アメリカの大学への留学は、学術的な成長はもちろん、国際的な視野を広げる素晴らしい機会です。しかし、卒業が近づくにつれて、こんな疑問や不安を感じる学生やご家族も多いのではないでしょうか。
卒業後もアメリカに残って働けるのかな?
どんなビザが必要なんだろう?
この記事では、アメリカの大学を卒業する(または卒業した)日本人留学生が、卒業後にアメリカで就労経験を積むための主なビザについて、最新情報を含めてわかりやすく紹介します。
基本的な考え方
アメリカの大学を卒業した留学生がすぐに「永住権(グリーンカード)」を取得して自由に働けるわけではありません。
多くの場合、まずは「就労許可」を得て一時的に滞在し、その間に長期的な就労ビザや永住権を目指すことになります。
卒業後の進路として最も一般的なのは、OPTを利用し、その後H-1Bビザを目指すルートです。

OPT(Optional Practical Training)
卒業後の最初のステップ
OPTは、F-1学生ビザを持つ留学生が、専攻分野に関連した実務経験を積むために一時的に米国内で就労することを許可する制度です。
卒業後のキャリアを考える上で、とても重要なステップとなります。
種類
- Pre-completion OPT
在学中に利用可能(パートタイムが主) - Post-completion OPT
卒業後に利用可能(フルタイム)- この記事では主にこちらを解説します
期間
- 通常、最大12ヶ月間の就労が許可されます
- STEM分野
(科学・技術・工学・数学)の学位を取得した学生は、一定の条件下でさらに24ヶ月間の延長(合計36ヶ月)が可能です
これは「STEM OPT Extension」と呼ばれ、2025年1月に新しい規則が施行されました。
対象となる専攻リストは随時更新されるため、ご自身の専攻が該当するか大学の留学生オフィスに確認が必要です。
申請時期と手続き
- 卒業日の90日前から卒業後60日までの間に申請可能ですが、卒業前に申請を完了させることが強くおすすめです
- 申請手続きは、大学の留学生オフィス(DSO – Designated School Official)を通して行います
- OPT申請が保留中で現在のOPTが期限切れになっても、申請が適切に行われていれば自動的に180日間雇用許可が延長されます
F-1ステータス維持(Grace Period/Cap-Gap)
- グレースピリオド
卒業後は60日間の猶予期間があり、この間にOPT申請、帰国準備、または他のビザステータスへの変更を行う必要があります - 失業許容期間
OPT期間中の失業が一定日数(通常OPTは90日、STEM OPT延長期間含め合計150日)を超えるとステータスを失う可能性があるので注意しましょう - Cap-Gap延長
OPT期間中にH-1Bビザに申請・選考され、10月1日の就労開始までにOPTが終了する場合、「Cap-Gap Extension」によりOPT期間が自動的に延長されます
重要な点
- OPT期間中の仕事は、自身の専攻分野に直接関連している必要があります
- OPTを開始するには、雇用主がE-Verify(雇用資格確認プログラム)に登録されている必要があります
- 最近の規則では、オンラインクラスを1つまたは最大3単位まで履修することが可能になりました
H-1Bビザ(専門職就労ビザ)
OPT期間中に就労経験を積み、さらに長期的にアメリカで働きたい場合、多くの人が次に目指すのがH-1Bビザです。
これは専門的な知識(通常は学士号以上の学位が必要)を要する職種に就く外国人労働者のための非移民就労ビザです。
H-1Bビザの基本情報
- 年間発給枠
65,000枠(一般枠)+ 20,000枠(米国大学院修了者向け)が設けられています - スポンサーシップ
雇用主(企業)がスポンサーとなり、あなたの代わりにビザ申請を行う必要があります - 有効期間
通常3年間(最大6年まで延長可能)
費用と期間の目安
- 申請費用
基本申請料(約$460)、詐欺防止料($500)、ACWIA訓練費($750〜$1,500)、プレミアム処理料(オプション、約$2,500) - 負担区分
法律で雇用主が負担すべき費用(詐欺防止料、ACWIA訓練費など)と、個人で負担可能な費用があります - 処理期間
通常2〜6ヶ月(プレミアム処理では15営業日以内)
申請プロセスとタイミング
- 登録期間
毎年3月上旬から中旬(※年度ごとに期間が微調整される可能性がある) - 抽選プロセス
