神戸市立葺合(ふきあい)高校の国際科について調べていると、正反対の説明に出会います。検索結果の要約は「関関同立への圧倒的な進学実績」と書き、掲示板の在校生は「葺合は進学実績が同偏差値帯でもかなり悪いです」と書く。「英語だけできる子が推薦で進学しているだけ」という言い方も、もう何年も同じ形で繰り返されています。
結論から言うと、葺合高校は珍しいことに「国際科だけの合格実績」を公表しています。だから推測ではなく数字で答えられます。そして数字を見ると、通説は半分当たっていて、半分外れていました。
- 国際科は募集定員80名の全員が推薦入学。学力検査(一般入試)で入る道はない
- 国公立大学は、学校全体の推薦系合格15件のうち11件が国際科から。「英語推薦」という見方はここでは当たっている
- 一方で私立大学は、推薦系の比率が国際科約48%・学校全体約47%でほとんど変わらない。関関同立の合格に占める国際科の割合も、在籍者の割合とほぼ同じ
- 内申点の「必要な点数」は公式には存在しない。よく見る「250点満点」は普通科に適用される規定
- 2026年度入試の推薦倍率は1.31倍(志願者105名/定員80名)。前年の1.04倍から上がった
国際科の進学実績は「英語推薦」で作られているのか
先に、この問いがなぜ長く決着しなかったのかを説明します。多くの高校は進学実績を学校全体でしか出しません。学科やコースが複数あっても、合格した大学と人数を1つの表にまとめてしまう。だから「あの実績は国際科のおかげなのか、普通科のおかげなのか」を外から確かめられないのです。これは葺合に限った話ではなく、学科別に読める学校はごく少数です(学科そのものの出口は高校の国際科・英語科の進路にまとめています)。
葺合高校はここが違います。学校案内「FUKIAI GUIDE」が、大学ごとの合格者数を国際科・英語系・理系・文系・既卒に分けて載せています[2]。学校要覧にも同じ内容が、大学名の右に「(国際)」という欄を立てる形で載っています[1]。
2つの資料は書式が違うのに、突き合わせると数字が一致します。つまり読み間違いを検算できる形で公表されている、ということです。
国公立大学:学校全体の推薦合格の約7割が国際科から
令和8年3月卒業生(2025年度卒業生)の国公立大学の合格者数は、学校全体で78件[1]。このうち国際科からの合格は20件で、内訳は総合・推薦が11件、一般が9件です[2]。
| 国公立大学 | 総合・ 推薦 | 一般 | 計 |
|---|---|---|---|
| 国際科 | 11 | 9 | 20 |
| 普通科 英語系 | 1 | 11 | 12 |
| 普通科 理系 | 2 | 19 | 21 |
| 普通科 文系 | 1 | 16 | 17 |
| 既卒 | 0 | 8 | 8 |
| 合計 | 15 | 63 | 78 |
この表の読みどころは合計行です。学校全体で15件しかない国公立の推薦系合格のうち、11件が国際科から出ています。約7割です。一方で一般選抜による合格63件のうち国際科は9件で、1割強にすぎません。
国際科の中で見ると、推薦系11件と一般9件で推薦系のほうが多い。学校全体は推薦系15件に対して一般63件ですから、逆の形です。国際科の推薦比率は、学校全体の約3倍ということになります。
※ 私立の比率は、総合・推薦(指定校を含む)と一般の実人数を分母にして算出しました。一般の延べ人数を使うと、1人が複数学部に合格した分だけ一般側が膨らみます。図の内訳は、国公立が国際科11/20件・学校全体15/78件、私立が国際科52/108件・学校全体292/622件です。元の数字は上の表と、次の「私立大学」の項にあります[2]。
私立大学:推薦の比率は学校全体とほとんど変わらない
私立大学(4年制)の合格者数は、学校全体で1,007件。内訳は総合・推薦238件、指定校54件、一般(共通テスト利用を含む)715件です[3]。
国際科からの合格は、総合・推薦と指定校を合わせて52件、一般が延べ109件(実人数56件)[2]。推薦系と一般の実人数を並べると52対56で、ほぼ半々です。学校全体は292対330ですから、こちらもほぼ半々。私立に関しては、国際科の推薦比率は学校全体と変わりません。
つまり「国際科の実績は推薦で作られている」という見方は、国公立については当たっていて、私立については当たっていない。同じ学科の話でも、国公立と私立で構造が違うわけです。
掲示板で「関学推薦学院」と皮肉られるが、関関同立のシェアは在籍比と同じ
