国際バカロレアの数学
2019年8月に新しい数学のカリキュラムが始まる前は、以下の4つのコースが置かれていました[1]。
- Mathematical Studies SL
- Mathematics SL
- Mathematics HL
- Further Mathematics HL
これらが、AA(Mathematics: analysis and approaches)と、AI(Mathematics: applications and interpretation)の2つに再編され、それぞれにHLとSLがあります。
新しいカリキュラムでの授業は2019年8月に始まり、最初の試験は2021年5月でした。数学(グループ5)からは、次の4つのうち1つだけを選びます[2]。
- 数学AA(SL)
- 数学AA(HL)
- 数学AI(SL)
- 数学AI(HL)
IB数学 AAとAIは何が違うのか

IBは4つの数学コースについて、生徒の必要・興味・能力の幅に対応し、大学進学やキャリアの多様な要件を満たすためのものだと説明しています[2]。
| コース | 重心 |
|---|---|
| 数学AA | 理論的なアプローチと抽象的な思考 |
| 数学AI | 実世界での数学の適用と解釈 |
内部評価(IA)は「mathematical exploration」と呼ばれる個人課題で、AA[3]・AI[4]とも、SL・HLとも評価の20%を占めます。生徒が自分でテーマを決め、数学のある領域を調べて文章にまとめるもので、自分の視点で解釈し評価する機会になります。
IB数学のコース詳細

国際バカロレア(IB)ディプロマプログラムには、2つの数学コースがあって、SL(Standard Level)とHL(Higher Level)を組み合わせると4タイプの数学から1つを選択することになります。
- 数学AA(SL)
- 数学AA(HL)
- 数学AI(SL)
- 数学AI(HL)
- AA:解析とアプローチ(Analysis and Approaches)
- AI:応用と解釈(Applications and Interpretation)
両コースともに、数学の基本的な概念やスキルを教えることに焦点を当てていますが、それらのアプローチと応用は異なります。AAコースは抽象的な概念と深い数学的理論の探求に重点を置き、AIコースは数学の実世界の応用に重点を置いています。
まずは各コースの特徴について詳しく説明します。
数学AA|解析とアプローチ(Analysis and Approaches)
このコースは、数学の理論的な側面に重点を置いていて、より抽象的な概念を深く掘り下げます。代数学、幾何学、微積分などのトピックを探求します。
数学AI|応用と解釈(Applications and Interpretation)
このコースは、数学を日常生活や職業生活の問題に適用する方法に重点を置いていて、データ分析、統計、確率などのトピックを含んでいます。
向き不向きは「各コースのレベル感」で推奨授業時間から整理します。
IB数学のカリキュラムの違い
| 単元 | AA(SL) | AA(HL) | AI(SL) | AI(HL) |
|---|---|---|---|---|
| 数と代数 | 19 | 39 | 16 | 29 |
| 関数 | 21 | 32 | 31 | 42 |
| 幾何と三角法 | 25 | 51 | 18 | 46 |
| 統計と確率 | 27 | 33 | 36 | 52 |
| 微積分 | 28 | 55 | 19 | 41 |
| ツールキットと数学的探究 | 30 | 30 | 30 | 30 |
| 合計(推奨授業時間) | 150 | 240 | 150 | 240 |
まず押さえておきたいのは、AAもAIも単元は同じ5つで、HLになっても単元そのものは増えないということです。HLは同じ5単元の中に上級内容(AHL)が上乗せされ、推奨授業時間がSLの150時間から240時間に増えます[3]。
違いが出るのは時間の配り方です。AAは微積分と幾何と三角法に時間が厚く、HLではそれぞれ55時間・51時間です[3]。AIは統計と確率と関数に厚く、HLではそれぞれ52時間・42時間です[4]。
なお、行列(線形代数)を単元の内容として学ぶのはAIのHLです[4]。AAのHLで行列が出てくるのは、連立一次方程式を解く方法の一例としてであり、行列そのものを学ぶ扱いにはなっていません[3]。
IB数学 各コースのレベル感

