのかを考えながら作品を作ることができる
ニキータさんは上記の点がIBの美術教育の特徴だと語っています。
IBでの成績評価と大学進学への影響
IBでは6科目が7点満点で評価され、合計42点にコア科目の3点を加えた45点満点で成績がつけられます。これらの評価は世界共通のIB試験によって決まり、ニキータさんの場合は11月に試験を受けました。
項目 | 詳細 |
---|---|
評価対象科目数 | 6科目 |
各科目の満点 | 7点 |
科目合計点 | 42点(6科目×7点) |
コア科目点 | 3点 |
総合満点 | 45点 |
資格取得基準 | 24点以上 |
注目すべきは、IBでの成績がGPA換算において有利に働く点です。
例えば、IBの予測スコアが5以上の場合、5段階評価で自動的に最高評価の5になるなど、IBプログラム修了者の学力は世界の大学から高く評価されています。

海外大学進学と奨学金獲得
IBプログラムと海外大学出願の両立は非常に困難だったと語るニキータさん。
特に11月試験を選択した場合、9月頃から始まる奨学金応募や大学出願の準備と試験勉強を同時進行させる必要があり、「死ぬかと思った」と振り返ります。
最初の出願年度は時間的制約から十分な準備ができず、志望校からの合格を得られませんでした。
そこでギャップイヤーを取得し、自己分析や出願書類の準備に時間をかけた結果、グルーバンクロフト奨学金を獲得し、オハイオウェズリアン大学への全額免除での進学が決まりました。
アートエデュケーションへの情熱
IBで見つけた夢
ニキータさんが目指すのは「アートエデュケーション」の分野。
IBでの経験を通じて、自己表現の手段としてのアートの可能性や、批判的思考力を養う教育としてのアートの価値を実感したことが、この進路選択につながりました。
今の世界はビジュアル中心の社会。子どもたちが自分のことを効果的にビジュアルで伝える力をつけて欲しい
と語るニキータさんは、エリート教育のみならず、幅広い教育現場にIBのようなアート教育の視点を届けていきたいと考えています。
IBがもたらす教育的価値と将来への可能性
IBプログラムは確かに大変な挑戦ですが、批判的思考力や自己表現力、高度な英語力など、将来のグローバル社会で活躍するための貴重なスキルを身につける機会を提供しています。
また、世界の大学から高く評価されるIB資格は、海外進学の強力な武器となります。
公立校でもIBプログラムを受けられる可能性があることや、適切な準備と情熱があれば全額奨学金での海外大学進学も不可能ではないという事実。
IBに興味のある方、海外大学進学を検討している方は、早めの情報収集と計画的な準備がカギとなります。
参照:「白川寧々チャンネル」