IA(Internal Assessment=内部評価)は、IBディプロマの中で「先が読めない課題」の代表格です。テーマも進め方も自分で決めるため、何が正解なのかが最後まで分かりにくい。
しかもIAの不安は、書き方だけではありません。生成AIをどこまで使っていいのか。締切に間に合わなかったらどうなるのか。先生が付けた点は、そのまま自分の成績になるのか。
結論から言うと、生成AIは禁止されていません。締切に間に合わないときも、答えは「未完成でも出す」の一択です。この記事では、日本語で説明されることの少ないこの2つを、いちばん厚く書きました。
- IAは授業態度や普段の提出物の積み上げではなく、科目ごとに決まった1つの課題。日本の内申点とは別物です
- 最終成績に占める比率は科目でまるで違い、理科・数学の20%から、美術の40%、音楽HLの50%まで幅があります
- 先生が付けた点はそのまま最終点になりません。IBが学校単位で調整(モデレーション)をかけます
- 生成AIは禁止されていません。ただし使ったなら本文と参考文献に明記が要り、黙って使えば不正行為になります
- 間に合わないときは未完成でも出す。出さないとその科目の成績自体が出ず、ディプロマにも響きます
IAは「内申点」でも「平常点」でもない
最初に、日本の学校制度から来た人がつまずきやすい誤解をひとつ外しておきます。
授業態度や提出物の積み上げではない
「内部評価」という日本語から、日本の内申点のようなものを想像する人がいます。授業に出て、発言して、宿題を出していれば上がる点、という理解です。
これは違います。IAは科目ごとに1つ(科目によっては2つ)と決められた課題で、その提出物だけが採点対象です。学校の先生が採点するので「内部」と呼ばれているだけで、日々の態度を積み上げた点ではありません。
採点するのが先生であることと、採点の対象が普段の様子であることは、まったく別の話です。ここを取り違えると「普段まじめにやっているから大丈夫」という、いちばん危ない見通しを立ててしまいます。
主な科目のIA早見表(形式・比率・分量)
もうひとつの誤解が「IAはどの科目でも2割くらい」というものです。実際には20%から50%まで、科目によって倍以上の開きがあります。形式も、レポートとは限りません。
| 科目 | SL | HL | IAの形式 | 分量・時間の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 生物・化学・物理[1] | 20% | 20% | Scientific investigation(探究の報告書) | 3,000語以内/約10時間 |
| 環境システムと社会[8] | 25% | 20% | Individual investigation(探究の報告書) | 3,000語以内/約10時間 |
| 数学AA(AIも形式・配点は同じ)[5] | 20% | 20% | Exploration(数学的な探究) | 12〜20ページ/10〜15時間 |
| 言語A(文学/言語と文学)[6] | 30% | 20% | Individual oral(口頭試験) | 15分(発表10分+質疑5分) |
| 言語B[7] | 25% | 25% | Individual oral(口頭試験) | 12〜15分(+準備時間) |
| 歴史[9] | 25% | 20% | Historical investigation(史料に基づく調査) | 2,200語以内/約20時間 |
| 経済[10] | 30% | 20% | Portfolio(コメンタリー3本) | 各800語以内/約20時間 |
| 心理[11] | 25% | 20% | Experimental study(実験レポート) | 1,800〜2,200語/約20時間 |
| 美術[12] | 40% | 40% | Exhibition(完成作品の展示) | 作品と解説文 |
| 音楽[13] | 30% | 合計 50% | Experimenting with music(+HLはもう1本) | 実験報告と音源 |
| 演劇[14] | 30% | 20% | Production proposal(上演の企画書) | 12ページ以内 |
表で目を引くのは、言語A・言語BのIAが口頭試験だという点でしょう。文学作品を比較して論じるエッセイはIAではなく外部評価の側にあり[6]、IAで問われるのは「話して答える」力です。「IA=レポート」という前提で準備すると、科目によっては丸ごと的を外します。
音楽HLは内部評価が2本あり、合計すると最終成績の半分になります。美術も4割。芸術系を取っている人にとって、IAは「試験の付け足し」ではなく本体です。
※ 科目ごとの内部評価・外部評価の比率をまとめて見たい場合は、IBDPの評価配分の記事で扱っています。どの科目を取るかを決める段階の話はIBの科目選択の記事へ。
いま自分に効いているガイドはどれか