毎年、登録者数が枠を上回る場合は「受益者中心(beneficiary-based)」の抽選方式を実施(※詳細ルールや仕組みは年度によって変更されることがある) - 申請結果通知
例年3月末頃に抽選結果が発表 - 就労開始日
抽選通過後、同年10月1日から就労可能
抽選落選時の代替ルート
- OPTが継続中であれば引き続き就労し、翌年再度H-1B抽選に参加
- 他のビザカテゴリー(O-1、L-1、Eビザなど)への切り替えを検討
- 日本または第三国でのキャリア構築と将来的な米国再挑戦の計画を立てる

重要な点
- 希望する職種がH-1Bの対象となる「専門職」であるか確認しましょう
- 雇用主がH-1Bのスポンサーになる意向があるか事前に確認しておくことが大切です
- 抽選という不確実性があるため、OPT期間を有効活用しつつ、他のキャリアパスも視野に入れておくと安心です
- 2025年から「受益者中心」の選考方式が導入され、同一の申請者に対する複数のスポンサー登録は認められなくなりました
OPT・H-1B以外の
ビザオプション
OPTやH-1B以外にも、特定の状況下で利用可能なビザやパスがあります。
代替ビザオプション
- J-1ビザ
- 用途:インターンシップ・研修など短期交流プログラム
- 申請方法:大学・企業などの認定スポンサー組織を通じて申請
- 注意点:
- プログラム終了後、原則2年間の本国(日本)帰国義務(212(e))
- 帰国義務免除申請(Wavier)手続きが別途必要になる場合あり
- O-1ビザ
- 対象:科学・芸術・教育・ビジネス・スポーツ等で、国際的に認められた顕著な実績を有する人
- ポイント:
- H-1Bのような年間発給数制限なし
- “卓越性”を証明するための受賞歴、出版物、メディア報道など厳格な基準あり
- メリット:数量枠を気にせず、条件を満たせば申請可能
- L-1ビザ
- 対象:同一企業の海外支社から米国支社へ転勤する管理職(L-1A)または専門知識職(L-1B)
- 要件:
- 日本本社等で直近3年以内に通算1年以上の勤務実績
- 転勤先企業でも同様の職務内容であること
- 期間:初回最長3年(L-1Aは最大7年、L-1Bは最大5年まで延長可能)
- Eビザ(E-1/E-2)
- 対象:日米間の貿易取引を主導する従業員(E-1)または米国への実質的投資を行う出資者・担当者(E-2)
- 特徴:
- 数量制限なし、要件を満たせば更新可能
- 投資額や貿易規模に応じて長期滞在が可能
- 申請:在日米国大使館・領事館で手続き
永住権への道
- H-1Bなどを経て雇用主がスポンサーになる方法(PERM労働認証プロセス)
- 特定のカテゴリー(卓越能力保持者、研究者、投資家など)で自己申請する方法
- 家族(米国市民や永住権保持者)を通じて申請する方法
卒業後の進路のために
在学中からできること
- 学業に励む
良い成績は就職活動やビザスポンサー探しに有利に働きます - 専門性を高める
自分の専攻分野での知識やスキルを深め、アピールできるようにしましょう - インターンシップ(CPT)
在学中に専攻と関連のあるインターンシップを経験することは、卒業後の就職活動に非常に役立ちます- カリキュラムの一部として単位を取得しながら実施するもので、OPTとは異なります
- フルタイムCPTを12ヶ月以上使用するとOPT資格に影響する場合があるので注意が必要です
- キャリアセンターや留学生オフィスの活用
大学の各種サポート部門を積極的に活用しましょう - ネットワーキング
教授、クラスメート、業界のイベントなどを通じて人脈を築くことが大切です - 情報収集と早期準備
ビザの規定は頻繁に変更される可能性があります。常に最新情報を収集し、早めに準備を始めましょう
実際の事例から学ぶ
先輩の成功事例
アメリカの大学・大学院を卒業後、実際にOPTやH-1Bビザなどを利用してキャリアを築いている日本人の方々の体験談から学ぶことはとても貴重です。以下に、公開情報をもとにした事例を紹介します。
事例1:Mikkeyさんの場合
(デザイン系大学院 → OPT → H-1B)
経歴
日本での就職経験後、アメリカのデザイン系名門大学院Pratt Instituteで情報体験デザイン修士課程を修了。
卒業後の道のり
- 卒業後、OPTを利用して現地企業に就職
- OPTの承認遅延や解雇など大きな困難に直面
- 諦めずに就職活動を継続し、別の企業から内定を獲得
- 最終的にH-1Bビザのスポンサーシップを得てビザ取得
学びのポイント
ビザ取得プロセスが常に順調に進むとは限らないこと、予想外の困難に直面する可能性もありますが、強い意志と継続的な努力によって道を切り開くことができるという教訓があります。特に早めの準備と柔軟な対応力が重要です。