掲示板でよく見る言い方が「葺合は関西学院に大量に進学している」です。実際、関西学院の合格は131件で、学校の中で2番目に多い私立大学です[1]。ただ、この131件のうち国際科からは23件です。なお件数だけで言えば最も多いのは近畿大学の162件(うち国際科23件)で、関西学院は2番目です。
| 大学 | 学校全体 | うち国際科 |
|---|---|---|
| 関西 | 115 | 15 |
| 関西学院 | 131 | 23 |
| 同志社 | 69 | 16 |
| 立命館 | 36 | 12 |
| 神戸市外国語 | 11 | 6 |
| 関西外国語 | 38 | 18 |
関関同立を合計すると、学校全体351件に対して国際科は66件で約19%。一方、その学年の在籍者数を見ると、3年生341名のうち国際科は73名で約21%です[1]。関関同立に占める国際科の割合は、在籍者の割合とほぼ同じ。「関関同立は国際科が稼いでいる」という言い方は、少なくともこの年度の数字からは出てきません。
※ 在籍の数字は令和8年5月1日現在の3年生で、合格実績の卒業生(令和8年3月卒)とは1学年ずれます。国際科は毎年2クラス80名の募集なので学年に占める割合はほぼ変わりませんが、厳密に同じ母集団の比較ではありません(合格件数は既卒者を含む延べ件数です)。
国際科の存在感がはっきり出るのは別の場所です。神戸市外国語大学は11件のうち6件、関西外国語大学は38件のうち18件が国際科から。外国語系の大学では、在籍比の2倍以上を占めています。
指定校推薦の枠は、関関同立が7割強
「指定校の枠は関学と産近甲龍が中心」という説明も見かけます。令和8年度入試の指定校による合格54件の内訳は次のとおりです[3]。
- 関西14/関西学院12/同志社7/立命館6(関関同立で39件=約72%)
- 甲南2/武庫川女子3/甲南女子2/立命館アジア太平洋2/立教2/早稲田2/神戸薬科1/明治1
- 京都産業・近畿・龍谷は、この年度の指定校欄が空欄
関西学院が多いのは事実ですが、産近甲龍の指定校が中心という話ではありません。ただし指定校の54件に学科の区別はついていないので、このうち何件が国際科なのかは公表されていません。
この数字で分かること、それでも分からないこと
ここまで数字を並べましたが、留保が3つあります。ここを飛ばすと、数字を読み間違えます。
- 合格件数は「延べ」。1人が5学部に合格すれば5件と数えます。だから一般選抜の件数は実際の人数より膨らみます
- 実際に進学した人数は、学科別に公表されていない。学校全体の進路先(344名の内訳)だけが公表されています
- 国公立と私立で数え方が違う。学校が示す推移グラフは国公立が「進学者数(現役)」、合格実績の表は「合格者数(延べ)」です
- 学校自身も「科・系別の合格数は、生徒からの報告をもとに算出しているため、大学が公表している合格者のべ数や、実数と異なる場合があります」と注記しています
学校全体の進路先は、令和8年3月卒業生344名のうち国公立大学70名(20%)、私立大学250名(73%)、専門学校5名、海外大学進学3名、浪人など16名(5%)[3]。ここは学科で分かれていないので、「国際科の生徒が実際にどこへ進学したか」は最後まで分かりません。合格までは学科別に読めて、進学は読めない。これが、掲示板の議論が何年も決着しない理由です。
学校自身は、推薦での実績を強みとして挙げています。進路資料には「推薦入試の合格率の高さ/数多くの面接練習や志望理由書指導」という項目が立っています[3]。指導の手厚さについては、外部の口コミではなく学校の自己評価として読むのが正確です。
なお、国公立大学への現役進学者数は、公表されている8年分の推移で50名から70名へ増えています。内訳を見ると推薦は20名から15名へむしろ減り、増えたのは一般選抜(30名→55名)です。学校自身も「約7割の生徒は一般選抜に向けた受験勉強に励む」「約95%が現役で合格」と書いています[3]。
筆者の体験
我が家の学校選びでも、ネットで拾える情報はかなりの量を読み込みました。ただ、書き込みを何十件と読んでも、最後まで決まらない論点が必ず残ります。書いている人の立場が見えないまま、強い言葉だけが積み上がっていくからです。私はその時点で数を集めるのをやめて、学校が自分で出している資料を探しに行くことにしています。
国際科の入試は「全員が推薦入学」。一般入試という入り方がない
