日本のインターナショナルスクールを検討し始めると、多くの家庭が同じ壁にぶつかります。「英語は身につくかもしれない。でも、このまま日本の学歴レールから外れて、大学に行けなくなったりしないか」という不安です。
実際、この不安は的外れではありません。日本のインターの多くは、法律上「学校(一条校)」ではなく、卒業しても日本の高卒資格が自動では出ないからです。ただし、それが「大学に行けない」を意味するわけでもありません。
この記事は、偏差値や知名度ではなく、「認可区分」「目的」「無償化の対象か」という選ぶための3つの軸で、後悔しないインター選びを整理します。学費の一覧を並べるより先に、まず「出口(進路)が学校の種類でどう変わるか」を、文部科学省の一次情報で整理します。
- インター選びの成否を決めるのは偏差値ではなく、認可区分(一条校か・各種学校か・無認可か)。ここで卒業資格と大学へのルートが変わる。
- 一条校でないインターを出ても、IB・国際評価団体の認定・文科大臣指定・高卒認定のいずれかに乗れば日本の大学は受験できる。「行けない」の一択ではない。
- まず決めるのは目的=「日本の大学に戻る前提」か「海外大が主戦場」か「幼少期の英語環境」か。目的で選ぶ学校が変わる。
- 就学支援金(無償化)は、令和8年度(2026年度)から制度が大きく変わる移行途上。「うちのインターは対象か」は年度と在留資格で結論が動く。
インターナショナルスクールは「学校」じゃない?=認可区分で卒業資格が変わる
意外に思われますが、「インターナショナルスクール」という法律上の区分はありません。文部科学省によると、日本のインターは大きく次の3つに分かれ、多くは各種学校か、無認可です[1]。この違いが、日本での卒業資格を左右します。
| 認可区分 | どんな学校か | 日本の卒業資格 |
|---|---|---|
| 一条校 | 学校教育法第1条の学校(中等教育学校・中学校・高校など)。国際教育やIBを行う一条校もある。 | 出る(小・中・高の卒業資格) |
| 各種学校 | 学校教育法第134条。多くの英米系インターがここ。都道府県の認可を受けている。 | 出ない(別ルートで大学受験) |
| 無認可 | 認可を受けていない教育施設。少数だが存在する。 | 出ない |
日本国籍の子は「就学義務」に注意
ここが最初の落とし穴です。文部科学省は、日本国籍の子を一条校でないインターに通わせても、法律上の就学義務を履行したことにはならないと明記しています[1]。義務教育の段階(小・中)で特に関わる論点です。
さらに、一条校でないインターの小学部を終えた子が、中学から一条校(日本の公立・私立中学)へ入学することは認められません。途中でインターの中学部から日本の中学へ編入する場合も同様です[1]。「いつでも日本の学校に戻れる」とは限らない、ということです。
※ この就学義務の解釈は法令にもとづく全国共通の扱いで、自治体によって有無が変わるものではありません[1](就学案内などの運用面には自治体ごとの配慮があります)。なお外国籍の子には学校教育法第17条(就学義務)が適用されないため、民族学校やインターへの就学も可能です[2]。
同じ「名前」でも別物のことがある
混同しやすいのが、名前が似た「一条校で国際教育をやる学校」と「各種学校のインター」です。たとえば名古屋国際中学校・高等学校は一条校(日本の卒業資格が出る)ですが、名前のよく似た名古屋国際学校(NIS)は各種学校のインターです[6]。大宮国際・東京学芸大学附属国際・リンデンホールのような「中等教育学校」は、定義上すべて一条校にあたります。
つまり「英語やIBの学校=日本の卒業資格が出ない」と決めつけるのは誤り。看板の言葉ではなく、その学校の設置区分(一条校か各種学校か)を必ず確認するのが第一歩です。
このインターを出て日本の大学は受けられる?=大学入学資格の5つのルート
結論から言えば、一条校でないインターを卒業しても、日本の大学は受験できます。ただし条件つきです。文部科学省の「大学入学資格について」(2024年6月時点)は、次のどれか1つに該当すれば入学資格が認められるとしています[3]。複数の入口のうち、どれか1つに乗れば日本の大学を受験できる、という関係です。
(日本の卒業資格が出ない=各種学校・無認可の場合)
このうち、IBディプロマの取得や、WASC・CIS・ACSI・NEASC・Cognia・COBIS といった評価団体の認定校で12年課程を修了するルートは、多くのインターが実際に使っています。逆に、どれにも乗らない無認可校の卒業だけは、大学ごとの「個別の入学資格審査」に頼ることになります[3]。だからこそ、志望校がどのルートに当たるのか(IBを取るのか、認定校なのか)を入学前に確かめておくことが大切です。
※ IBについて、日本国内のディプロマ課程(DP)認定校は79校(うち日本語で学べる日本語DPは41校・令和8年3月31日時点)です[8]。一条校でIBを行う学校もあれば、各種学校のインターでIBを行う学校もあります。