事例2:松川倫子さんの場合
(教育系大学院 → OPT → H-1B → 長期)
経歴
コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで教育テクノロジー修士課程を修了。
卒業後の道のり
- 卒業後、OPTを利用して就労
- H-1Bビザを取得し、その後更新も経験
- H-1B期間(最長6年)後の選択肢も考察
学びのポイント
松川さんの経験は、短期的なビザ取得だけでなく、H-1B期間(最長6年)後のキャリア継続についても考える必要性を示しています。選択肢としては、一度米国外で1年以上勤務して再度H-1Bを申請する、Lビザ(企業内転勤)やEビザ(貿易・投資家)への切り替え、永住権申請などがあります。長期的なキャリアプランニングの視点が大切です。
日本人留学生のための
特別な考慮点
日本企業とのつながりを活かす
- 日系企業での就職
米国に拠点を持つ日系企業は、日本人留学生にとって言語と文化の強みを活かせる選択肢となります - 将来的なL-1ビザの可能性
日本の本社で一定期間(通常1年以上)勤務した後、L-1ビザを通じて米国オフィスへの転勤が可能な場合があります
日米の架け橋となるキャリア
- バイリンガルの強み
日英両言語のスキルを持つ人材は、グローバルビジネスにおいて高い価値があります - 国際取引・ビジネス
日米間のビジネスに関わる職種では、文化的背景と言語スキルが強みになります
ビザ以外の選択肢
- 日本へ帰国
米国での学位と経験を活かして、グローバル企業や外資系企業での就職を目指せます - 第三国での機会
カナダ、オーストラリア、シンガポールなど、他の英語圏国家での就労機会も検討してみましょう - 起業家としての道
革新的なアイデアを持つ場合、スタートアップビザなど起業家向けの選択肢も視野に入れてみては?

おすすめの学習ツール
留学を成功させるには、事前の英語力強化が欠かせません。
特に日本人が苦手とする「英語を話す力」を効率的に伸ばすなら、AI英会話アプリ「Speak(スピーク)」がおすすめです。
ChatGPTの開発元OpenAIから投資を受けた最新技術で、人を相手にする緊張感なく、24時間いつでも会話練習ができます。
1日20分でスピーキング力が
驚くほど向上すると評判のアプリ
希望と現実
アメリカのビザ取得
アメリカの大学を卒業後に現地で就労経験を積むことは、多くの留学生にとって魅力的な選択肢であり、OPTやH-1Bといった制度はそのための道筋を提供しています。
ただし、特にH-1Bビザの取得には競争や抽選といった不確実性が伴うのも事実です。
大切なのは、正確な情報を得て、早めに準備を始め、利用できるリソース(大学のDSO、キャリアセンターなど)を最大限に活用すること。
そして、万が一希望通りに進まなかった場合の代替プランも考えておくことで、より安心して将来設計ができるでしょう。
よくある質問
- OPTの申請はいつから始められますか?
-
一般的に卒業予定日の90日前から申請可能とされています。
ただし、審査に時間がかかることが多いため、できるだけ早く申請することがおすすめされています。
- STEM専攻でなくてもOPT延長はできますか?
-
現在の規則では、STEM OPT延長(24ヶ月)は、STEMに指定された専攻の学位を持つ方のみが対象となっています。
STEM専攻のリストは定期的に更新されるため、最新情報を確認することが重要です。
- H-1Bビザの抽選に落ちた場合、どうすればよいですか?
-
抽選に落ちた場合でも、OPT期間中であれば就労を継続できます。
翌年再度抽選に参加する、他のビザカテゴリー(O-1、L-1、Eビザなど)を検討する、または代替キャリアパスを考えるといった選択肢があると言われています。
- 日本の大学を卒業後、アメリカの大学院に進学する価値はありますか?
-
個人の目標による部分が大きいですが、アメリカの大学院修了者はH-1B抽選において有利になる可能性があります(修士枠の抽選があるため)。
また、専門知識を深め、ネットワークを構築する機会にもなると多くの専門家は指摘しています。
- OPTやH-1B以外にアメリカで働く方法はありますか?
-
はい。O-1ビザ(特殊能力者向け)、L-1ビザ(企業内転勤)、Eビザ(投資家・貿易業者)など、他のビザカテゴリーも存在します。
また、永住権(グリーンカード)申請という選択肢もあります。
それぞれの要件や適格性については、移民法の専門家に相談することをおすすめします。