ここでは4つのコースの位置づけを、公式ガイドの推奨授業時間と、想定されている進路の両面から見ていきます。進路分野との対応づけはIBの公式な区分ではなく、履修内容から当サイトが整理したものです。実際の進度や扱い方は、学校によっても違います。
数学AA(SL)
AA(SL)の推奨授業時間は150時間で、数と代数から微積分まで5単元を一通り学びます[3]。
ビジネス、経済学、生物学、化学など、数学的な知識は必要だが、高度な数学の専門知識までは求められない分野に進む人に向いたレベルです。
数学AA(HL)
AA(HL)の推奨授業時間は240時間で、SLの150時間に上乗せする形で、5単元それぞれの上級内容(AHL)を学びます[3]。とくに微積分が55時間と厚く、証明や複素数といった理論寄りの内容もここに入ります。物理学やエンジニアリングなどのSTEM(科学、技術、工学、数学)の分野を目指す人向けのレベルです。
数学AI(SL)
AI(SL)の推奨授業時間は150時間で、統計と確率に36時間と、5単元の中で最も長い時間が充てられています[4]。ビジネス、社会科学、人文科学を含む非STEM分野に進む人に向いています。
数学AI(HL)
AI(HL)の推奨授業時間は240時間で、統計と確率に52時間、関数に42時間と、統計まわりに時間が厚く配分されています[4]。行列(線形代数)を学ぶのもこのコースです。統計学、データサイエンス、経済学、ビジネスなど、統計と確率、モデリングを使う分野に進む人に向いています。
「数学AA」を選ぶのがおすすめな理由

理系学部を目指す場合「数学AA(HL)」
大学で理系に進むことを考えている学生は、数学AA(HL)を選択することをおすすめします。
HLであればAA・AIどちらでも受け付ける大学もあります。たとえばインペリアル・カレッジ・ロンドンの数学(BSc)は、AA・AIどちらのHLも受け付けたうえで「AAが望ましい」としています[8](2026年9月時点)。
一方で、数学AAの履修を求める大学もあります。ケンブリッジ大学の数学は、IB生に対してAnalysis and Approachesを求めると入学案内に明記しています[7](2027年入学の要件・2026年9月時点)。志望校が決まっているなら、その大学の要件を必ず自分で確認してください。
また、IBを受講している途中で進路が変わることもありますし、まだ進路が決まっていない場合にも、選択肢を減らさないためにも「数学AA(HL)」を選択すると良いかと思います。
国際バカロレア認定校によっては、AAしか開講していない、AIしか開講していないなどもあるので、そこのチェックも必要になってきます。
文系学部を目指す場合「数学AA(SL)」
数学はSLで取るという場合でも、志望する大学・学部によっては数学AAの履修を求められることがあるため[7]、迷うなら「数学AA(SL)」を選んでおくほうが、後から進路を変えたときに困りにくいと考えています。
よほど数学が苦手だという場合を除き、文系に進む場合でも数学AAを選択しておくことで、国際バカロレアの資格を活用した進学をする際にも、選択肢を減らすことがないかと思います。
IB数学の難易度の違い