「文科大臣の指定校一覧(※3)」に自分の検討校が載っていなくても、あわてる必要はありません。この一覧(令和7年3月26日現在)に載る西欧型インターはごく少数で、中身の大半はブラジル人学校や民族系の学校です[4]。アメリカン・スクール・イン・ジャパンや横浜インターナショナルスクールのような有名校は、この一覧ではなく(d)の評価団体認定ルートで大学入学資格を得ます。「指定一覧に載っていない=大学に行けない」ではありません。
目的から選ぶ=インターは3タイプで考える
認可区分と出口の関係がわかると、選び方はぐっとシンプルになります。「卒業後にどこへ向かうか」という目的から逆算すると、見るべき学校が絞れます。大きく3タイプです。
いずれ日本の大学・高校に戻る可能性を残したいなら、一条校で国際教育やIBを行う学校、またはIBディプロマや評価団体認定が取れるインターを選ぶと出口が広がります。日本の卒業資格が自動で出る一条校は、この意味でいちばん安全です。
海外大学を主に考えるなら、IBや評価団体認定の実績・進学サポートが厚いインターを重視します。この場合、日本の高卒資格が出ないことは大きな障害になりにくく、卒業生の海外進学実績を見る方が実用的です。
プリスクール・幼稚園・小学校の段階で英語環境を、という目的なら、認可区分より言語ポリシーの厳格さと日本語の守り方が焦点になります。ただし、義務教育段階で一条校でないインターを選ぶと、前述の就学義務・編入の論点が絡む点は押さえておきます。
なお、帰国子女がインターやIBを選ぶ理由として、筆者は「学び方が変わらないこと」を重視する家庭の話を聞いています。海外で身につけた学びの用語ややり方を、帰国後も断ち切らずに続けられる。IBは国際的に同じ枠組みで学ぶため、この「連続性」を求める子には合いやすい選択肢になりえます。
学費・無償化・隠れ費用の全体像
インターの学費は、学校や学齢によって幅がありますが、授業料だけで年200万〜400万円台になることが多く、家計への影響は小さくありません。しかも、家計を圧迫するのは授業料以外の「隠れ費用」です。
- 入学金・施設費・寄付金(入学時にまとまった額が必要なことがある)
- スクールバス・通学費、給食費
- 長期休暇中のアクティビティ・サマースクール費、行事や保護者の付き合い費用
※ 具体的な金額は学校ごとに大きく異なります。授業料以外の費用を含めた総額は、必ず各校の公式サイト・募集要項で最新の数字を確認してください。
ここで「授業料の一部は無償化(就学支援金)で戻るのでは」と考える方も多いはずです。ここが今、いちばん動いているところです。
2026年の私立高校無償化で、インターの扱いはどうなる?
まず現行制度(令和8年3月1日時点)では、各種学校のインターも就学支援金の対象に含まれています。文部科学省は、外国人学校のうち国際的な評価団体の認証を受けたインターなどを対象として指定しており[5]、指定一覧には有名インターが多数、実名で載っています[6]。
ところが、この仕組みは令和8年度(2026年度)から大きく変わる移行途上にあります。三党合意にもとづく方針(2026年1月26日)では、所得制限を撤廃して私立高校の生徒に45.7万円・公立に11.88万円を支給する一方で[7]、外国籍・外国人学校の扱いを次のように見直すとしています。
- 受給資格に在留資格の要件を導入し、「留学」など日本への定着が見込まれない在留資格は対象外にする[7]。
- 各種学校のうち外国人学校を指定する制度は廃止する[7]。
- ただし在校生(留学生を含む)は在学中は現行どおり継続。新入生も、従前の対象者には収入要件つきで同等水準の支援を行う[7]。
- 外国籍生徒・外国人学校の扱いは3年以内に検証して見直すとされ、細部はこれから固まる[7]。
まとめると、「うちのインターは無償化の対象か」は、いつ入学するか・在留資格・その後の制度改正で結論が変わるということです。2026年時点では移行の途中なので、検討時点での最新の指定状況を各校と文部科学省の発表で必ず確認してください。
※ 前述の「大学入学資格の指定(※3一覧)」と、この「就学支援金の対象指定」は目的の異なる別制度です。片方に載っていても、もう片方の対象とは限りません。
失敗しないインターの選び方チェックリスト+見学で聞く質問
ここまでを踏まえ、パンフレットや偏差値では見えない「本当に確かめるべきこと」をチェックリストにしました。学校見学や説明会で、そのまま質問できる形にしています。
- 認可区分:一条校か、各種学校か、無認可か。(見学で聞く:「こちらは一条校ですか、各種学校ですか」)
- 大学へのルート:IB・評価団体認定(WASC等)・文科大臣指定のどれで、日本の大学入学資格が得られるか。(聞く:「卒業生は日本の大学をどのルートで受験していますか」)
- 日本人比率と言語ポリシー:日本人の割合と、校内の「英語のみ」ルールがどこまで徹底されているか。(聞く:「休み時間や生徒同士の会話は何語が中心ですか」)
