IBDP必修科目CASとは?
国際バカロレア(IB)のディプロマ・プログラム(DP)の資格を取得するために、すべての学生が履修しなければいけない課外活動のことをCASと呼びます。
CASは「Creativity(創造性), Activity(アクティビティ), Service(サービス)」の頭文字を取ったもので、IB生徒たちが多様な活動を通して自己成長を促すためのプログラムです。
A:Activity
S:Service
IB生徒は、創造性、アクティビティ、サービスの各分野から、それぞれ最低1つの活動を選択し、毎週3時間程度、最低18ヶ月間参加する必要があります。
IB生徒は一定期間、各活動を実施し証拠をまとめた「CASポートフォリオ」と、自分の考えや学びを深く記録した有意義な「リフレクション」を保管しなければなりません。
CASの評価
CASは最終試験とは異なり、国際バカロレア機構(IBO)による正式な評価は行われず、CASの進捗状況は学校と学生の間で確認されます。
CASを構成する3要素
- 創造性
- 活動
- 奉仕
創造性|Creativity
Creativityは、様々な創造的なアクティビティを指し、生徒たちが自分自身のアイデアや創造性を発揮し、自分たちの関心や情熱に合わせた独自のプロジェクトを設計・実行することです。
例えば、音楽活動に参加することで、楽曲を作曲したり、演奏技術を向上させたりすることができます。
また、美術やデザインに取り組むことで、新しいアート作品を生み出したり、空間デザインを考えたりすることができます。
活動|Activity
Activityは、スポーツ、音楽、美術、演劇、ボランティア活動、語学習得など、様々な活動を指します。このカテゴリーは、体験やスキルを身につけるために、定期的に繰り返し行う活動に焦点が当てられます。
例えば、スポーツ活動に参加することで、新しいスキルを身につけたり、チームワークを発展させたり、自己の健康管理に役立つことができます。
また、音楽や美術、演劇などの活動では、創造性を発揮したり、芸術的なスキルを磨いたりすることができます。
さらに、ボランティア活動や語学習得によって、他者とのつながりを深めたり、国際感覚を身につけたりすることができます。
奉仕|Service
Serviceは、地域社会に貢献する活動を指し、自分たちが住む地域や、国際社会に向けて、様々な問題に取り組むことができます。
例えば、老人ホームの訪問、街の清掃活動、環境保護活動、アフリカの学校支援活動などが挙げられます。
IB生徒たちが自分たちが暮らす地域に貢献することで、社会貢献の意識を高め、責任感を養うことが重視されます。また、国際社会に向けて取り組むことで、世界の問題や多様性を理解し、グローバルな視野を広げることができます。
CASを完了することは、IBのディプロマを取得するうえで必須の要件です。
公式に評価はされないのですが、生徒は自分のCAS活動を振り返って、7つの学びの成果を達成したことを各自のCASポートフォリオで示す必要があります。
7つの「学びの成果」
CASのプログラムは、DPの開始と同時に正式に開始し、定期的に(理想的には週1回のペースで少なくとも18ヶ月にわたって)継続し、「創造性」と「活動」と「奉仕」を合理的なバランスで実施する。
このCAS活動には、以下の7つの「学びの成果」を達成することも求められます。
- 自分の長所と成長すべき点を認識する
- 課題に挑戦し、その過程で新しいスキルを習得している
- 自らCASを計画し開始することができる
- CAS活動を継続し、やり遂げる粘り強さを示す
- 自らのスキルを活かし、また他者と共に活動する意義を認識する
- グローバルな課題に取り組む
- 選択と行動の倫理を認識し、考察する
これら7つの学びの成果について、CASコーディネーター、アドバイザー、サポートスタッフ、そしてIB生徒は、それぞれの言葉や意味について共通理解を持つ必要があります。
そのため、CASコーディネーターとIB生徒は、それぞれのCASの学びの成果について議論し、学校と生徒に特化した記述子を設計することで、共通の理解をすることができます。
学びの成果の記述例
ここで紹介するのは、IBOから出されているCASのシラバスに記載がある、CASの学びの成果の記述例です。これらの記述例はすべてを網羅するものではなく、適応、編集、追加することが可能です。
また、すべての記述子を満たす必要はなく、CASの学習成果が達成されたかどうかは、CASコーディネータが学生とともに判断することとなっています。
学びの成果1:
自分の長所と成長すべき点を認識する
- 自分の長所と短所を自覚している
