IB CASの活動例【2026】公式要件・150時間の誤解・大学入試での扱い

IBDP(国際バカロレア ディプロマプログラム)の必修、CAS。「何をやればいいのか」「どれくらいやれば終わるのか」がはっきりしないままDPが始まると、後半で時間に追われることになります。

調べるほど混乱するのは、情報源によって言うことが違うからです。「合計150時間」と書くサイトもあれば、学校ごとに求められる活動の数がまったく違うと書く在校生もいます。

そこでこのページでは、IB機構(IBO)の公式資料が実際に何を定めているかを原文で確認し、そのうえで活動の選び方・時期の組み方・大学入試での扱いまでを整理しました。

先に結論(CASの実像)
  • CASは「何時間やったか」で終わるものではない。7つの学びの成果を達成した証拠を示せば完了する
  • 公式が定めているのは、DPの開始と同時に始めて少なくとも18か月CASプロジェクトを1つ以上(1か月以上・他の人と協力して)、そして正式な面談が3回
  • よく見る「合計150時間」は、公開されている公式資料ではCASの数字ではない。活動の個数や合計時間の規定も、公開資料には存在しない(=そこは学校ごとの運用)
  • 日本の大学入試では、CASの概要レポートを出願書類として求める大学が実在する(筑波大・上智大・九州工業大・鹿児島大・東京理科大で確認)

CASが「完了」するまでの流れ

  • やることCAS活動(創造性・活動・奉仕)+CASプロジェクト1つ以上(1か月以上・協働)
  • 記録CASポートフォリオに、7つの学びの成果それぞれのエビデンスを残す
  • 提出学校に提出する
  • 判定学校が完了を認定する(成績・点数はつかない)
  • 結果ディプロマ授与の条件を1つ満たす(成績通知書にも完了が記載される)

この流れのどこにも「合計◯◯時間」という関門は出てきません。判定の材料は時間ではなく、7つの学びの成果のエビデンスです。

目次

CAS(創造性・活動・奉仕)とは?

CASは、DPの中核をなす必修の課外活動です。公式の日本語表記は「創造性・活動・奉仕」で、Creativity・Activity・Serviceの頭文字を取ってCASと呼ばれます[1]

3つの要素は、公式資料で次のように定義されています。

創造性
(creativity)
アイデアを探究し拡張する取り組みを通じて、オリジナルの作品やパフォーマンス、または独自の解釈を表現した作品やパフォーマンスにつなげる
活動
(activity)
健康的なライフスタイルに寄与する身体的な活動を実践する
奉仕
(service)
コミュニティーが実際にもつニーズに対応するための、協働的かつ互恵的な取り組みに従事する
出典:IB機構「DP科目概要 創造性・活動・奉仕(CAS)」(2017年卒業予定者から適用)[1]

そして、ある活動がCASとして認められるための条件も明文化されています。ここは読み飛ばされがちですが、実務でいちばん効く4行です。

  • CASの要素の少なくともいずれか1つに該当する
  • 生徒自身の興味、スキル、才能、または成長の機会に即している
  • 「IBの学習者像」の人物像を養う機会となる
  • DPのコースの必須要件には含まれておらず、その目的で使用されることがない[1]

4つ目が実質的な線引きです。授業の課題やIA(内部評価)としてすでに提出したものを、そのままCASに数え直すことはできません。逆に言えば、条件を満たせば校外の習い事や地域の活動でもかまいません。

※ 1つ目の条件は「3つの要素のうち1つ以上に当てはまればよい」という意味です。「創造性・活動・奉仕からそれぞれ1つ以上の活動を選ぶ」という個数の規定ではありません。プログラム全体として「合理的なバランス」で実践することが求められています。