国際科でいちばん誤解が多いのがここです。募集要項には「全日制課程 国際科 80名 ※全員推薦入学とする。」と書かれています[5]。つまり3月の学力検査で国際科に入る道はありません。兵庫県の選抜要綱でも、国際に関する学科は「募集定員の全部」を推薦入学の定員とすると定められています[4]。
もうひとつ大事な前提が、これは自己推薦ではなく学校推薦だということです。出願資格は「兵庫県内に保護者とともに居住し、中学校等校長が推薦する者」です[5]。中学校が推薦してくれるかどうかが、最初の関門です。
県外からも出願できます。募集要項は出願資格の2つめとして「兵庫県外から志願する者で入学志願承認申請手続を行い、中学校等校長が推薦する者」を定めています[5]。県内に住んでいなくても、承認申請の手続きを踏み、中学校長の推薦があれば受けられるということです。このほか、外国に1年以上在住した帰国生には別の類型が定められています(後述)。
| 募集定員 | 80名(2クラス)・全員推薦入学 |
|---|---|
| 出願できる範囲 | 兵庫県下の全中学校(通学区域は県下全域) |
| 検査日(2027年4月入学) | 2027年2月16日(火) |
| 検査内容 | 1. 英語の適性検査 2. 英語による実技検査 3. 日本語による面接 |
| 当日の時程(令和8年度の例) | 8:20集合/9:00〜9:50 適性検査/10:10〜 実技検査・面接 |
| 中学校長の承認期限 | 2027年2月4日(木)12:00まで |
| 合否結果の発表 | 2027年2月22日(月)14:00以降(システムのマイページ) |
| 入学考査料 | 2,200円(令和8年度の額) |
時程で見落としやすいのが後半です。募集要項には「実技検査・面接は、当日の受検者数及び順番によって、終了時刻が13:30を過ぎる場合があるので、昼食・水筒を持参してもよい」とあります[5]。適性検査は50分ですが、拘束時間は半日を超えます。
合否はシステムのマイページで確認する形で、電話での問い合わせには応じないと明記されています[5]。合格した場合は県内の公立高校に新たに出願できません[4]。
不合格だった場合は、3月の学力検査を実施する学科へあらためて出願することになります[4]。令和9年度の学力検査は2027年3月11日、合否発表は3月18日です[11]。2月の結果を受けて3月に切り替える設計なので、併願の考え方はこの日程を前提に組む必要があります。
倍率は1.04倍から1.31倍へ上がった
| 区分 | 2024 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|
| 国際科(推薦) | 1.16 | 1.04 | 1.31 |
| 普通科(一般) | 1.06 | 1.18 | 1.21 |
| 市立5校計 | 1.39 | 1.62 | 1.52 |
2026年度入試の志願者は105名、募集定員80名で倍率1.31倍でした[7]。前年は1.04倍で、ほぼ全員が入れる水準でした。その翌年が1.31倍です。定員どおりに合格したとすれば、4人に1人が届かない計算になります。年による振れが大きいので、前年の倍率をあてにした計画は立てにくいところです。
※ 合格者数・受検者数は県も市も学校別に公表していないため、実質倍率は算出できません。上の表はいずれも志願倍率です。
どこから通っているのか。普通科と国際科でまるで違う
「神戸から遠いけれど受けられるのか」という質問をよく見かけます。募集要項と選抜要綱の答えは明快で、国際科の通学区域は兵庫県下全域です[4]。学校案内にも「兵庫県下の全中学校から受験できます」と書かれています[2]。
これは制度上の話にとどまりません。学校要覧の「出身中学校所在地別生徒在籍数」を見ると、実態としてもそうなっています[1]。
- 国際科239名=神戸市内と芦屋市のほかに、西宮27名・明石10名・尼崎6名・伊丹6名・宝塚6名・加古川5名・三木3名・三田2名・姫路2名・淡路2名、さらに県外2名・海外4名
- 普通科822名=神戸市の各区と芦屋市だけ。県内の他市・県外・海外はすべて0名
同じ学校の中で、国際科だけが県全体から生徒を集めているのがはっきり出ています。姫路や淡路から通っている生徒が実際にいる、ということです。通学時間の負担は家庭ごとに考える必要がありますが、「遠いから無理」という前提は、少なくとも制度と実績の上では成り立ちません。
もうひとつ、進路選びの実務として知っておくとよい数字があります。国際科の在籍239名の内訳は男子67名・女子172名で、女子が約72%です[1]。普通科は822名中500名が女子(約61%)なので、国際科はさらに偏りがあります。