IBは科目ガイドを数年ごとに改訂します。やっかいなのは、公式サイトに「まだ始まっていない新しい版」の資料が先に並ぶことです。
たとえば心理は、2027年初回試験の新しい版ではIAがResearch proposalに変わりますが、いま在学している生徒に効いているのは2019年初回試験の版(Experimental study)です[11]。公式サイトで見つけた資料をそのまま信じると、自分には関係のない課題の準備を始めてしまいます。
確認の仕方は簡単です。資料の表紙にある「First assessment 20XX」を見て、自分が最終試験を受ける年がその年以降なら新しい版、手前なら現行版。迷ったら学校のコーディネーターに聞くのが確実です。
先生が付けた点は、そのまま最終点にはならない
IAで最も知られていないのが、この仕組みです。学校の先生が付けた点は、IBに送られたあとで調整されます。モデレーション(moderation)と呼ばれます。
採点のし直しではなく、採点基準の点検
IBは公式資料で、モデレーションを「生徒の作品を採点し直す作業ではなく、先生の採点基準を確認する作業」だと説明しています[15]。目指しているのは、地球の裏側の学校に通っていても同じ点になる状態で、IBはこれを「世界標準(global standard)」と呼んでいます。
手順はこうです。学校から提出された作品のサンプルを外部の試験官が採点し、先生の採点と統計的に比べます。ずれがあれば、その差を埋める調整が入ります。
調整は「その学校の全員」にまとめて効く
ここが読者に効く部分です。調整は個人単位ではなく、その学校・その科目の全員にまとめてかかります。先生の採点が一方向に偏っていれば全員が同じ幅で動き、点数帯によって偏り方が違えば幅も点数帯ごとに変わります[15]。自分の作品がサンプルに選ばれていなくても、結果は自分の点に反映されます。
そして下がることも、上がることも、変わらないこともあります。調整が入ったからといって先生の採点が悪かったという意味ではない、とIBはわざわざ書き添えています[15]。
もうひとつ、知っておくと気が楽になる事実があります。IBは満点を付けられた生徒をサンプルに選ばない傾向があると明記しています[16]。先生が厳しめに採点していた場合に、上位層が上方修正される余地を残すためです。
だから「先生に気に入られる」は戦略にならない
この仕組みが意味するのは、合わせにいく相手は先生ではなく、評価規準そのものだということです。先生の採点が甘ければ、学校ごと下方修正されて元に戻ります。
先生が最終的なIAの点を教えてくれないことがあるのも、同じ理由からです。学校が付けた点は確定値ではなく、調整前の暫定値でしかありません。
※ 出願に使う予測スコア(predicted grades)についてはIBの予測スコアの記事で扱っています。結果が出たあとの再採点(remark)という選択肢については再受験とリマークの記事へ。
生成AIはどこまで使っていいか
いまIA周りでいちばん不安が大きいのがここです。海外のIB生のコミュニティでも、テーマ選びより「AIを疑われた」という相談のほうが強い反応を集めています。
IBは禁止していない。ただし「あなたの作品」ではない
国際バカロレア機構は、学問的誠実性の方針の中で「AIソフトウェアの使用を禁止しない」と明言しています[17]。数年のうちに電卓や翻訳ソフトと同じくらい日常的になる、だから禁じるより倫理的な使い方を教えるほうが理にかなっている、という理由です。
ただし同じ箇所に、決定的な条件が続きます。IBはAIが作ったものを、たとえ一部であっても生徒自身の作品とは見なしません[17]。だから他人の文章を引用するときと同じで、AIが生成した文章・画像・グラフを使ったなら、それが引き写しであることが分かるようにしなければなりません。
本文中でそのソフトウェアに言及し、参考文献にも載せる。これをしなければ「自分が書いていないものを自分のものとして提出した」ことになり、不正行為(academic misconduct)にあたる、とIBは書いています[17]。
- 使ってよい:使ったことを本文と参考文献に明示する(引用と同じ扱い)
- アウト:黙って使う(明示しなければ、使い方の巧拙にかかわらず不正行為)
- アウト:言語習得科目(言語Bなど)で文法・語法を助けるツールを使う
- アウト:ある言語で書いてから、別の言語に翻訳して提出する
下2つは見落とされがちです。言語習得科目では文の構成そのものに点が付くため、この種のツールの使用は認められていません。また、母語で書いてから訳す手順は、科目を問わず認められていません[18]。理由は別で、IBがバイリンガル・ディプロマを授与しており、大学や学校が履修した語学の科目を「その言語で作業できることの証明」として見ているためです。
引用にはプロンプトと日付まで書く
明示の仕方まで公式に決まっています。IBは、本文中の引用に引用符に加えて、AIに与えたプロンプトと、生成された日付を含めるよう求めています[18]。引用の書式そのものは、学校が採用しているスタイル(MLAやAPAなど)に従います。