数学AAと、数学AIの間には、内容とアプローチの面で顕著な違いがありますが、一方が他方より一律に「難しい」または「簡単」という訳ではありません。
それぞれのコースの難易度は、学生の強み、興味、そして将来の学問やキャリアの目標に大いに依存します。
数学AAは、理論的で抽象的な数学に重点を置いています。このコースは、数学的な証明や抽象的な概念に興味があり、これらを追求する能力がある学生にとってはより適しています。
一方、数学AIは、実世界の状況に数学を適用することに焦点を当てています。このコースは、統計、モデリング、データ解析などの実践的な応用に興味があり、数学を具体的な状況に適用する方法を理解したい学生にとってはより適しています。
| 負担の大きさ | コース |
|---|---|
| 大きい | AA(HL)・AI(HL) |
| 中くらい | AA(SL) |
| 小さい | AI(SL) |
IB数学 評価方法
国際バカロレア(IB)の数学の評価は、外部評価(本試験)と内部評価(IA)の2つでできています[3]。
外部評価|HL(Higher Level)
| コース | 試験 | 電卓 | 配点 / 比重 |
|---|---|---|---|
| AA | Paper1 | なし | 110点 / 30% |
| AA | Paper2 | あり | 110点 / 30% |
| AA | Paper3 | あり | 55点 / 20% |
| AI | Paper1 | あり | 110点 / 30% |
| AI | Paper2 | あり | 110点 / 30% |
| AI | Paper3 | あり | 55点 / 20% |
外部評価|SL(Standard Level)
| コース | 試験 | 電卓 | 配点 / 比重 |
|---|---|---|---|
| AA | Paper1 | なし | 80点 / 40% |
| AA | Paper2 | あり | 80点 / 40% |
| AI | Paper1 | あり | 80点 / 40% |
| AI | Paper2 | あり | 80点 / 40% |
数学で高得点を取るためのポイント
深い理解
定期的な復習と練習
過去問題の利用
内部評価への取り組み
問題解決の過程を記述
コミュニケーション
健康的な生活習慣
深い理解
数学はただ公式を覚えるだけの科目ではありません。理論や概念を深く理解し、それらを適用する能力が求められます。問題解決のためのさまざまな方法を理解し、新しい状況や問題に適応できるようになることが重要です。
定期的な復習と練習
数学の理解とスキルの向上には、定期的な復習と継続的な練習が欠かせません。新しい概念を学んだら、それを定期的に復習し、さまざまな問題を解くことでその概念を練習してみてください。
過去問題の利用
IBの過去の試験問題を解くことは、試験の形式や問題の種類を理解する上で非常に有益です。これにより、試験のペースを理解し、時間管理のスキルを磨くことができます。
内部評価(IA)への取り組み
数学の内部評価(IA)は、IB数学の評価の20%を占めます[3]。
これは個々の学生が独自の数学的探求を行う部分で、これをよく準備し、自分の興味や強みに基づいてテーマを選ぶことは、高得点を獲得するために非常に重要です。
問題解決の過程を記述する
数学の試験では、最終的な答えだけでなく、解答過程も評価されます。したがって、問題を解くためのステップや思考過程を明確に書き記すことが重要です。
教師やクラスメートとのコミュニケーション
自分が理解できない概念や問題がある場合、教師やクラスメートに質問することは非常に有益です。また、他の人が問題をどのように解決するかを見ることで、新たな視点やアプローチを学ぶことができます。
健康的な生活習慣
健康的な食事、十分な睡眠、定期的な運動は、学習能力と集中力を向上させます。これらを維持することは、試験勉強だけでなく全般的な学業成績にも寄与します。
2027年からの新カリキュラム
ここまでの内容は、2019年8月に始まった現行コース(2019年版ガイド・初回試験2021年)のものです[2]。AAもAIも、新しいコースは2027年8月に授業が始まり[5]、最初の試験は2029年5月です[9]。
IBは、内容の追加はなく削減のみだと説明しています[5]。外部評価の配点も、SLはPaper1・Paper2が各80点から75点へ、HLはPaper1・Paper2が各110点から100点へ、Paper3が55点から50点へ変わると公表されています[6]。
初回試験が2029年5月なので、それより前に本試験を受ける人は現行コースです[9]。いま高校でIBを学んでいる人は、この記事の内容で問題ありません。
参考情報・出典
- International Baccalaureate Organization「Mathematics」(DPカリキュラム・2018年4月2日時点のアーカイブ)https://web.archive.org/web/20180402221546/http://www.ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/mathematics/
- International Baccalaureate Organization「Mathematics」(DPカリキュラム・2023年2月2日時点のアーカイブ)https://web.archive.org/web/20230202154716/https://ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/mathematics/
- International Baccalaureate Organization「Mathematics: analysis and approaches guide(First assessment 2021)」2019年2月発行(PDF・p.25/p.28/p.35/p.72/p.73)https://dp.uwcea.org/docs/Mathematics – Analysis and Approaches Subject Guide.pdf
- International Baccalaureate Organization「Mathematics: applications and interpretation guide(First assessment 2021)」2019年2月発行(PDF・p.23/p.33/p.74/p.75)https://www.woodstockschool.in/wp-content/uploads/2019/10/Mathematics-applications-and-interpretation-guide.pdf
- International Baccalaureate Organization「Mathematics: analysis and approaches updates」(2026年4月3日更新・2026年6月29日時点のアーカイブ)https://web.archive.org/web/20260629185854/https://ibo.org/university-admission/latest-curriculum-updates/dp-mathematics-analysis-and-approaches-updates/
- International Baccalaureate Organization「Mathematics: applications and interpretation updates」(2026年3月30日時点のアーカイブ)https://web.archive.org/web/20260330065835/https://ibo.org/university-admission/latest-curriculum-updates/dp-mathematics-applications-and-interpretation-updates/
- University of Cambridge「Mathematics」(学部入学案内・2026年9月6日閲覧)https://www.undergraduate.study.cam.ac.uk/courses/mathematics
- Imperial College London「Mathematics BSc」(入学要件・2026年9月6日閲覧)https://www.imperial.ac.uk/study/courses/undergraduate/mathematics-bsc/
- International Baccalaureate Organization「Read curriculum updates」(2026年3月24日更新・2026年6月23日時点のアーカイブ)https://web.archive.org/web/20260623124119/https://ibo.org/university-admission/latest-curriculum-updates/