内申は何点必要か。公式の「必要点」は存在しない
ここがこの記事でいちばん訂正したいところです。検索すると「9教科45点満点で38〜40点」「合格ラインは190〜211点」といった数字が出てきます。しかし兵庫県の選抜要綱に、国際科の推薦入学の点数配分は書かれていません。
要綱の第7126項は、推薦入学の合否判定をこう定めています[4]。
合否判定委員会は、当該学科のスクール・ポリシー等に即して、判定資料(A)、(B)及び合否判定委員会に報告されたその他の諸資料を総合して合否の判定を行う。/判定資料(A)…調査書情報の各教科の学習の記録を、当該学科のスクール・ポリシー等に即して、総合評定した判定資料/判定資料(B)…小論文(作文)、適性検査及び実技検査の結果に基づく判定資料
「総合評定した判定資料」と「総合して判定」しか書かれていません。調査書が何点満点で、適性検査と何対何なのかは定められていないのです。
では「250点満点」はどこから来たのか。同じ要綱の第12210項、学力検査による入学者選抜の規定です[4]。第3学年の5教科(国語・社会・数学・理科・外国語)の評定の和を4倍し、実技4教科(音楽・美術・保健体育・技術家庭)の評定の和を7.5倍して合計します。これで総配点250点です。
この250点を、学力検査(500点満点)を0.5倍したものと同等に扱って合否を決める仕組みです。
この規定が適用されるのは、葺合では普通科です。普通科は第一学区の複数志願選抜で、同じ250点の定義が複数志願選抜の条項(第12318項)にも置かれ、第1志望加算点は25点と定められています[4]。つまり「250点満点で何点」という話は、同じ学校でも普通科を受ける人の話であって、国際科の判定式ではありません。
兵庫県が公表している選抜方法の一覧でも、国際に関する各学科は「推薦入学等100%/学力検査0%」で、選抜資料は「調査書、推薦書、面接、[適性検査][実技検査][小論文(作文)]」と示されています([ ]は学校判断で実施可能)[14]。点数の話はどこにも出てきません。
では、何を見られるのか
葺合高校の募集要項が示している推薦基準は、次の2項だけです[5]。
- 葺合高等学校国際科を志願する動機・理由が明白かつ適切であること。
- 本校のスクール・ポリシーを理解し、国際科に対する適性及び興味・関心を有すること。
数値基準はありません。この2項に照らして、中学校長の推薦書・調査書と、当日の適性検査・実技検査・面接を総合する[5]。「内申が何点あれば安全」という線は、公式には引かれていないというのが正確な答えです。
ネットで見かける「当日点重視」という説明についても、要綱は調査書と検査の比重を公表していません。肯定も否定もできません。一次資料からはそこまでしか言えません。逆に言えば、内申が高いから安心という話でもないし、内申が低いから受けられないという話でもない、ということです。
ただ、実務として1つ確かなことがあります。推薦してもらえなければ出願そのものができません。中学校長の推薦が前提です[5]。つまり内申点は「合格ラインに届くか」より前に、「中学校が推薦を出してくれる材料になるか」という場面で効いてきます。承認期限は2027年2月4日12時なので、動けるのは実質その手前までです[11]。
筆者の体験
我が家にも、入りたいところがある子の受験がありました。そのとき痛感したのは、学校に入れるかどうかと、希望の場所へ進めるかどうかは別だということです。だから評定は、中3を迎えるずっと手前から気にしていました。葺合の国際科のように、まず中学校が推薦を出してくれるかどうかが最初の関門になる入試なら、動き出しの早さはもっと効いてくるはずです。
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英語はどこまでできればいいのか
まず出願条件について。学校の国際科Q&Aは「英検の検定級の取得は、出願の条件ではありません」と明記しています[8]。英検を持っていないと出願できない、ということはありません。
当日の検査については、同じQ&Aが中身をかなり具体的に説明しています[8]。
- 適性検査=「長文の内容把握を中心として、聞き取り問題や論理的思考力を問う問題、自分の意見を英語で書く問題などを出題」。単語や文法は中学校教科書レベルで十分だが、「長文を読んで考え、書く力は必要」
- 実技検査=「ある決まったテーマについて自分の意見を英語で述べてもらっています」。学校は「自分の意見を英語で表現しようとする意欲が大切」と書いている