つまり「AIを使いました」と一言添えるだけでは足りません。何を聞いて、いつ得た答えなのかまで残すのが公式の要求です。逆に言えば、ここまで書ける使い方をしているなら堂々と使えます。
どこからが不正になるのか(語数で決まる部分がある)
「剽窃はいけない」と言われても、どこからが剽窃なのかは分かりにくいものです。IBは処分の一覧表(penalty matrix)で、語数の線をはっきり引いています。
外部のソースから出典を示さずに使った場合、連続40〜50語でレベル2=そのコンポーネントが0点、51語を超えるとレベル3a=その科目の成績が出ないと定められています[19]。レベル3aは、科目1つが丸ごと消えるということです。表の注記によれば、重大な場合はさらに複数科目、そのセッションの全科目にまで及ぶことがあります。
この基準は、他人の文章をそのまま写した場合だけでなく、語を入れ替えて言い換えた場合も対象に含まれます[19]。「自分の言葉に直したから大丈夫」は成り立ちません。出典を示すかどうかが分かれ目です。
同じ表には、第三者に書いてもらった作品・大幅に手を入れてもらった作品の行もあります。教師の助言の枠を超える大幅な編集はレベル2、全面的に他人が書いた・編集したものはレベル3aで、表の注記は家族・友人・家庭教師・添削サービスを名指ししています[19]。
もうひとつ、うっかりやりがちなのが同じ作品をIAとEEの両方に出すことです。これは認められていません[26]。
疑われたときに効くのは、過程が残っていること
では、使っていないのに疑われたらどうするか。ここで手がかりになるのが、学校が作品の真正性をどう確かめるかについての公式の記述です。
科目ガイドは、確認の手段として「生徒本人との内容についての対話」「最初の提案」「最初の下書き」「引用した文献」「本人の他の文章と比べた文体」、そしてTurnitinのような剽窃検出サービスによる分析を挙げています[26]。
注目したいのは、検出ツールは並んでいる手段の1つでしかなく、しかもその主語が「教師」だという点です[26]。生徒が自分でTurnitinにかけることが求められているわけではありません。
裏を返せば、最初の提案・下書き・調べた文献・本人が説明できることが残っていれば、それがそのまま自分の側の材料になります。ツールの判定だけで結論が出る仕組みにはなっていません。日付の残る場所に下書きを置き、参考文献を最初から記録しておくのは、点のためではなく身を守るためにも効きます。
※ この節の内容は、IB公式サイトが2026年2月時点で現行として案内している学問的誠実性の方針(付録「AIツールの使用に関する指針」)に基づいています[27]。IBの学習全般での生成AIの使い方は、IB生のChatGPT活用の記事でも扱っています。
締切に間に合わないとき、何が起きるか
ここは日本語でほとんど説明されていない部分です。先に結論を書くと、「未完成でも出す」が、ほぼ常に「出さない」より良いという構造になっています。
出さないと、その科目の成績自体が出ない
IAを提出しない場合、学校のコーディネーターはIBに対して「非提出」を選ぶか、IAの点として「F」を入力します。その結果、その科目の最終成績が出ません(grade N)[22]。低い点が付くのではなく、成績が存在しない状態になります。
後のセッションで再受験の登録をすることはできます[22]。ただしそれは、卒業のタイミングと出願のスケジュールがまるごと動くということでもあります。
Nが1つあると、ディプロマが授与されない
影響は科目1つでは止まりません。ディプロマが授与される条件のひとつが、TOK・EE・対象科目のいずれにもNが付いていないことです[23]。
つまりIA1本の未提出が、合計点が24点に届いているかどうかとは無関係に、ディプロマ全体を止めます。これがIAを「出すか出さないか」で考えてはいけない理由です。
間に合わないと分かった時点でやること
IBは教師に対し、作品や参加が未完成であっても点を付けなければならないと定めています。「F」が入力されて成績が消えるのは、提出がまったく無かった場合と、作品の真正性が確認できない場合です[28]。
つまり未完成でも提出すれば採点の対象になり、出さなければ成績が消える。この非対称がある以上、迷う場面ではありません。
- まず担当の先生とIBコーディネーターに連絡する。学校の締切と、学校がIBへ送る期限は別物なので、実際にどこまで猶予があるかは学校しか答えられません
- 完成していない部分があっても、そこまでを提出できる形にまとめる(規準は項目ごとに独立して適用されるため[2]、埋まっている部分は評価されます)
- 体調や事情で遅れる場合は、証明できるものを揃えて学校に相談する。校内の締切の前に体調を崩した場合は、学校がIBに問い合わせたうえで締切の延長が認められることがあります[28](ただし、単に締切に出さなかったこと自体は「やむを得ない事情」には当たりません)
