英語外部試験とは
英語外部試験(英語外部検定)の定義
英語外部試験とは、公的な教育機関ではなく、英検®、TEAP、IELTS、TOEIC、TOEFLなど民間機関や外部機関の独立した第三者機関が実施する英語の能力を測るための試験のことを指します。
近年、多くの大学が入試において、これらの試験スコアを利用する「英語外部試験利用入試」が導入されているため、この英語外部試験の重要性が高まっています[1]。
2025年度一般選抜においても民間の英語資格・検定試験を利用する大学は多数あり、受験生にとって避けては通れない選択肢となっています。

英語外部試験の特徴として、国際的な基準に基づいた英語の4技能(読む、聞く、話す、書く)を評価するものが多いことが挙げられます[2]。
また、受験者は自らのレベルに合わせて試験を選ぶことができ、多くの試験は年に複数回実施されているため、何度もチャレンジすることが可能。
「英語外部試験利用入試」の
増加の背景
近年、多くの大学が「英語外部試験利用入試」を導入していますが、この背景にはいくつかの要因が考えられます。

- 1.国際化の進展
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グローバル化が進む中、大学も国際的な視点を持つ学生を求めています。そのため、英語の4技能(読む、聞く、話す、書く)を総合的に評価する外部試験の導入が進められています。
- 2.試験の公平性
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英語外部試験は、国際的な基準に基づいていて、全国どこでも同じ内容の試験を受けることができるので、地域や学校による差をなくし、公平な評価を行うことが可能となる。
- 3.多様な試験選択
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受験生は自分の英語力や目的に合わせて、様々な外部試験から選択することができることから、より多くの学生が自分の得意な分野を活かして受験することができるようになりました。
- 4.教育改革の影響
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日本の教育改革の一環として、英語教育の実践的な能力を重視する動きが強まっています[3]。この流れを受け、大学入試も実践的な英語力を評価する方向へとシフトしてきました。
- 5.受験生のニーズ
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英語外部試験は年に複数回実施されているため、受験生は何度でもチャレンジすることができます。これによって、一度の失敗が致命的でなく、多くのチャンスを得ることができるというメリットがあります。
大学入試への利用方法

英語の外部検定試験は、大学入試において重要な役割を果たしています。しかし、その利用方法は大学や学部によって異なります。
ここでは、外部試験が大学入試でどのように利用されているのかを見ていきます。
大学入試での利用
出願資格
得点に加点
得点に換算
合否判定の優遇・参考
出願資格になる
- 概要
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各大学が認定する英語外部検定の基準となる級やスコアを持っていると、特別枠で入試に出願できる。
- 特徴
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英語の試験が免除となり、残りの教科の試験結果で合否の判定がなされる。多くの場合一般入試との併願が可能で、純粋に合格のチャンスが増えることになる。どの程度有利になるかは、出願に必要な級・スコアの基準と募集人数のバランスによる。
得点に加点される
- 概要
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各大学が認定する英語外部検定の基準となる級やスコアを持っていると、入試結果に加点される。
- 特徴
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所持している級・スコアに応じて加点度合が大きくなる。加点は5点~10点程度の大学が多い。特に人気大学ではボーダー付近で1点刻みで多くの受験生がせめぎ合っているため、5~10点でも大きな差となる。
みなし得点に換算される
- 概要
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各大学が認定する英語外部検定の基準となる級やスコアを持っていると、実際の入試を受けなくても入試で〇〇点を取ったとみなす(換算する)。
- 特徴
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例えば、英検2級を持っている受験生には、英語の入試で100点中80点を取ったとして扱う。この換算型も加点型と同様、所持している級・スコアに応じて換算点が大きくなる。
独自入試の得点換算だけでなく、共通テスト利用入試においても換算が行われる場合がある。
合否判定で優遇される
外部試験の結果を合否判定の際に優遇する、または参考とする方法です。この場合、具体的な加点の点数などは公開されないことが一般的です。
英語資格が利用できる大学の一例
共通テスト「英語」の得点を満点とみなす。
英検 | 準1級 |
IELTS | 6.5 |
TOEFL iBT | 72 |
個別試験「外国語」に加算。または満点とみなす。
英検 | 1950 |
IELTS | 4.0 |
TOEFL iBT | 42 |
個別試験の得点に加算(最大150点)
英検 | 1728 |
IELTS | – |
TOEFL iBT | – |
個別試験「英語」の得点に加算。
英検 | 2級1980 |
IELTS | 4.0 |
TOEFL iBT | 42 |
英語外部試験利用入試のメリット