- 英検を持っている場合の優遇についても、学校は何も公表していません(Q&Aは「出願の条件ではありません」とだけ述べている)[8]
読み取れるのは、難しい単語や文法で差がつく設計ではないということです。中学校の範囲の英語で、50分のあいだに長文を読み、聞き取り、自分の考えを英語で書く。そして面接では英語で意見を述べる。求められているのは知識量ではなく処理速度と発信力だと分かります。
※ 英作文の語数指定は、募集要項・Q&Aのいずれにも記載がありません(令和8年度・令和5年度の募集要項と学校サイトの各ページを確認)。過去問は学校説明会や中学校を通じて確認するのが確実です。
公式に語数の指定はありませんが、合格者の投稿には具体的な数字が出てきます。高校受験ナビの合格体験記には「英作文はひとつにつき120語を目標にしたら良いと思います」(国際科合格)とあります。
別の合格者は「問題数がとにかく多いのでエッセイが書けてなかった子が多いです。なので私はエッセイから先に書いて問題を解いたら全部解き終わりました」と書き、在校生の投稿にも「なんせ時間が足りない」という言葉があります。時間内に書き切れるかが分かれ目になっているようです。
※ 上記3件はいずれも高校受験ナビに投稿された合格体験記および在校生の回答です。個人の体験であり、学校が公表した出題条件ではありません。
入学後、英語力はどこまで伸びているか
入る前の話より参考になるのが、在校生の英検データです。葺合高校は学校要覧で英検の取得状況を学科別に公表しています[1]。これは他ではあまり見られない情報です。
| 級 | 国際科 | 普通科 |
|---|---|---|
| 準2級 | 50 | 188 |
| 2級 | 75 | 253 |
| 準1級 | 67 | 18 |
| 1級 | 11 | 1 |
※ 国際科3年の4区分を合計すると119になり、3年生の在籍73名を超えます。したがってこれは「その級を持つ生徒の人数」ではなく、取得した級ごとの件数と読むのが整合的です(学校は集計単位を明示していません)。
注目すべきは準1級と1級です。国際科は準1級の欄に67、1級の欄に11。在籍239名に対しての数字です。普通科は822名で準1級18、1級1。在籍者数が3分の1以下の国際科が、準1級では3倍以上の数を出しています。「英語が伸びる環境なのか」という問いに対して、これはかなり直接的な答えになる数字です。
入学後は何をするのか。英語の授業量とGSⅡA
国際科の3年間で、英語の専門科目は類型により21〜25単位。これに教科「グローバルスタディーズ」が4〜8単位加わります[1]。
| 学年 | 英語の専門科目 | グローバル スタディーズ |
|---|---|---|
| 1年 | 総合英語Ⅰ(4単位)/ディベート・ディスカッションⅠ(2単位) | GSⅠ(2単位) |
| 2年 | 総合英語Ⅱ(3)/DDⅡ(2)/エッセイライティングⅠ(2)/〔選択〕コミュニケーションA(2) | GSⅡA(2)/〔選択〕GSⅡB(2) |
| 3年 | 総合英語Ⅲ(2)/DDⅢ(2)/エッセイライティングⅡ(2)/インターナショナル・エクステンシブ・リーディング(2)/〔選択〕コミュニケーションB(2) | 〔選択〕GSⅢ(2) |
1年の「総合英語Ⅰ」は英語コミュニケーションⅠの代替科目で、4単位が2単位ずつCOIA(主にReading)とCOIB(主にWriting)に分かれます。COIBはALTとのチームティーチングで、高校範囲の文法をタスクベースで学びながらライティングの基礎を作る形です[2]。
DDはDebate Discussionの略で、1年から3年まで段階的に続きます。3年の2学期には、特定の議題について各メンバーが利害関係者の立場を担うパネルディスカッションを行います[2]。
掲示板で「2年生ではgsiiaがあり、論文、プレゼン等に追われる日々となるのできつい」と言われるのは、このGSⅡAのことです。学校の説明はこうです[2]。
様々な社会問題から、生徒自身が関心のあるテーマを選び、課題研究に取り組み、英語で論文を完成させる。また、ポスターやパワーポイントの作成を行い、プレゼンテーションも実施する。校内での発表にとどまらず、多数の生徒が外部のコンテストに参加する。
2年生で英語の論文を1本書き上げる。これが必修(2単位)です。3年で選択できるGSⅢはさらに踏み込んで、7月に海外の姉妹校・連携校と神戸のインターナショナルスクールを迎えて開く高校生国際会議の企画運営を担い、後半は「平和構築」などを議題に模擬国連に取り組みます[2]。
