「留学決定!でも健康保険はどうなるの…?」
海外留学の準備リストの中で、ワクワクする航空券予約やキラキラした留学先の寮選びに比べて、健康保険の手続きは地味で後回しにしがちなもの。
でも、思いがけない病気やケガの際に、その違いは数十万円、時には数百万円の差となって帰ってくることも。
「親の健康保険の扶養に入ったままでいいの?」
「帰国時に病院にかかれる?」
そんな疑問を持ちながらも、複雑な制度に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
実は、親の健康保険が「会社員のもの」か「自営業のもの」かで、手続きもカバー範囲も大きく変わってくるんです。
この記事では、留学準備の重要なピースである健康保険について、知っておくべき基本と注意点を分かりやすく解説します。
ポイント1
親の健康保険の種類で
手続きが大きく変わる!
日本の健康保険制度には主に以下の2種類があり、親がどちらに加入しているかによって、海外留学する子の扶養の扱いが大きく異なります。
- 会社の健康保険(被用者保険)
会社員や公務員などが勤務先を通じて加入する健康保険組合や協会けんぽなど - 国民健康保険
自営業者やフリーランス、無職の方などが、住んでいる市区町村で加入する健康保険
ケース1
親が会社員・公務員の場合
親が会社の健康保険に加入していて、子がその扶養に入っている場合、海外留学中も引き続き扶養家族として健康保険の恩恵を受けられる可能性があります。
これは、「海外特例」と呼ばれる制度によるものです。
「海外特例」って何?
留学生が知っておくべき仕組み
被用者保険における「海外特例」とは、被保険者(親)に扶養されている家族が海外に居住する場合でも、一定の要件を満たせば引き続き日本の健康保険の被扶養者として認める制度です。
海外特例の主な要件(留学の場合)
海外留学する子が海外特例の適用を受けて扶養に入るためには、健康保険組合や協会けんぽによって多少異なりますが、一般的に以下の要件を満たす必要があります。
- 留学目的であること
- 日本国内に住所を有しないこと
- 生計維持関係
- その他
- 留学目的であること
被扶養者となる子が、「外国において留学をする学生」であること - 日本国内に住所を有しないこと
海外転出届を提出し、日本の住民票がなくなっていること(多くの長期留学生が該当) - 生計維持関係
主に親(被保険者)からの仕送りなどによって、子の留学中の生活費や学費が賄われていて、生計が維持されていること。
具体的には、親からの送金額等が、子の年間収入の半分以上であり、かつ子の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害年金受給者は180万円未満)であることなどの基準があります - その他
加入している健康保険組合や協会けんぽが定める追加の要件を満たすこと
手続きが必要です
海外特例の適用を受けるためには、要件を満たしていることを証明する書類を添えて、親の勤務先を通じて加入している健康保険組合または協会けんぽに「被扶養者(異動)届」などの申請を行う必要があります。
主な必要書類の例
- 留学先の在学証明書
- 学生ビザのコピー
- 親からの送金証明書(送金した事実と金額が分かるもの)
- 戸籍謄本など、海外居住の事実や親との関係、生計維持状況を証明する書類
- 外国語の書類には翻訳文が必要な場合もあります
確認先
手続きの詳細、必要書類、提出期限などは、加入している健康保険組合や協会けんぽによって異なります。
必ず親の勤務先の人事・総務担当部署を通じて、健康保険の窓口に事前に詳細を確認してください。
【注意】
扶養に入れても
留学先での医療費は別問題!
会社の健康保険の海外特例により、留学中も引き続き親の扶養に入ることができたとしても、それはあくまで日本の健康保険の仕組み上の話です。
留学先の国で病気や怪我をして現地の医療機関にかかった場合の医療費は、原則として日本の健康保険では直接カバーされません。
海外の医療費は非常に高額になることが多いため、扶養に入れたかどうかに関わらず、留学期間をカバーする十分な補償内容の海外旅行保険(留学保険)に必ず加入することをお勧めします。これが、留学中の医療費に備える最も重要な手段です。

なお、海外特例が適用されている場合、一時帰国中に日本の医療機関にかかる際に日本の健康保険証を使用できるメリットがあります。
ケース2親が自営業の場合
親が自営業やフリーランスなどで国民健康保険に加入している場合、留学する子が海外転出届を提出し、日本の住民票を抜くと、国民健康保険の被保険者資格を失います。
国民健康保険は、日本の市町村に住民登録がある人を対象とした制度です。
海外に転出して日本の住民でなくなった場合、国民健康保険の対象外となります。
国民健康保険には、被用者保険のような「被扶養者」という厳密な概念はありません。
同じ世帯で住民登録をしていれば加入者となりますが、海外に転出し住民票がなくなると、たとえ親が国民健康保険に加入していても、その子が国民健康保険の適用を受けることはできません。
一時帰国時の医療費はどうなる?
知っておくべき対策
海外転出により国民健康保険から外れている状態で一時帰国した場合、日本の医療機関にかかる際には日本の健康保険証は使えません。医療費は全額自己負担となります。
このような場合に備えて、海外旅行保険(留学保険)で「一時帰国中の医療費補償」が含まれているプランを選ぶことも検討しましょう。
また、滞在期間によっては、一時帰国のたびに住民登録を行い国民健康保険に加入する方法もありますが、手続きの煩雑さや保険料の負担などのデメリットもあります。
親の健康保険 | 学生が海外転出届を提出した場合 | 学生が住民票を日本に残した場合 |
---|---|---|
会社の健康保険 (被用者保険) | 海外特例の要件を満たせば、引き続き扶養に入れる可能性がある。 (要件・手続きは加入先の健康保険に要確認) | 引き続き扶養に入れる。 (ただし、海外での医療に日本の保険証は使えない点は同じ) |
国民健康保険 | 原則、国民健康保険の資格を失い、扶養からも外れる。 日本の健康保険証は使えなくなる。 一時帰国中の医療費は全額自己負担となる。 | 引き続き国民健康保険に加入し、保険料の支払い義務も継続。 (ただし、海外での医療に日本の保険証は使えない点は同じ。一時帰国中は使える) |
最重要ポイント海外旅行保険(留学保険)は必須!
選び方と注意点
どちらの場合であっても、留学先の国での病気や怪我に備えるためには、海外旅行保険(留学保険)への加入が絶対不可欠です。
親の健康保険の扶養に入れるかどうかに関わらず、高額になりがちな海外での医療費をカバーするためには、十分な補償のある海外旅行保険に必ず加入しましょう。

また、留学先の大学によっては、独自の保険への加入を義務付けていることもあります。出発前に必ず確認し、必要な手続きを完了させておきましょう。
留学準備の際には、まず親の健康保険の種類を確認し、扶養に関する手続きについて早めに情報収集と確認を始めることをお勧めします。万全の備えで、充実した留学生活を送ってください。