外部評価を受けたうえで、採点できる範囲を広げておくことには意味があります。病気などの事情が認められた場合でも、成績が出るのは外部評価を含めて配点の50%以上が採点できる状態にあるときだからです[28]。
※ 校内の運用(何日まで受け付けるか、減点があるか)は学校ごとに異なります。IB自身も「可能な限り締切は調整されるべき」と書いています[28]。ここは推測で動かず、自校のコーディネーターに確認してください。
提出物の体裁と、先生の使い方には公式のルールがある
表紙に氏名を書かない
IAの提出物は匿名が原則です。IBは、氏名・セッション番号・学校名を、表紙にもヘッダーやフッターにも書かないよう求めています。個人コード(例:abc123)を使うことはできますが、必須ではありません[20]。
すでに書いてしまった人のために付け加えると、完成している作品から識別情報を消すことまでは求められていません。IBが求めているのは、今後の提出を匿名にすることです[20]。
理科の科目ガイドはさらに具体的で、報告書の冒頭に書くのはタイトル・IB個人コード・語数だけとし、表紙も目次も不要と明記しています[21]。表紙は作らなくてよく、むしろ書かないほうがよいのは氏名などの識別情報です。作り込んでも点にはなりません。
先生が助言できる下書きは1回だけ
「先生を頼れ」とよく言われますが、頼れる回数には公式の上限があります。教師が読んで助言できるのは下書き1回までで、教師が手を入れて直すことはしません。次に渡す版が提出版になります[25]。
一方で、生徒の側から相談を持ちかけることは推奨されており、助言を求めたことで減点されることはないとも明記されています[25]。相談は何度でもできて、清書に対する添削が1回だけ、という設計です。
この1回をどこで使うかが実際には効きます。半分の完成度で出せば助言も半分の精度になり、完成しすぎてから出せば直す余地がありません。
テーマ(RQ)が決まらないときの判定軸
IAで最初に詰まるのはたいていテーマ、正確にはリサーチクエスチョン(RQ)です。ここで役に立つのは発想法よりも、捨てるための基準です。
判定の軸ははっきりしています。その問いで、評価規準が求めていることを示せるか。理科なら現行の規準は「研究デザイン・データ分析・結論・評価」の4つで、各6点・合計24点満点です[2]。面白い問いでも、自分でデータを取れなければ「データ分析」で示せるものがありません。
- 自分の手でデータが取れない(=分析と評価の規準で示すものが無い)
- 結論が最初から分かっている(=考察に書くことが残らない)
- 語数や時間に対して広すぎる(3,000語で世界の環境問題は扱えません)
- 学校の設備・倫理面で実行できない
「難しいテーマのほうが高得点になる」という思い込みも、ここで外しておいたほうがいいものです。規準が測っているのはテーマの難易度ではなく、その問いにどう答えたかです。手に負えないテーマを選ぶと、扱いきれなかった分だけ規準を満たせなくなります。
なお、理科の規準は2025年初回試験の版から変わっています。化学ガイド(2016年初回試験)では「Personal engagement(個人的な関与)」を含む5つの規準でしたが[3]、現行の4規準にこの項目はありません[2]。ネット上の解説にはまだ旧規準を前提にしたものが多く残っています。
紛らわしいことに、Personal engagementという規準はいまも数学IAには存在します[4]。理科と数学で話が混ざっている解説を見かけたら、この取り違えを疑ってください。
※ 規準の文言に出てくる指示語(analyse/evaluate/discuss など)の読み解き方はCommand Termsの記事、シラバスの使い方はシラバス活用の記事で扱っています。
それでも、規準を読んで自分の原稿の弱点を見つける作業は、慣れていないと難しいものです。学校の先生に見てもらえるのは下書き1回だけという制約もあります。IBの評価の型を知っている人に、立ち上がりだけでも伴走してもらう選択肢は持っておいて損がありません。
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IBは独特。“経験者”に頼るのが立ち上がりの近道。
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IBは学習法も評価(EE/TOK/IA)も独特で、入学後に負荷を感じる生徒は少なくありません。EDUBALの教師はIBを実際に経験した帰国子女×現役大学生が中心。まずは無料の体験授業で、オンライン指導が合うかを1回確かめてみるのが近道です。
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実例(exemplar)はどこまで見ていいか
他の人のIAを見てみたくなったときのために書いておくと、英語圏にはIAやEEの実例を集めたサイトがいくつもあります。日本語ではほとんど紹介されていませんが、探せば見つかります。