環境面では、「英語」「国際」「外国語」の大半の科目が1クラス20名程度の少人数授業。外国人講師が7名常勤し、英語の授業の60%以上が外国人講師と日本人教諭のティームティーチングで行われています。CALL教室は4室[9]。第二外国語として2年から中国語かスペイン語を選択できます[1]。
ひとつ誤解を解いておくと、国際科は全教科を英語で学ぶ学科ではありません。Q&Aは「専門科目の英語と教科『グローバルスタディーズ』以外は、日本語での授業になります」と明記しています[8]。数学や理科は日本語です。
在校生・卒業生の声(公開されている口コミから)
数字だけでは見えない部分を、公開されている口コミから整理します。高校受験ナビの掲示板とみんなの高校情報に投稿された内容です。個人の感想であることを前提に読んでください。
- 「クラスの雰囲気は普通科とは違ってノリが全然違います」という在校生の投稿がある
- 校舎が新しく、食堂やジムなどの設備の評価が高い(みんなの高校情報の施設評価は県内上位)
- いじめの少なさの評価が比較的高い(みんなの高校情報の項目別評価)
- 課題と小テストの量が最も多く挙がる不満。学年が上がるほど増えるという声が目立つ
- 帰国生や英語が得意な生徒が多いため、日本育ちで努力して入った生徒は窮屈に感じることがある
- 2クラスの中で3年間を過ごすので、人間関係の入れ替わりが少ないという指摘
- 「進学実績が同偏差値帯でもかなり悪い」「私立文系に進学する率高め」という厳しい評価もある
一年、二年、3年になるに連れ課題が果てしなく多くなります。他校と比べても一年生の時期から圧倒的に多い課題の量をこなしています
それでもクラスの雰囲気は普通科とは違ってノリが全然違います
※ 上の2つは、同じ在校生による1つの投稿から2か所を引いたものです(高校受験ナビの掲示板・2026年6月)。個人の感想であり、学校の公式見解ではありません。
課題の量については、掲示板に「受験勉強する時間はあるのでしょうか?高三でも課題は多いですか?」という質問が投稿されていますが、回答が付いていません。ここは学校説明会やオープンハイスクールの個別相談で直接聞くべきところです。国際科のオープンハイスクールは年2回で、10月の回は中学2年生も参加できます[15]。
向いている子・慎重に考えたい子
ここまでの一次資料と口コミを合わせると、向き不向きはかなり具体的に描けます。
- 英語で「読む・書く・話す」を毎日やり続けたい。単語の暗記より、意見を英語で言うことに興味がある
- 調べて書いて発表する形の学習が好き。2年で英語の論文を1本書くことに前向きになれる
- 外国語系・国際系の学部を志望している(神戸市外国語大・関西外国語大への実績が在籍比の2倍以上)
- 総合型選抜や公募推薦で進路を決めることを、消極的な選択と思っていない
- 理系の難関国公立を一般選抜で狙いたい。国際科の教育課程は英語とグローバルスタディーズに20単位以上を使うので、理数の演習量を確保しづらい
- 塾や部活と両立させながら自分のペースで受験勉強を積み上げたい。課題の量が最も多く挙がる不満であることは知っておいたほうがよい
- 英語は好きだが、人前で英語を話すことに強い抵抗がある。実技検査も入学後の授業も、発信が前提になっている
- 2月の推薦一本で決めたい。国際科に一般入試はないので、不合格なら3月に別の学科へ出願し直すことになる
国際科と、普通科の「英語系」はどう違うのか
掲示板で繰り返し出てくる選択肢が「英語をやりたいだけなら普通科の英語系で十分ではないか」という意見です。まず制度を確認しておきます。
葺合の普通科は類型(コース)制で、「1年では共通の科目を学習しながら適性や進路を考え、2年からは文系・英語系・理系の3つの系にわかれて、それぞれの系にふさわしい科目を学習する」形です。英語系は「外国人講師による授業を充実させる等、英語に重点を置いた学習」と説明されています[1]。
大事なのは、これが入試の段階の区分ではないことです。普通科は280名を一括で募集し、3月の複数志願選抜で入ります[6]。英語系を選ぶのは入学後、2年進級のときです。実際のクラス数は2年で英語系1クラス、3年は英語系と文系を合わせて5クラス[1]。
| 国際科 | 普通科 英語系 | |
|---|---|---|
| 入り方 | 2月の推薦入学のみ(定員80名・全員推薦) | 3月の複数志願選抜で普通科(280名)に入り、2年から選ぶ |