英語外部試験利用入試は、多くの大学で導入されている新しい選抜方法です。
この方法には、従来の入試方法にはない多くのメリットがあります。以下に、その主なメリットについて詳しく解説します。
- 早期からの受験対策ができる
- 何度も受験できる
- 英語以外の受験科目への集中
1.早期からの受験対策
英語外部試験は、その種類の多さと年間を通しての実施頻度から、早期から受験対策を行うことが出来ます。
様々な英語外部試験を受験することができるので、自分に最も合った試験を選択し、最適な対策を行うことができます。

何度も受験できる
英語外部試験は、年に複数回実施されるものが多いので、入試までに何度も受験をすることが出来ます。
継続的なスキルアップ
試験慣れ
戦略的な受験計画
自分のペースでの学習
例え一度不合格になったり、想定よりも低いスコアだったとしても、すぐに次回の受験に向けて取り組める。
前回の受験で出来なかった部分を克服することで、より高いスコアを目指すことができ、大学受験で有利な状況を作れる。
試験の雰囲気や問題の出し方に慣れることができるので、試験時により良いパフォーマンスを発揮することができる。
短期間での集中学習や、長期間をかけたじっくりとした学習など、自分に合った方法で対策を進めることができます。

英語以外の受験科目への集中
英語外部試験の導入により、受験生は英語の試験対策を早期に終えることが可能となりました。これにより、以下のようなメリットを受けることができます。
精神的な安定
効果的な学習計画
試験直前の集中対策
自分の得意分野の最大化
数学や国語、理科、社会などの科目への対策をじっくりと進めることができる。
精神的な負担が軽減され、他の受験科目への集中力やモチベーションが向上。
英語以外の科目の具体的な学習計画が立てやすくあり、効率的な受験対策が進められる。
試験直前にも、英語以外の科目の勉強を集中的に行え、短期間で伸ばすこともできる。
自分の得意分野や弱点を把握する時間が増え、得意分野は最大限に、不得意分野は対策を行える。

英語外部試験の種類
英語外部試験は、その目的や内容によって様々な種類が存在します。
ここでは、主に国内の団体と海外の団体が実施する試験について詳しく解説します。

国内の団体が実施する試験
TEAP
GTEC® 英検® (実用英語技能検定)
英検 | 日本で最も歴史のある英語能力試験の一つで、7つの級に分かれていて、初級から上級までの英語能力を測定。 |
TEAP | 大学入試を目的とした、学問的な内容が中心の英語能力試験。 |
GTEC | コンピュータを使用した英語能力試験で、 学校教育やビジネスの場面での英語使用(読む、聞く)能力を測定します。 |
海外の団体が実施する試験
TOEFL
TOEIC IELTS
IELTS | 英国やオーストラリアなどの英語圏の大学入学を目的とした試験。 |
TOEFL | 主にアメリカの大学入学を目的とした試験。 |
TOEIC | ビジネスの場面での英語使用能力(R、L)を測定する試験。 |
これらの試験は、それぞれの目的や評価する技能が異なります。受験生は、自分の目的や必要な技能に合わせて、適切な試験を選択することが求められています。
CEFR(セファール)とは

CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)は、ヨーロッパ言語共通参照枠とも呼ばれ、言語の能力を測定・評価するための国際的な基準となっています[4]。
CEFRは欧州評議会(Council of Europe)によって、20年以上にわたる研究と実証実験の末に開発され、2001年に公開されました[5]。現在では日本語を含む40言語で参照枠が提供されています。
CEFRの導入により、異なる国や言語の試験や教育プログラムが、共通の基準に基づいて評価や整合性を持つことができるようになりました。
CEFRの定義
CEFRは、言語の能力を6つのレベルに分けて評価するフレームワークです。具体的には以下のようなレベルに分けられます。
C2 (Mastery) | あらゆる文脈での情報の理解・表現ができる。 |
C1 (Effective Operational Proficiency) | 幅広いテキストの理解や複雑なテーマについての議論ができる。 |
B2 (Vantage) | 複雑なテキストの理解や自分の意見を明確に表現できる。 |
B1 (Threshold) | 一般的なトピックについての会話や文章の理解ができる。 |
A2 (Waystage) | 簡単な日常会話や状況に応じたコミュニケーションができる。 |
A1 (Breakthrough) | 基本的な日常会話ができる。 |