線引きははっきりしています。構成や分量の感覚をつかむために読むのは自由、文面を借りた瞬間にアウトです。前に見たとおり、IAで出典を示さずに連続51語を超えて使えば、その科目の成績が出ません(EEは1コンポーネントしかない事情から別扱いで、連続100語超が対象です)[19]。
実例を見るなら、目的を「型を知る」に限定するのが安全です。どこに何が書いてあるか、データはどのくらいの量か、評価と限界はどう書かれているか。文章そのものではなく、骨格を見る使い方であれば、規則とぶつかりません。
IAの点は、大学に届くのか
「IAの成績が大学入試の合否を左右する」という説明を見かけますが、IB側の仕組みを見るかぎり、そのままでは正確ではありません。
大学に届く成績証明書(transcript)に載るのは、氏名・生年月日・学校名・科目と成績です。ディプロマ取得者にはこれに総点と結果が加わります[24]。つまりIA単独の点は大学に届きません。
ではIAが効かないかというと逆で、IAは科目の成績に組み込まれてから届きます。理科なら2割、美術なら4割がそこに入っている。見えない形で、しかし確実に効いているというのが正しい理解です。
ただし、大学がIAの現物(レポートそのもの)の提出を求めるかどうかは大学ごとの募集要項の話です。志望校がある場合は、その要項で確かめてください。
保護者の方へ:子どもがIAで何をしているのか
IAは、保護者から中身がいちばん見えにくい課題です。テストのように範囲があるわけでもなく、進み具合を聞いても本人が説明しづらい。
そのうえで、親にできることとできないことは、実ははっきり分かれています。IBは保護者の責務として、子どもの作品の完成にあたって不当な援助・許可のない援助を与えないことを挙げています。作品を書いてやることや、手を入れすぎることが、その例として名指しされています[29]。
できるのは、環境と段取りの側です。IB自身も保護者の役割として、無理のない作業量を計画できるよう支えることを挙げています[29]。締切がいつで、いまどのあたりにいるのかを一緒に把握する。体調と睡眠を守る。先生に相談したかを聞く。この記事の前半にある規則(下書きは1回、未提出はN)を、親のほうが知っておく。
「手伝えない」ことは、放っておくことではありません。手を出せない領域がはっきりしているぶん、出せる領域に力を集められます。
筆者の体験
我が家の長男が通ったのは、公立高校の日本語DPでした。入学してからずっと、親から見ても手探りが続いていたように思います。
IAのような課題は、親が中身を手伝えるものではありません。できたのは、進み具合を聞くことくらいでした。
IB向けの対策サービスを使い始めたのは最終試験の前です。使い始めるのがもっと早ければよかった、というのが今の実感です。
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まとめ:今日やることを1つ決める
IAの不安の多くは、規則を知らないことから来ています。知ってしまえば、判断が要る場面はそれほど多くありません。
- 自分の科目のIAが何%で、何を出すものなのかを確かめる(表紙の「First assessment」で版も確認する)
- 評価規準を手元に置き、RQがその規準で示せるものかを見直す
- AIを使ったなら、本文と参考文献に書く。プロンプトと日付も残す
- 下書きを先生に見てもらう1回を、いつ使うか決める
- 間に合いそうにないなら、今日コーディネーターに連絡する
IAは、締切に追われている間は苦しい課題です。ただ、自分で問いを立てて調べ切る経験そのものは、大学に入ってから確実に効いてきます。
参考情報・出典
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Biology」(First assessment 2025・化学/物理も同一)
- 国際バカロレア機構「Biology guide」(First assessment 2025)内部評価の記述。ガイド本体はIBのProgramme Resource CentreおよびIB Storeで配布(科目ページ)
- 国際バカロレア機構「Chemistry guide」(First assessment 2016)内部評価の記述(科目ページ)
- 国際バカロレア機構「Mathematics: analysis and approaches guide」(First assessment 2021)内部評価の規準(科目ページ)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Mathematics: analysis and approaches」(First assessment 2021)およびMathematics: analysis and approaches guide(分量・所要時間)。配点20%が applications and interpretation でも同じであることは同 applications and interpretation のsubject briefで確認