| 通学区域 | 兵庫県下全域 | 学区内(第一学区) |
| 英語で問われる入試 | 英語の適性検査・英語による実技検査・日本語の面接 | 5教科の学力検査 |
| 英語に使う単位 | 専門科目21〜25単位+グローバルスタディーズ4〜8単位 | 普通科の科目の中で英語を重点化 |
| 国公立の合格(令和8年3月卒・のべ) | 20件(推薦11・一般9) | 12件(推薦1・一般11) |
興味深いのは合格の内訳です。英語系は国公立12件のうち推薦が1件で、ほぼ一般選抜で国公立に入っています。国際科は推薦11件・一般9件。同じ学校で英語に力を入れている2つのルートが、出口の作り方では正反対に見えます。
選び方として言えるのは、2月の推薦一本で早く決めたいなら国際科、5教科の学力検査で入って高校で英語を伸ばしたいなら普通科ということです。学区外から通う場合は、そもそも普通科は選べません。
筆者の体験
下の娘を見ていて思うのは、同じ学校でも所属によって成績の付き方が変わる、ということです。手強い顔ぶれの中に入れば、そこで上位を取るのは当然むずかしくなります。推薦で進むことを前提に置くなら、背伸びをしない選び方も候補に入るのではないか、と考えるようになりました。ただ、日々どんな同級生と過ごすかも所属で決まります。どちらを重く見るかは、それぞれの家庭が決めることだと思います。
帰国生はどう扱われるのか
兵庫県の選抜要綱には「帰国生徒にかかわる推薦入学」という規定があり、対象学科に国際科が含まれています。条件は外国における在住期間が1年以上で、その学科を第1志望とすること。通学区域は県下全域です[4]。
提出書類にも配慮があります。推薦書は「中学校長又は外国における最終学校の校長」、調査書は「調査書情報又は外国における最終学校の成績証明書若しくはこれに代わるもの」で可。合否判定についても「帰国生徒の事情を配慮しながら、総合的に合否の判定を行う」と定められています[4]。
ただし別枠の定員があるわけではありません。要綱に帰国生徒の別定員の規定はなく、同じ80名の枠の中での選抜です。
在籍者数については、学校のQ&Aに「令和4年6月現在…3学年合計で29名…国際科生徒の約12%」という記述があります[8]。4年前の数字で、最新の値は公表されていません。「帰国生が多い」という口コミは、この12%という規模感を踏まえて読むのが妥当でしょう。クラスの半分が帰国生というような話ではありません。
※ 学校要覧の出身中学校所在地別の表にある「海外4名」は、出身中学校が海外にある生徒の数で、帰国生徒の総数ではありません。
留学・海外研修は何がどれくらいあるのか
令和7年度の実績は、学校案内に具体的に書かれています[2]。
- 派遣=アメリカ(2週間)、オーストラリア(1か月)、台南第一高級中学校(3泊4日)、フィリピンフィールドワーク(3泊4日)。国際科・普通科合わせて延べ30人
- 受け入れ=延べ40人程度。デンマークからの長期留学生1名が在籍
- 高校生国際会議=毎年7月に2日間。オーストラリア・スウェーデン・台湾・インド・イランの姉妹校と共同で研究発表
- 修学旅行は台湾
気をつけたいのは、学校としての長期留学制度はないことです。Q&Aは「学校としての長期留学制度は現在行っていませんが、民間の留学斡旋団体を利用して留学する生徒は毎年数名います」と書いています[8]。1年間の交換留学を学校が用意してくれる学校ではありません。
また、研修や修学旅行の費用は公表されていません。国際科・普通科合わせて延べ30人という規模なので、希望すれば全員が行けるものでもありません。費用と選抜の方法は、説明会で確認する項目に入れておくべきところです。
お金の話。公立の授業料と、公表されていない部分
公立高校ですから授業料の負担は小さく、就学支援金の支給上限額は全日制で年額118,800円です[17]。令和8年度からは所得制限が撤廃され、世帯年収にかかわらず授業料の支援を受けられる形になりました[12]。
ただし、家計に効くのは授業料だけではありません。神戸市は学校徴収金(教材費・積立金など)について「通学する高等学校にご確認ください」としており、金額を公表していません。市立高校の学校徴収金は月払いのみで、口座振替の手数料が1回あたり50円+消費税かかります[13]。
つまり「公立だから安い」で終わらせられない部分が残ります。海外研修に参加すればその費用、修学旅行は台湾。国際科を検討するなら、授業料以外の実費を学校に直接確認しておくのが確実です。
学校の基本情報