IBそのものの仕組みや向き不向きから確かめたい場合は、国際バカロレア(IB)のメリット・デメリットを先に読むと全体像がつかめます。

公式が決めているルールと、学校が決めているルール

CASの情報が人によって食い違う理由は、ここにあります。公式が定めているのは枠組みだけで、運用の細かい数字は各校が決めているからです。

項目公式資料の定め
開始時期DPの開始と同時に正式に開始する
期間少なくとも18か月間にわたって定期的に継続する
バランス創造性・活動・奉仕を「合理的なバランス」で実践する
CASプロジェクト1つ以上に取り組む(1か月以上・他の人と協力して)
面談CASコーディネーターまたはアドバイザーとの正式な面談が3回設けられる
完了の判定7つの学びの成果の達成をもって完了。成績はつかない
活動の個数規定なし
合計時間規定なし
記録の様式規定なし(学校がハンドブック等を配布する)
出典:IB機構「DP科目概要 創造性・活動・奉仕(CAS)」[1]。「規定なし」は同資料に該当する要件の記述が無いことを指します。

公式資料は、学校の役割もはっきり書いています。「学校が配布するCASのハンドブック」や説明会などのリソースは学校レベルで提供されるとされ[1]、修了の認定も学校が行います[3]

つまり「活動は何個必要か」「1回あたり何時間か」「どの様式で記録するか」は、あなたの学校のハンドブックとCASコーディネーターが正解を持っています。ネットで見た数字と学校の指示が食い違ったら、学校の指示に従うのが正しいと考えてよいことになります。

学校差がどれくらいあるかは、在校生の記録からうかがえます。当時DPに在学していた生徒は、自分の学校と他校の違いをこう書いています。

葉山の学校ではCASを28個やれ、と言われていまして 各月でこれくらいの数を終わらせておけばいいよ、という締め切り?デッドライン?みたいな基準があります。しかし他の学校はそんなにたくさんCASをやらなくて良くて、朧げな記憶で見た資料では「10~15個」が最も多かったような。[11]

これは公式の要件ではなく、その学校の運用です。だから最初に見るべきはネットの数字ではなく、自分の学校のハンドブックになります。

「CASは合計150時間」という数字はどこから来たのか

検索するとかなりの確率で出てくる「CASは合計150時間」。しかし現行の公開されている公式資料に、CASの活動時間の規定はありません

では150時間はどこにあるのか。同じ公式資料の冒頭、DP全体の説明にこう書かれています。選択した科目のうち最低3科目を上級レベル(HL・推奨授業時間240時間)、その他を標準レベル(SL・推奨授業時間150時間)で履修する[1]

150時間はSL科目の推奨授業時間として登場する数字です。CASの活動時間として書かれているわけではありません。

※ 過去のCASの手引きに時間の目安があったかどうかは、IB機構の旧版が一般公開されていないため本記事では確認できませんでした。ここで言えるのは「現行の公開資料に時間規定は無い」ことまでです。なお学校が独自に時間の目安を設けることはあり、その場合は学校の基準が実務上の基準になります。

時間を数えることが目的になりやすいところはあります。IBを修了した経験者は「CASって、つい『何時間やったか』に意識が向きがち」だと振り返っています[13]

数えるべきは時間ではなく、7つの学びの成果のどれを、どの活動で示せたかです。時間の記録は学校が求めるなら必要ですが、それ自体が完了の条件ではありません。

CAS活動には何をやればいい?

公式は活動の中身をほとんど指定していません。だから自由度が高く、同時に迷いやすい。決め方は「面白そうか」より先に、18か月続けられるか記録が残るかで絞るのが現実的です。

活動を決める前に確かめる3つのこと

  • 3つの要素のどれに当たるかを自分で言えるか(1つ以上に当てはまれば足ります)
  • 18か月、定期的に続けられる形か(無計画な単発の活動を重ねるだけでは十分でない、と公式が書いています)[1]
  • 証拠(エビデンス)が自然に残るか(写真・成果物・第三者の記録が後から集められる形か)

創造性(Creativity)の活動例

  • デジタル・映像:Webサイト制作、動画制作・編集、デジタルアート、アプリ開発、プログラミング
  • 音楽・舞台:楽器演奏、作曲、録音、演劇、ダンス、演出、衣装デザイン、音響
  • 美術・工芸:写真、絵画、彫刻、陶芸、アクセサリー制作、デザイン
  • 文芸・言語:詩や小説の執筆、翻訳、学校新聞や雑誌の制作、言語学習コンテンツの作成
  • 企画・生活:イベントの企画・運営、料理や製菓、レシピのまとめ