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Language A: literature」(言語と文学も同形式)、および Diploma Programme Assessment procedures(個別口頭の時間)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Language B」(First assessment 2020)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Environmental systems and societies」(First assessment 2026)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: History」(First assessments 2017・SL/HL)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Economics」(First assessments 2022・SL/HL)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Psychology」(First assessment 2019=現行)。新版はFirst assessment 2027
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Visual arts」(First assessments 2016=現行)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Music」(First assessment 2022)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme subject brief: Theatre」(First assessment 2024)
- 国際バカロレア機構「Assessment principles and practices: Quality assessment in a digital age」(モデレーションの説明)
- 同上(モデレーションのサンプル選定)
- 国際バカロレア機構「Academic integrity policy」(2023年3月版・付録「Guidance on the use of artificial intelligence tools」)
- 同上(AIの引用書式・言語習得科目の例外・翻訳の禁止)
- 同上(ペナルティの運用と、剽窃の処分表〔penalty matrix〕行1)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme Assessment procedures 2025」(提出物の匿名化)。本文書はIBのProgramme Resource Centreで配布(評価に関する公式ページ)
- 国際バカロレア機構「Biology guide」(First assessment 2025)報告書の書式(科目ページ)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme Assessment procedures 2025」(未提出とgrade N)(評価に関する公式ページ)
- 国際バカロレア機構「Assessment principles and practices」(ディプロマ授与の条件)
- 国際バカロレア機構「Transcripts FAQ」(2026年2月19日更新)
- 国際バカロレア機構「Biology guide」(First assessment 2025)内部評価の指導と真正性(科目ページ)
- 国際バカロレア機構「Biology guide」(First assessment 2025)真正性の確認手段とIA・EEの重複禁止(科目ページ)
- 国際バカロレア機構「Artificial intelligence (AI) in learning, teaching, and assessment」(2026年2月19日更新/AI方針が現行であることの確認)
- 国際バカロレア機構「Diploma Programme Assessment procedures 2025」(未完成の作品の採点と、成績の対象になる条件)(評価に関する公式ページ)
- 国際バカロレア機構「Academic integrity policy」(2023年3月版・保護者と法定後見人に期待される役割、および許可のない援助についての記述)