各試験の公式スコア基準
TOEIC Program各テストスコアとCEFRとの対応
TOEIC TestsではおおよそA1~C1程度の英語力、TOEIC Bridge TestsではおおよそA1~B1程度の英語力を測定できます[8]。
TOEFL iBTテストとCEFRの関係
TOEFL iBTテストは、高等教育機関での入学の典型的な要件である言語能力レベルB2およびC1において最高の測定精度を提供します[9]。各技能にスコアを30点ずつ割り当て、満点は120点です。CEFRのB1~C1を測定できます[10]。
IELTSとCEFRの対応関係
IELTSのテスト結果は、バンドスコアという、1.0から9.0までの0.5刻みの指標で表されます。CEFRのB1~C2を測定できます[10]。Cambridge Englishが実施した複数の研究により、IELTSバンドスコアと6つのCEFRレベルとの関係が明確化されています[11]。
英検とCEFRの関連性
英検(実用英語技能検定)は、日本で最も歴史のある英語能力試験の一つです。また英検はCEFRとの関連性を明確にしています[6]。
英検では、CEFR(セファール)に対応した「英検CSEスコア」を導入しており、受験結果に表示されているスコアを確認することで、自分の英語力を世界基準のCEFRで知ることができます[7]。

受験生にオススメの英語外部試験

英語外部試験は、多くの大学の入学試験で利用されているため、受験生にとっては選択の幅が広がります。しかし、その中でどの試験を選ぶべきかは、受験生の目的や英語のスキルによって異なります。
以下に、受験生にオススメの英語外部試験とその理由をまとめました。
英検 | CEFRとの対応が明確。 日常的なコミュニケーション能力を評価。 | 日本国内での認知度が高い。
TOEFL | アカデミックな英語能力を評価する内容だから、学術的な分野での活動を目指す受験生にオススメ。 インターネットを利用したテスト形式で、リアルタイムでの英語コミュニケーション能力も評価される。 | 世界中での認知度が高く、多くの海外の大学でも受け入れられている。
TOEIC | 幅広いトピックに関する問題が出題されるため、一般的な英語能力も評価される。 | ビジネス英語の能力を評価する内容となっているため、ビジネスの現場での英語使用を想定している受験生にオススメ。
IELTS | スピーキングテストが実際の対話形式で行われるため、リアルタイムでの英語コミュニケーション能力が詳しく評価される。 | 英国やヨーロッパ、オーストラリアなどの大学での受け入れが多い。
試験の選定基準
試験の実施頻度
試験の内容と難易度 認知の広さ
- 認知の広さ
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試験が広く認知されているかは、その試験が多くの大学で受け入れられるかの指標となります。
例えば、英検やTOEFL、TOEICは日本国内での認知度が非常に高いため、多くの大学で利用されています。
- 試験の実施頻度
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年に複数回実施される試験は、受験のチャンスが多く、計画的に受験することができます。
また、最高のスコアを選んで提出することができるため、受験生にとっては有利となります。
- 試験の内容と難易度
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アカデミックな内容を評価する試験や、高いレベルの英語能力を評価する試験があるので、自分の得意不得意などを合わせて選ぶ。
参考情報・文献
- [1] 文部科学省「2021年度入学者選抜における国立大学の英語資格・検定試験の活用予定状況」(国立大学82校中79校が英語資格・検定試験を活用)
- [2] 文部科学省「令和5年度『英語教育実施状況調査』の結果について」
- [3] 文部科学省「大学入試英語ポータルサイト」
- [4] ブリティッシュ・カウンシル「CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)」
- [5] 欧州評議会(Council of Europe)「Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment – Companion volume」2020年版
- [6] 公益財団法人日本英語検定協会「英検の品質に関する考え方とその活用に関するガイドライン」
- [7] 公益財団法人日本英語検定協会「英検CSEスコアとは」
- [8] 一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC Program各テストスコアとCEFRとの対照表」
- [9] ETS「TOEFL iBTスコアの比較」公式対照表
- [10] 旺文社「CEFRで見る英語・外国語検定試験」
- [11] IELTS公式「IELTS and the CEFR」Cambridge English研究に基づく対照関係