作品を完成させる形(小説・映画・アプリ)は、締切を自分で持つことになります。定期的に出す形(学校新聞・連載・発表会)は、進み具合とエビデンスが自然に残ります。

活動(Activity)の活動例

  • チームスポーツ:サッカー、バスケットボール、バレーボール、野球、ラグビー、ホッケー
  • 個人スポーツ:テニス、水泳、陸上、卓球、バドミントン、ゴルフ
  • フィットネス:ランニング、自転車、ジムトレーニング、ヨガ、ダンス
  • 武道:空手、柔道、剣道、テコンドー、ボクシング
  • アウトドア:登山、ハイキング、キャンプ、スケートボード、スノーボード
  • 身体を使う文化活動:ディベート、模擬国連、演説、伝統芸能

すでに続けている競技や稽古は、そのまま続けられるぶん負荷が読めます。一方でひとりで走る・泳ぐ形は、やった証拠を自分で残す手間が乗ります。

奉仕(Service)の活動例

  • 福祉・医療:高齢者施設での交流、病院ボランティア、障がい者支援、点訳・朗読・手話
  • 環境:海辺や森林の清掃、公園や駅の清掃、リサイクル活動、植樹、動物保護
  • 教育・学習支援:小中学生の学習サポート、スポーツ教室の補助、工作教室、パソコン指導
  • 地域:地域イベントや祭りの運営支援、国際交流イベント、炊き出し
  • 国際協力・チャリティー:募金、チャリティーイベントの開催、衣料品の回収と寄付、NGO支援

団体を通す形は、受け入れ先の予定に合わせる必要がある反面、活動記録や担当者の確認を先方から得やすくなります。

すでに続けている習い事や部活が、そのまま当てはまることもあります。ゼロから探すより、手持ちを3つの要素に当てはめ直すほうが早く、そして続きます。

やってみると重かった活動もある

選ぶ段階では見えにくいのが「負荷」です。同じ「創造性」でも、作品を完成させる種類の活動は想像よりはるかに時間を食います。

当時DPに在学していた生徒が、小説の執筆をCASにした経験をこう書いています。

絶望的に時間がかかるんです(中略)一章終わらせるために八万字書くくらい(葉山の場合)それで三ヶ月くらいかかっている[11]

負荷が高いのは制作系だけではありません。同じ生徒は、ウォーキングを「活動」にしたときの手間についても書いています。

エビデンスをあげるのがとても面倒だった(中略)時々月末が忙しかったりするとこの余裕が全くなくて気づけば三ヶ月溜め込んでたり[11]

活動そのものは軽くても、記録が重い組み合わせがあるということです。選ぶときは「やる負荷」と「残す負荷」を別々に見積もると、後半で詰まりにくくなります。

CASプロジェクトとは?(1か月以上・協働)

CAS活動とは別に、CASプロジェクトを少なくとも1つやる必要があります。公式の定義は「他の人と協力して行い、1か月以上にわたって段階的に進めていく、一連のCAS活動」です[1]

ここで押さえるべき条件は3つ。他の人と協力すること、1か月以上続くこと、そして1つ以上実施することです。

よくある誤解:2つ以上の要素を組み合わせないといけない?

