IB内部評価(IA)で高得点を狙う方法|2025年最新テーマ選び・書き方のコツ

「IA(Internal Assessment)」。この言葉に、プレッシャーや漠然とした不安を感じている国際バカロレア(IBDP)生、そしてお子様を心配する保護者の方も多いのではないでしょうか。

数ヶ月にわたって取り組むIAは、多くの学生と保護者にとって大きな挑戦です。特に、保護者の方は「子どもをどうサポートすべきか分からない」という悩みを抱えることも少なくありません。

この記事は、そんな悩みを抱える方々のための「完全ガイド」として作成しました。一般的なアドバイスに留まらず、「高得点を取る生徒は、具体的に何をしているのか?」という視点から、テーマ設定のコツ、科目別のポイント、そして評価官に響く構成・執筆法まで、実践的な知識と経験を注ぎ込んで解説します。

この記事を読み終える頃には、IAへの不安が自信に変わり、最初の一歩を踏み出す準備が整っているはずです。

目次

IAの基本知識|なぜ最終成績の30%を占めるのか?

IA対策の第一歩は、敵を知ることから。まずはIAがどのようなもので、なぜ重要なのかを正確に理解しましょう。

IAは「スキルの証明書」である

IAは、単なるレポートや課題ではありません。これは、あなたがIBの2年間で学んだ調べるスキル、考えるスキル、伝えるスキルを証明するための「成果物」です。

ペーパーテストと違い、自分でテーマを決め、調査・実験し、分析・考察してまとめるという一連の取り組みそのものが評価されます。つまり、一夜漬けが効かない、あなたの「本当の学習力」が問われる課題なのです。

なぜIAは重要なのか?

IAが重要な理由は主に2つあります。

IAが重要な2つの理由
  1. 最終成績への影響が大きい
    IAは、多くの科目で最終成績の20%〜30%を占めます。これは、ペーパーテストの一つの大問をはるかに超える比重です。IAで高得点を確保できれば、最終試験で多少の失敗があっても、それをカバーできる強力な保険になります。

    より詳しい科目ごとの評価配分については、こちらの記事「国際バカロレア(IBDP)の評価配分について」をご確認ください。
  2. 大学進学・その先で役立つ
    IAで身につく調べる力、考える力、計画する力は、大学のレポートや将来の仕事でも必ず役に立ちます。
    特に、IBスコアを利用した日本の大学入試においては、IAの成績が合否に直結することもあります。IAは、IBでの学びの集大成であると同時に、未来への大きな投資なのです。

内部評価(IA)と外部評価(EA)の違い

IBの評価は、大きく分けてこの2つ。違いを理解しておきましょう。

評価方法内部評価 (IA)外部評価 (EA)
評価者あなたの学校の先生IBが任命した外部の評価官
内容レポート、実験、口頭発表、作品制作など最終統一試験(ペーパーテスト)
特徴時間をかけて取り組める
自分の興味関心を追求できる
先生からアドバイスをもらえる
試験時間は厳密に決まっている
出題範囲が広い
一発勝負の側面が強い

IAは、試験本番のプレッシャーがない環境で、あなたの興味や強みを最大限に発揮できるチャンスです。

高得点獲得の5ステップ|最高評価を取る生徒がやっている具体的手順

高得点IAを作成するための5ステップを示すロードマップの図解。リサーチクエスチョンの決定から計画、調査、評価基準の解読、執筆までの流れを視覚的に表現しています。

ここからが本題です。IAで高評価を得るためのプロセスを、5つの具体的なステップに分けて解説します。

Step 1:【最重要】リサーチクエスチョン(RQ)を制する者はIAを制す

IAの成否は、リサーチクエスチョン(研究で明らかにしたい問い)で9割決まると言っても過言ではありません。良いRQは、あなたの研究の道しるべとなり、論理的な構成と深い分析へと導いてくれます。

良いRQと悪いRQの例

悪いRQの例 ❌

環境問題について

なぜ悪いのか?:テーマが広すぎます。「何について」「何を」知りたいのかが全く不明確で、調査の方向性が定まりません。

シェイクスピアは偉大か?