| 正式名称 | 神戸市立葺合高等学校(ふきあい) |
|---|---|
| 設置者・区分 | 神戸市立・共学(神戸市立の全日制高校5校のひとつ) |
| 設置学科 | 普通科・国際科 |
| 所在地 | 〒651-0054 神戸市中央区野崎通1丁目1-1 |
| アクセス | 阪急王子公園駅から徒歩約10分 |
| 在籍数 | 1,061名(普通科822名/国際科239名)・令和8年5月1日現在 |
| 国際科の設置 | 2001年(前身の英語科は1986年設置) |
| 教育目標 | 自主の人たれ/創造の人たれ/世界の人たれ |
| 指定事業 | 2014年 スーパーグローバルハイスクール指定/令和元年度からWWL拠点校/令和4年度からKOBE ALネットワーク事業の拠点校 |
| オープンハイスクール(令和8年度) | 国際科=6月13日(土)・10月3日(土)/学校公開日=10月31日(土) |
国際科の実績としては、兵庫県の英語ディベートコンテストで5連覇を達成しています。ほかにチャーチル杯全日本高等学校英語弁論大会第3位、大阪大学の待兼山会議で最優秀賞、全国高校生フォーラム出場などが令和7年度の記録として挙がっています[2]。
よくある質問
まとめ:数字で見た葺合高校 国際科
「国際科の進学実績は英語推薦で作られているのか」という問いに、公表資料から答えるとこうなります。国公立についてはその通りで、学校全体の推薦系合格の約7割が国際科から出ています。私立については当たっていません。推薦の比率は学校全体とほぼ同じで、関関同立に占める割合も在籍者の割合と変わりません。国際科の強さがはっきり出るのは、外国語系の大学です。
そして、どちらの立場も最後までは証明できません。学校が公表しているのは合格の件数(延べ)までで、実際にどこへ進学したかは学科別に出ていないからです。数字で言えるところまで言って、言えないところは言えないと書く。それが、掲示板で何年も続いてきた議論に対して、いまできる一番正確な答えだと考えています。
受験の実務としては、押さえるべき点は3つです。国際科は全員推薦入学なので2月で勝負が決まること。中学校長の推薦が前提で、承認期限は2027年2月4日12時だということ。
そして内申の必要点は公式には存在しないので、「何点あれば安全」という情報は出典を確かめて読むべきだということ。倍率は1.04倍から1.31倍へ振れており、前年の数字はあまり参考になりません。
気になる点は、10月のオープンハイスクール(中学2年生も参加可)や学校公開日で直接確かめるのが確実です。特に課題の量と海外研修の費用は、公表資料からは分からない部分です。
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あわせて読みたい


参考情報・出典
- 神戸市立葺合高等学校「2026 学校要覧」(令和8年5月1日現在)
- 神戸市立葺合高等学校「2026 FUKIAI GUIDE」(学校案内)(令和8年2月版)
- 神戸市立葺合高等学校「令和8年度 進路状況」(令和8年5月)
- 兵庫県教育委員会「令和8年度兵庫県公立高等学校入学者選抜要綱」(令和7年12月19日)
- 神戸市立葺合高等学校「令和8年度 国際科生徒募集要項」(令和7年12月3日)
- 神戸市教育委員会「市立高校のさらなる特色化・魅力化にむけて」(総合教育会議 資料1)(令和8年5月1日)
- 兵庫県教育委員会「令和8年度兵庫県公立高等学校推薦入学等志願状況(確定)」(令和8年2月9日確定)
- 神戸市立葺合高等学校「国際科Q&A」(更新年の記載なし。帰国生徒数は令和4年6月現在の記述)
- 神戸市立葺合高等学校「国際科紹介」
- 神戸市立葺合高等学校「学校の歩み」
- 兵庫県教育委員会「令和9年度兵庫県公立高等学校入学者選抜に関する基本方針及び日程について」(令和8年7月2日)
- 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度のお知らせ」(令和8年度)
- 神戸市「神戸市立高等学校のWeb口座振替登録(学校徴収金)」
- 兵庫県教育委員会「令和8年度兵庫県公立高等学校入学者選抜実施結果」(令和8年6月20日)
- 神戸市立葺合高等学校「国際科オープンハイスクール」(令和8年度)
- 神戸市立葺合高等学校「交通アクセス」
- 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要(支給限度額)」(令和8年度)