「CASプロジェクトは創造性・活動・奉仕のうち2つ以上を組み合わせること」と説明する記事がありますが、IB機構の公式ページは1つの要素だけを扱ってもよいと明記しています。原文は「CASプロジェクトはCASのどれか1つの要素を扱ってもよく、2つまたは3つすべてを組み合わせてもよい」という趣旨です[2]

公式資料が挙げるプロジェクトの例にも、単一の要素だけのものが含まれています[1]。組み合わせは「してもよい」だけで、必須条件ではありません。

公式資料に載っているプロジェクトのサンプルは、次の5つです。規模の目安として役に立ちます。

  • 【創造性】壁画の計画、デザイン、制作にグループで取り組む
  • 【活動】スポーツのチームをつくり、練習を重ねたうえで他チームとの試合に臨む
  • 【奉仕】助けを必要としている人たちのためのチューター・サービスを企画して提供する
  • 【奉仕・活動】地域コミュニティーの人たちと一緒に庭園の植栽や手入れを計画し参加する
  • 【創造性・活動・奉仕】地域内の高齢者施設に住む人たちのためのダンスパフォーマンスを創作して練習し、披露する[1]

実際の例も参考になります。DPを修了した元IB生は、CASプロジェクトについて「貧困問題に取り組んでいるNPOと関わりながら、(中略)生活保護についての簡単なパンフレットやポスターを作り提供しました」と書いています[14]。外部の団体と組むと、協働の条件も自然に満たされます。

CASはいつ始まり、いつまでに終わらせるのか

CASのプログラムはDPの開始と同時に正式に始まり、少なくとも18か月間にわたって定期的に続きます[1]。DPが2年間なので、修了の少し前までずっと動いている計算になります。

この18か月のあいだに、CASコーディネーターまたはアドバイザーとの正式な面談が3回設けられます[1]。CASには成績がつかないので[3]、点数を付けられる場ではありません。困っていることを持ち込む機会だと考えてよいでしょう。

DPの2年間は、学年でいうと11年生と12年生です(日本の高校の2年生・3年生にあたります)。以下ではこの呼び方で書きます。

時期の組み方については、当事者の証言が具体的です。海外のIB校に在籍するDP生は、CASの負荷と学業の重なりについてこう書いています。

12年生からはテストや大学準備で非常に忙しくなるので、11年生の段階では自分に合ったCreativity, Activity, Serviceを探し、それらを12年生でも継続させるのが一番安定したCAS活動になるのかなと思います[12]

もう1つ、時期を前に倒す実務上の理由があります。日本の大学のIB入試には、DPを終えた直後にCASのレポートを出す方式があるのです。

筑波大学の国際バカロレア特別入試(7月募集)の出願期間は2026年7月2日から7月14日[5]、上智大学の国際バカロレア入試(第1期)は2026年7月7日から7月23日です[6]。どちらも出願書類にCASの概要レポートが含まれます。

筑波大学の7月募集は、出願資格がディプロマの「取得者」に限られます(取得見込みでは出願できません)。取得済みであれば出願でき、同年5月に受験した人も含まれます。つまり在学中の人にとっては、最短でも修了した後の出願になります。取得見込みでも出願できるのは同大の10月募集です[5]

上智大学の第1期は、国内外のインターナショナルスクールや海外のIB認定校の出身者(卒業見込みを含む)が対象で、出願時に取得済みでも取得見込みでもかまいません。ただし日本のIB認定校(学校教育法第1条の高校)の出身者・卒業見込みは第2期で、そちらは出願時に取得済みであることが条件です[6]

どちらの枠でも、出願の時点でCASを言葉にできる状態になっていなければなりません。DPの最後にまとめて動く形だと、レポートに書く中身が足りないまま出願期間が来ます。

計画そのものを早めに作ることも、現役生から勧められています。「面倒だとは思いますがまずは半年くらい、うまく組み合わせながら細かくCAS Planを作っておくことを強くお勧めします」という言葉があります[11]

同じ活動を続けるのが苦しくなったら

18か月は長いので、途中で気持ちが切れることもあります。当時DPに在学していた生徒は「同じ活動してると飽きます。これ絶対」と断言しています[11]

ここで効いてくるのが、公式に活動の個数も合計時間も規定されていないという事実です。「同じ活動を18か月続けきる」ことは要件ではありません。求められているのは、プログラム全体としての定期的な継続と合理的なバランス、そして7つの学びの成果の達成です[1]