なぜ悪いのか?:答えが「はい」か「いいえ」で終わってしまい、深い分析につながりません。議論の余地がない問いはRQとして不適切です。

良いRQの例 ✅

〇〇市のカフェ3店舗における、プラスチック製カップ削減施策が顧客満足度に与える影響の比較分析

なぜ良いのか?:場所・対象・目的が具体的で、調査が可能です。また、「比較分析」という手法も明確に示されています。

「ハムレット」と「マクベス」における女性キャラクターの描写を通じて、シェイクスピアの女性観はどのように変化したか?

なぜ良いのか?:比較対象が明確で、議論の余地があります。「どのように変化したか」という問いが、深い分析と考察を促します。

「勝てる」RQを見つける3つのコツ

そもそもIAの成否は、大元をたどれば科目選択の段階から始まっています。興味を持てる科目、得意な科目を選ぶことが、良質なRQ設定の第一歩です。

勝てるリサーチクエスチョンを見つける3つのコツを示す図解。「興味・関心」「実現可能性」「教員への相談」を象徴する、電球・チェックリスト・吹き出しの3つのアイコンが描かれています。

「興味」と「好奇心」を源泉にする

「高得点が取れそうだから」という理由だけでテーマを選ぶと、長いIAの取り組みで必ず息切れします。あなたが本当に「知りたい!」「面白い!」と思えることは何ですか?趣味、将来の夢、授業で唯一面白いと感じたトピックなど、自分の心に問いかけてみましょう。

実現可能性を冷静にチェックする

データ・資料は手に入るか?時間内に終えられるか?倫理的な問題はないか?これらの点を事前に確認することで、途中で行き詰まるリスクを避けられます。

担当教員を最大限に活用する

あなたの担当教員は、過去のIAを何本も見てきたプロです。自分のアイデアを積極的に相談し、「このRQは調査可能か?」「IBの評価基準に合っているか?」といった視点で、客観的なアドバイスをもらいましょう。

Step 2:しっかりした計画とタイムマネジメント

優れたIAは、優れた計画から生まれます。行き当たりばったりで進めるのは、最も危険なやり方です。

IAタイムライン(8週間モデル)

タスク具体的なアクション
Week 1テーマ探し & RQの決定アイデア出し、担当教員との相談、先行研究の概要調査
Week 2-3調査 & データ収集文献調査、実験の実施、アンケート・インタビューの実施
Week 4-5データ分析 & 構成案作成収集したデータを整理・分析。IA全体の骨組みを作成
Week 6下書き作成(初稿)とにかく最後まで書き上げる。完成度は気にしない
Week 7担当教員からのアドバイス & 修正初稿を先生に提出し、意見をもらう。大幅な修正を行う
Week 8最終推敲 & 提出誤字脱字、引用スタイルのチェック。体裁を整えて提出

保護者の方へ:このタイムラインをお子様と共有し、進捗をさりげなく気にかけてあげてください。「IA、順調?」とプレッシャーをかけるのではなく、「何か手伝えることある?」とサポートの姿勢を示すことが大切です。

Step 3:質の高い調査とデータ収集

IAの説得力は、その根拠となるデータの質にかかっています。

情報源を吟味する

Wikipediaや個人のブログだけでなく、Google Scholar、大学の論文データベースなど、学術的な信頼性の高い情報源を活用しましょう。

一次資料と二次資料を区別する

  • 一次資料:あなた自身が直接集めたデータ(実験結果、アンケート、インタビュー記録など)
  • 二次資料:他者が集めたデータや分析(論文、書籍、ニュース記事など)

記録を徹底する

参照した文献の情報(著者、タイトル、出版年、URLなど)は、見つけたその場ですぐに記録する癖をつけましょう。後で参考文献リストを作成する際に、地獄を見ずに済みます。