- 日本語サポート:日本語の授業・補習校との両立支援があるか。(聞く:「日本語の読み書きはどう維持しますか」)
- 出口の実績:卒業生の主な進学先(国内・海外の傾向)。(聞く:「直近の卒業生はどこへ進みましたか」)
- 費用の総額:授業料以外の入学金・施設費・行事費まで含めた年間総額と、就学支援金の対象か。
とくに「日本人が多いインターは英語が身につかないのでは」という不安は、比率そのものより言語ポリシーの徹底度で見るのが実際的です。日本人比率が同じでも、校内で英語のみを貫く学校と、そうでない学校では、英語に触れる量がまったく変わります。
あわせて意識したいのが、英語を得るかわりに日本語も英語も中途半端になる「ダブルリミテッド」のリスクです。これは学校差が大きいので、日本語をどう守るか(補習校・家庭での読書・学校の日本語プログラム)を選ぶ段階で決めておくと、あとで慌てずに済みます。
筆者の体験
我が家は公立の日本語DP(IB)に子どもを通わせましたが、学校選びで「先に確かめておく方がいい」と思うことが2つあります。ひとつは在籍人数。実際にコースへ進んだ生徒は思ったより少なく、学びの形そのものが変わりました。もうひとつは先生がどれだけ親身か。力量は外から測れませんが、親身さは説明会や在校生の話でわかります。パンフレットの数字より、この2点を見学で直接たしかめておくのがおすすめです。
「日本の大学に戻る可能性も残したい」「帰国後の学習の立て直しが不安」という場合は、IBや帰国生の受験に詳しい家庭教師に早めに相談しておくと、出口から逆算した準備がしやすくなります。
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卒業後の進路は?=国内・海外の傾向
インターの卒業生は、一般に海外大学へ進む割合が高い傾向があります。ただし、近年の円安を受けて費用面から国内大学を選び直す家庭も増えているようで、「海外一択」という時代でもなくなってきました。
国内へ進む場合も、前述のとおりIB・評価団体認定・高卒認定などのルートに乗れば受験は可能です。特に英語で学位が取れる日本の大学や、帰国生入試を実施する学部なら、インターでの学びを活かしやすくなります。数字の傾向は学校ごとに大きく違うので、志望校の直近の進学先は、見学時に必ず確認しておきましょう。
途中でインターに入る・公立へ戻るときの注意
海外経験がないまま中学・高校からインターに入るケースでは、周囲が英語に慣れた子ばかりで、当初は苦労する声も聞かれます。エッセイやレポート中心の授業は、数年たっても負荷が高いことがあります。
逆に、インターから日本の公立へ戻る場合は、前述のとおり一条校でないインターの小学部・中学部からは、一条校への入学・編入が認められない点に注意が必要です。高校受験では内申点が評価対象に入るため、戻るタイミングによって不利になることもあります。義務教育段階の具体的な扱いは自治体の運用にも関わるので、迷ったら早めに教育委員会へ相談してください。
なお、インター(多くは各種学校)ではなく、日本の一条校である私立中学に英語を活かして進む道もあります。英語入試を実施する中学は首都圏で増えていて、選び方は英語入試のある中学の選び方で整理しています。
よくある質問
まとめ|インター選びは「認可区分・目的・無償化」で決まる
日本のインターナショナルスクール選びは、偏差値や知名度ではなく、次の3つで整理すると迷いません。
- 認可区分で卒業資格と大学へのルートが決まる。看板ではなく設置区分を確認する。
- 目的(日本に戻る/海外大/英語環境)から逆算して学校を絞る。
- 無償化は2026年度から移行途上。入学年度と在留資格で結論が動く。
不安の多くは、脅しではなく「設計」で防げます。認可区分と出口を先に押さえ、見学で正しい質問をすれば、我が子に合う学校は見えてきます。海外大や留学まで視野に入れているなら、進路の選択肢と費用を早めに相談しておくと、準備がぐっと具体的になります。
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参考情報・出典
- 文部科学省「就学事務Q&A(問11 インターナショナルスクールと就学義務)」
- 文部科学省「就学事務Q&A(問13 外国人の子の就学)」
- 文部科学省「大学入学資格について」(2024年6月時点)
- 文部科学省「(※3)外国の高等学校相当として指定した教育施設一覧」(令和7年3月26日現在)
- 文部科学省「高等学校等就学支援金制度における外国人学校の指定」
- 文部科学省「就学支援金 文部科学大臣が指定する各種学校及び団体(一覧)」(令和8年3月1日現在)
- 文部科学省「三党合意に基づく令和8年度以降の高校教育等の振興方策について」(令和8年1月26日・初等中等教育分科会 資料1)
- 文部科学省IB教育推進コンソーシアム「認定校・候補校」(令和8年3月31日時点)