苦しくなったときの選択肢は、やめるか続けるかの二択ではありません。

続け方を変える/抱え込まないサイン
  • 同じ分野のまま形を変える(個人練習をイベント参加に、制作を発表・共有に)
  • ひとりでやっている活動を、誰かと一緒にやる形に変える(CASプロジェクトの条件にも近づきます)
  • まだ示せていない学びの成果を確認し、そこに手が届く活動へ切り替える
  • 記録が2か月以上たまっている(活動より記録が負債になっているサイン)
  • 学業やIA・EEの締切と正面衝突している
  • 「学校の要件を満たしているか」が自分で判断できない

上の3つに当てはまるなら、次の面談を待たずにCASコーディネーターに相談してください。運用の正解を持っているのは学校です。

正直に言えば、CASは負担です。面倒であることを前提に、軽く回る形を早く見つけたほうが結果的に長く続きます。

ただし、学校が正解を持っているのはCASの運用までです。科目の勉強とCAS・EE・TOK、そして大学出願をどの順で並べるかは、自分で組むしかありません。ここが回らないときは、同じ道を通った人に相談するのが早道です。

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7つの学びの成果=何を示せば完了になるのか

CASは、7つの学びの成果の達成をもって完了します。それぞれの成果を少なくとも一度は達成したことをCASポートフォリオで示し、そのエビデンスを学校に提出します[1]

7つは、公式資料では次の表現になっています。翻訳が出回っているため表現がぶれやすいので、公式の日本語訳と説明をそのまま置きます。

学びの成果公式の説明
1 自分の長所と成長すべき点を認識するさまざまな能力とスキルをもった個人として自分のことを見ることができ、能力やスキルのなかには比較的得意なものとそうでないものがあることを自覚している
2 課題に挑戦し、その過程で新しいスキルを習得したことを実証する新しい挑戦とは、これまでに取り組んだことのない活動だけでなく、既存の活動の延長でもよい。新しい経験をしたり、すでに経験のある分野で専門性を高めたりすることで、スキルを新たに習得した、あるいは向上させたことを示す
3 CAS活動を計画し開始する方法を示す個人、または協働で行うCAS活動に関して、アイデアを思いついた段階から計画を実行する段階までを詳細に説明することができる。過去の経験を発展させたり、新しいアイデアやプロセスを考案したりすることで、自らの知識や認識を示すことができる
4 CAS活動を継続し、やり遂げる粘り強さを示すCASに定期的にかかわり、積極的に取り組んでいることを示す
5 他の人と協働するスキルを実証し、その意義を認識するCAS活動を通じて学んだ協働のメリットや難しさを特定、実証し、批判的に議論することができる
6 グローバルな意義のある問題への取り組みを示すグローバルな課題を認識し、それらに対する自らの考えを示し、責任感のある決断をして、地域、国、または国際的なレベルで問題に対応する適切な行動をとることができる
7 選択と行動の倫理的な側面を意識し、それについてよく考えるCAS活動を計画・実践するなかで、自分の選択や行動には結果が伴うと認識していることを示す
出典:IB機構「DP科目概要 創造性・活動・奉仕(CAS)」[1]。説明欄は同資料の記述です。

1つの活動で7つ全部を満たす必要はありません。逆に、活動をいくつやっても7つのどれかが空欄のままだと完了になりません。だから「まだ示せていない成果はどれか」を、途中で一度は確認しておくのが安全です。

CASポートフォリオには何を記録するのか

CASの生徒は全員、取り組んだ証拠としてCASポートフォリオに記録をつけ、完成させます。これはCAS活動と振り返りのエビデンスを集積したもので、成績に反映されるものではありません[1]

公式資料は、奉仕活動の進め方をこう整理しています。この流れがそのまま記録の骨格になります。

  1. 調査と準備をしたうえで、特定したニーズを満たす行動をとる
  2. 重要な活動を詳細に振り返ることで、問題解決と選択に役立つ情報を得る
  3. 実際に示すことで、何が起きたかを他の人と共有する[1]

振り返り(リフレクション)で書くことは、活動の実況ではありません。何が起きて、そこで自分がどう考え、次にどうするか。そして、それが7つの学びの成果のどれに当たるかを自分の言葉で言えることです。