Step 4:評価基準を「採点官の視点」で読み解く

各科目のIAには、評価基準(採点表)が定められています。これを理解せずして、高得点はあり得ません。(そもそもシラバス全体の効果的な使い方については、こちらの記事「国際バカロレア(IBDP)シラバスの効果的な使い方」で詳しく解説しています。)

評価基準は、単なるガイドラインではありません。「評価官があなたのIAを採点する際に使う、唯一のチェックリスト」です。そして、そのチェックリストを正しく読み解く鍵となるのが、IB特有の「指示語(Command Terms)」です。

今すぐやるべきこと

IBの公式サイトから、自分の科目の最新の評価基準をダウンロードし、印刷してください。そして、IA執筆中は常にそれを横に置き、自分の書いたものが各基準の最高レベルを満たしているか、常に自問自答しながら進めましょう

例:サイエンス科目の「Personal Engagement」の基準

低評価の例 「このテーマに興味があったので選びました」と書くだけ。

高評価の例 「授業で学んだ〇〇の原理に疑問を持ち、それを検証するために独自の実験方法を考案した。当初の仮説は△△だったが、予備実験で□□という予期せぬ結果が出たため、RQをこのように修正した」など、あなた自身の思考の流れや工夫を具体的に示す。

Step 5:論理的な構成と分かりやすい執筆

IBの内部評価(IA)レポートの標準的な構成要素を示す構造図。表紙、導入、調査方法、本体、結論、参考文献、付録の各セクションが、積み重なった本として視覚的に表現されています。

優れた分析も、分かりにくい構成や稚拙な文章では評価官に伝わりません。

標準的なIAの構成

  1. 表紙:氏名、IB番号、科目名、IAのタイトル、RQ、提出日、文字数などを記載
  2. 導入:研究の背景、目的、RQを明確に提示。なぜこの研究が重要なのかを簡潔に説明
  3. 調査/実験方法:どのようにデータを収集・分析したのかを具体的に記述。第三者が同じ方法を再現できるレベルの詳しさが理想
  4. 本体/分析:収集したデータを提示し、分析・考察を行う。IAの核となる部分。グラフや表を効果的に使用する
  5. 結論:RQに対する明確な答えを述べる。研究の限界や今後の展望にも触れると、評価がさらに高まる
  6. 参考文献リスト:参照したすべての文献を、指定された引用スタイル(MLA, APAなど)に従って正確にリストアップ
  7. 付録:本文には含めないが、関連する補足資料(生データ、アンケートの質問票など)を添付

執筆のヒント

文章は常に「明快、簡潔、客観的」を心がけましょう。感情的な表現や話し言葉は避け、学術的な文体を保つことが重要です。

科目別IA攻略法|各グループで最高評価を狙うテクニック

IAは科目によって、その性質が大きく異なります。ここでは、主要な科目グループごとのポイントを解説します。

Group 1:言語A(母国語・第一言語)

特徴
文学作品の分析が中心。作品に対する深い理解と独自の解釈が求められます。

高得点のコツ

  • 複数の作品を比較分析する
  • 文学的技法(象徴、メタファー、構造など)に着目
  • 歴史的・社会的背景を考慮した解釈

よくある失敗

  • 作品のあらすじを述べるだけ
  • 感想文のような主観的な記述

Group 2:言語B(第二言語)

特徴
言語習得、文化理解、コミュニケーションに関する研究が中心。

高得点のコツ

  • アンケートやインタビューを活用したオリジナル調査
  • 言語使用の社会的側面に着目
  • 母国語との比較分析

注意点

  • 調査対象者の倫理的配慮を忘れずに
  • 言語能力の個人差を考慮した分析

Group 3:個人と社会(歴史、地理、経済学、心理学など)