記録の形式や提出先の様式は学校が決めます。学校によっては専用の記録システムを使い、その場合は入力のタイミングも学校の指示に従います。

実務でいちばん詰まるのは、内容ではなく溜め込みです。先に挙げた「気づけば三ヶ月溜め込んでたり」という状態は、活動が終わってから記録を思い出そうとするために起きます。活動の直後に写真1枚と3行だけ残す運用にしておくと、後半が軽くなります。

CASが終わらないとどうなるのか

CASには点数がつきません。だからといって軽い要件ではありません。ディプロマ授与の条件のひとつが「CASの要件を満たしていること」です[3]

IB機構の規程でも、CASは「首尾よく完了しなければならない活動プログラム」と位置づけられています[4]。つまり、科目の点数がどれだけ良くてもCASが未完了ならディプロマの条件を満たしません。

同じ規程には、ディプロマ取得者に渡される成績通知書(Diploma Programme Results)にCASの全要件の完了が記載されることも書かれています[4]。CASは「やった証明が公式に残る」要件でもあるということです。

間に合わないかもしれないと感じた時点で、すぐCASコーディネーターに相談してください。完了の認定を行うのは学校であり[3]、残り期間で何をどこまで進めれば足りるかを判断できるのも学校です。

※ CASが未完了だった場合の救済措置について、本記事が確認した公開資料(DP科目概要・IB機構公式のCASページ・DPの合格基準ページ・Diploma Programme Assessment procedures 2026のGeneral regulations)には記述がありませんでした。扱いは学校を通じて確認してください。

ディプロマの点数の仕組み自体を確かめたい場合は、IBスコアで行ける大学一覧で必要点数の目安とあわせて整理しています。

大学入試でCASはどう見られるのか

「CASは大学入試で見られるのか」は、先輩や先生からの伝聞で語られがちな話です。実際には、CASの概要レポートを出願書類として求める大学があります。募集要項に分量まで指定されています。

スクロールできます
大学・選抜CASの提出物と分量選考での扱い
筑波大学
国際バカロレア特別入試(7月募集)
CASの概要をまとめたレポート
資料を含め5ページ以内
スコアのほかEE・TOK・CASの内容から、学ぶために必要な適応性等を評価
上智大学
国際バカロレア入試(第1期)
CASの概要をまとめたレポート
資料を含めA4 5枚以内・日本語
TOK・CASに関するレポート等による書類審査
九州工業大学
総合型選抜(IB)
CASの概要レポート
A4片面4枚以内・日本語・図表可
EE・TOKの成果物とCASの概要をもとに評価
鹿児島大学
国際バカロレア選抜
CASの概要レポート
A4片面2枚程度・3,000〜4,000字
学部により「選抜の基礎資料」または「総合的に評価」
東京理科大学
国際バカロレア入学者選抜
CASの概要をまとめたレポート
資料を含めA4 5枚以内・日本語
提出書類(全員提出)
出典:筑波大学 令和9年度[5]/上智大学 2027年度[6]/九州工業大学 令和8年度[7]/鹿児島大学 令和8年度[8]/東京理科大学 2026年度[9]の各募集要項。実施の範囲は選抜ごとに限られます(筑波大の7月募集は人間学群〈教育・心理・障害科学〉と医学群〈医学類〉、東京理科大は経営学部 国際デザイン経営学科)。

読み取れることは3つあります。

  • 提出物として求められる。「実績として自己PRに書ける」ではなく、書類そのものが要る
  • 分量が決まっている。5ページ以内、A4 4枚以内、3,000〜4,000字など、まとめる作業が発生する
  • 評価の材料になる。筑波大学はスコアのほかEE・TOK・CASの内容から適応性等を評価すると明記しています[5]

付け加えると、筑波大学はDP以外で行った研究論文や活動報告書等も提出できるとしています。ただし各科目のIAは含めることができません[5]。CAS以外の課外の取り組みにも出す場所がある、ということです。

提出物は大学・方式ごとに違います。IBのスコア等を活用した入試を行う大学の一覧は文部科学省のIB教育推進コンソーシアムに掲載されているので[10]志望校の募集要項を必ず自分で確かめてください

国内進学の全体像は、IB入試で入れる日本の大学一覧で出願方法とあわせて整理しています。

保護者はCASにどう関わればいいのか

CASの情報は、ほとんどが生徒本人に向けて書かれています。しかし実際には、送迎や費用、家庭のスケジュールを通じて保護者も当事者です。

関わり方の線引きは、公式の要件から導けます。学びの成果3は「CAS活動を計画し開始する方法を示す」ことであり、アイデアを思いついた段階から計画を実行する段階までを本人が説明できることが求められます[1]。つまり、活動を親が決めてしまうと本人が示すべきものが消えます。

やっておくとよいこと
  • 学校が配布するCASのハンドブックと説明会の内容を、DPが始まる時期に一度把握しておく(運用の正解はここにあります)
  • 正式な面談が3回あることを知っておき、時期を家庭のカレンダーで共有する
  • 送迎・交通費・道具代など、続けられるかどうかを左右する環境面を整える
  • 記録が溜まっていないかだけを、ときどき本人に聞く(内容ではなく更新の有無)
やらないほうがよいこと
  • 活動を親が選んで決めてしまう(学びの成果3を本人が示せなくなります)
  • 振り返りを代わりに書く。ポートフォリオは本人の学びのエビデンスです
  • 「大学受験に効くもの」を基準に活動を選ばせる。要件は本人の興味・スキル・成長の機会に即していることです
  • ネットで見た数字(合計時間・活動の個数)を学校の指示より優先させる

筆者の体験
我が家では、CASの提出が締切ぎりぎりになっているのを見ました。もっと早くから手をつけていれば、こんなに慌てなくて済んだのにと思うくらいの状態でした。活動そのものについては、こういうものはどうかと一緒に考えました。ただ、最終的に決めたのは本人です。

CASのよくある質問

CASは合計何時間やればいいですか?

現行の公開されている公式資料に、CASの活動時間の規定はありません。定められているのは「DPの開始と同時に始めて少なくとも18か月間、定期的に継続する」ことです。学校が独自に時間の目安を設けている場合は、その基準が実務上の基準になります。

CASプロジェクトは2つ以上の要素を組み合わせないといけませんか?

いいえ。IB機構の公式ページは、CASプロジェクトが1つの要素だけを扱ってもよいと明記しています。必須の条件は「他の人と協力して行う」「1か月以上にわたって段階的に進める」「少なくとも1つ実施する」の3つです。

部活や習い事をそのままCASにできますか?

条件を満たせば可能です。CAS活動は3つの要素のうち1つ以上に該当し、本人の興味・スキル・才能・成長の機会に即している必要があります。ただしDPのコースの必須要件に含まれるもの、つまり授業の課題やIAとして提出したものを流用することはできません。学校ごとに承認の基準があるため、CASコーディネーターに確認してください。

CASに成績や点数はつきますか?

つきません。CASポートフォリオは成績に反映されるものではなく、修了の認定は学校が行います。ただし完了はディプロマ授与の条件のひとつで、成績通知書にもCAS要件の完了が記載されます。

CASのレポートは大学入試で提出しますか?

求める大学があります。筑波大学・上智大学・九州工業大学・鹿児島大学・東京理科大学のIB入試では、CASの概要レポートが出願書類に含まれ、分量も指定されています。提出物は大学・方式ごとに異なるので、志望校の募集要項で確認してください。

まとめ

  • CASの完了条件は時間ではなく、7つの学びの成果を示すこと
  • 公式が定めるのは18か月・CASプロジェクト1つ以上・面談3回まで。個数と時間は学校の運用
  • 「合計150時間」は公式資料ではSL科目の推奨授業時間として出てくる数字
  • 活動は「やる負荷」と「記録を残す負荷」を別に見積もって選ぶ
  • 11年生のうちに形を固めると、12年生の学業と大学出願に耐えられる
  • CASの概要レポートを出願書類として求める大学がある。志望校の要項は自分で確認する