特徴
人間社会の様々な側面を科学的に分析。データ収集と統計分析が重要。

高得点のコツ

  • 一次データの収集(アンケート、インタビュー、観察など)
  • 適切な統計手法の使用
  • 複数の理論やモデルを用いた分析

注意点

  • サンプルサイズと代表性に注意
  • 因果関係と相関関係の区別

Group 4:理科(物理、化学、生物、環境システムと社会(ESS)

特徴
実験やデータ分析を通じた科学的探究。再現性と客観性が重要。

高得点のコツ

  • 独自の実験設計
  • 複数回の試行と統計処理
  • 予期しない結果に対する考察

注意点

  • 安全性の確保
  • 変数の制御
  • 測定の精度と誤差の考慮

Group 5:数学

特徴
数学的モデリングや問題解決。実世界の問題を数学で解決するアプローチ。

高得点のコツ

  • 実際の問題に数学を応用
  • 複数のアプローチで検証
  • 数学的コミュニケーションの重視

注意点

  • 数学的記述の正確性
  • 結果の妥当性の検証

Group 6:芸術(音楽、美術、演劇など)

特徴
創作活動とそのプロセスの記録。技術的スキルと創造性の両方が評価。

高得点のコツ

  • 創作プロセスの詳細な記録
  • 他の作品や技法との比較分析
  • 文化的・歴史的背景の理解

注意点

  • 技術的な完成度と創造性のバランス
  • プロセスの可視化

IA失敗パターン5選|これで点数を落とす生徒が続出

最後に、多くの生徒が陥りがちな失敗とその対策を共有します。失敗を避けるために、ぜひ頭に入れておいてください。

よくある失敗 ❌回避策 ✅
RQが広すぎる・曖昧Step 1に戻り、具体的で調査可能なレベルまで絞り込む。担当教員に「このRQで高得点は狙えますか?」と単刀直入に聞いてみる
剽窃(コピペ)引用元は必ず明記する。他人の文章をコピペするのは論外。自分の言葉で説明し直す場合も、必ず出典を示す。Turnitinなどのチェックツールを活用する
アドバイスを無視する担当教員からの意見は、高得点への道標。プライドは捨て、指摘された点は真摯に受け止め、修正案について再度相談する
ギリギリまでやらないIAはマラソン。Step 2のタイムラインを参考に、今日から始める。完璧主義にならず、まずは下書きを書き上げることを目標にする
評価基準を読んでいないこれが一番の致命傷。今すぐ印刷し、熟読する。自分のIAが、各基準で何点取れそうか自己評価してみる

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おわりに:IAはあなたを成長させる最高の機会

長い記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

IAは、間違いなく大変な課題です。しかし、それは同時に、自分の興味を深く掘り下げ、知的好奇心を満たし、これからの人生で役立つ本質的なスキルを身につける、貴重なチャンスでもあります。

プレッシャーに押しつぶされそうになったら、思い出してください。完璧なIAなど存在しません。大切なのは、自分なりの問いを立て、誠実に探究し、その取り組みと結果を分かりやすく示すことです。

もちろん、時には自分一人では解決が難しい壁にぶつかることもあるでしょう。そんな時は、IBでの学習経験を持つ先輩や専門家の視点を借りるのも一つの有効な手段です。

例えば、IB経験者の講師がマンツーマンでサポートしてくれるも選択肢として検討してみるのも良いかもしれません。

この記事が、あなたのIAの旅を照らす一筋の光となれば、これほど嬉しいことはありません。あなたの挑戦を、心から応援しています。

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この記事を書いた人

Masakiのアバター Masaki 国際バカロレア進路専門家

我が子のIB経験と海外留学準備で奮闘した保護者としての実体験が原点。「同じ保護者の目線」で膨大な情報を整理・分析し、後悔しない進路選択を共に考えるパートナーとして「国際バカロレアIB広場」を運営。大学選びから留学手続き、その先のキャリア形成までを見据えた情報を提供しています。

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