CASは、要件を正しく知っているかどうかで負担がかなり変わります。数字の噂に振り回されるより、公式の枠組みと自分の学校のハンドブックの2つを押さえるほうが、結局は早く終わります。

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あわせて読みたい記事です。


参考情報・出典

  1. 国際バカロレア機構「国際バカロレア(IB)ディプロマプログラム(DP)科目概要 創造性・活動・奉仕(CAS)2017年卒業予定者から適用」(© IBO 2021)https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/programmes/dp/pdfs/cas-2017_jp.pdf
  2. 国際バカロレア機構「CAS projects」公式ページ(最終更新 2026年2月19日)https://ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/dp-core/creativity-activity-and-service/cas-projects/
  3. 国際バカロレア機構「DP passing criteria」公式ページhttps://ibo.org/about-the-ib/what-it-means-to-be-an-ib-student/recognizing-student-achievement/about-assessment/dp-passing-criteria/
  4. 国際バカロレア機構「General regulations: Diploma Programme」(Diploma Programme Assessment procedures 2026・B1)Article 2.3/Article 11https://ibo.org/globalassets/new-structure/become-an-ib-school/pdfs/dp-2026-general-regulations.pdf
  5. 筑波大学「令和9年度 国際バカロレア特別入試(7月募集・4月入学)学生募集要項」https://ac.tsukuba.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2026/04/R9_IB_youkou202607.pdf
  6. 上智大学「2027年度 国際バカロレア(IB)入学試験 第1期募集 出願要領」https://adm.sophia.ac.jp/assets/uploads/sites/2/2026/05/2027ibnyushi_1st_application_proc.pdf
  7. 九州工業大学「令和8年度 総合型選抜(国際バカロレア)学生募集要項」https://www.kyutech.ac.jp/archives/015/202511/20251105_ib1.pdf
  8. 鹿児島大学「令和8年度(2026年4月入学)国際バカロレア選抜 学生募集要項」https://www.kagoshima-u.ac.jp/exam/R08-ib.pdf
  9. 東京理科大学「2026年度 国際バカロレア入学者選抜 募集要項」https://www.tus.ac.jp/admissions/wp-content/uploads/03_2026年度国際バカロレア入学者選抜募集要項.pdf
  10. 文部科学省 IB教育推進コンソーシアム「IBを活用した入試」(日本における国際バカロレアを活用した大学入試が可能な大学・令和7年1月時点)https://ibconsortium.mext.go.jp/about-ib/entrance-exam/
  11. 葉山「【IBDP】CASでどんなことしてる 実体験をもとにまとめてみた。」(2024年2月8日)/「【IBDP】CASって何? 進路に向けた正しいCASの選び方って?」(2023年7月19日)IBDP体験記(はてなブログ)https://hayamaibdip.hatenablog.com/entry/2024/02/08/082102
  12. casa「#2[海外IB生] TOK・EE・CASは「1年目で8割」を終わらせておくべき理由」note、2026年7月24日https://note.com/mddsn_5389/n/n792e1ba1d71c
  13. Nana「CAS、結局何をやればいいの?IB経験者が答えます」Beyond Borders.(note・2026年5月24日)https://note.com/beyondborders_/n/n709b02e7cf12
  14. Ryu「【国際バカロレア/IB】CASではどういったことをすれば良いの?私のCASでの体験談」IBLOG(2023年11月19日)https://iblog-42.com/cas_experience/

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この記事を書いた人

Masakiのアバター Masaki IBDP修了生の父/教育・進路メディア運営

我が子のIB経験と海外留学準備で奮闘した保護者としての実体験が原点。「同じ保護者の目線」で膨大な情報を整理・分析し、後悔しない進路選択を共に考えるパートナーとして「国際バカロレアIB広場」を運営。大学選びから留学手続き、その先のキャリア形成までを見据えた情報を提供しています。→ 運営者プロフィール・お問い合わせ

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