- 改善や成長の機会に対してオープンである
- 自分の興味や才能に応じた活動を提案することができる。
- 様々な活動に積極的に参加することができる。
- 自己評価をすることができる。
- 自分を様々な能力やスキルを持った個人として見ることができ、中にはより発達したものもあります。
学びの成果2:
課題に挑戦し、その過程で新しいスキルを習得している
- 新しい経験でも、慣れ親しんだ経験でもよいので、適切な個人的挑戦を要求するような経験に参加する。
- 慣れない環境や状況に積極的に関わることができる
- 新しいスキルや能力を身につけることができる
- 確立された領域で専門性を高める
- 新しく身につけた、または開発したスキルや、確立された分野における専門性の向上を示している。
学びの成果3:
自らCASを計画し開始することができる
- CASの段階(調査、準備、実行、振り返り(継続)、実証)を明確にし、アイデアの着想からCAS体験や一連のCAS体験の計画を実行に移せる。
- これまでのCASの経験をもとに、知識と認識を深めることができる。
- 新しいアイデアやプロセスを立ち上げ、イニシアチブを発揮することができる
- 創造的なアイデア、提案、解決策を提案することができる
- 計画やイニシアチブを取る際に、反省的な考えを取り入れることができる
- 個人または集団のCAS体験を設計する際に、役割と責任を自覚することができる
- CASプロジェクトの企画に責任ある態度で臨むことができる
- 目的、活動、資源を考慮し、首尾一貫した行動計画を立てることができる。
学びの成果4:
CAS活動を継続し、やり遂げる粘り強さを示す
- CASの経験やプロジェクトに定期的に参加し、積極的に関与していることがわかる。
- 当初の計画に対する潜在的な課題を予見し、有効な代替案やコンティンジェンシーを検討することができる。
- 不確実性や変化に対する適応性がある
- 長期的にCASの経験やプロジェクトに関与することができる。
学びの成果5:
自らのスキルを活かし、また他者と共に活動する意義を認識する
- 技術や知識を共有する
- 同僚からの提案に敬意をもって耳を傾ける
- チーム内で異なる役割を積極的に引き受けることができる
- 異なる視点や考えを尊重する
- 価値ある貢献ができる
- グループへの参加に責任を持つ
- 他の人を助けることができる
- CASの経験を通して得た共同作業の利点と課題を明確にし、実証し、批判的に議論することができる。
学びの成果6:
グローバルな課題に取り組む
- ローカルな問題がグローバルな影響を持つことを認識する。
- 地域社会または国内社会におけるグローバルな問題を特定することができる。
- 世界的に重要な問題を認識し、それに対して具体的かつ適切な行動をとることができる。
- 地域、国内、または国際的な文脈の中で、地球規模の問題に取り組むCASプロジェクトに参加することができる。
- 人類共有の問題に対する意識と責任を持つことができる。
学びの成果7:
選択と行動の倫理を認識し、考察する
- 倫理的な問題を認識することができる。
- 自分の倫理的アイデンティティに社会的な影響があることを説明することができる
- 計画や倫理的決定を行う際に、文化的背景を考慮することができる
- 倫理的な決断をするために必要な知識を識別することができる
- 倫理的原則と倫理的決定へのアプローチを明確にする
- 選択と行動に対して説明責任を果たす
- 選択と行動が自己、関係者、地域社会に及ぼす影響について自覚している
- 倫理的な判断に直面したとき、内省の過程を取り入れることができる。
- CASの経験を計画し実行する際に、選択と行動がもたらす潜在的で多様な結果について意識している。
CASの参考アイデア集
Creativity|創造性
- 音楽演奏、作曲、録音
- 舞台芸術(演劇、ダンス、演出、衣装デザイン)
- 写真撮影、映像制作、デジタルアート
- インテリアデザイン、建築、工芸品制作
- 詩や小説の執筆、文学の研究、翻訳、言語学習
- WEBサイト制作、動画チャンネル開設
- イベント開催(学校、地域)
- 料理、焼き菓子を作る、レシピ本の作成
- 洋服、アクセサリーの制作
その他、ドローンを使って空撮映像を制作したり、VRコンテンツなどを制作するようなことも、この創造性に含まれるものとなります。
Activity|活動
- スポーツ(サッカー、バスケットボール、テニスなど)
- 野外活動(登山、キャンプ、サバイバルキャンプ、ハイキングなど)
- ダンス、ヨガ、フィットネス、ジムトレーニング
- ランニング、自転車
- マーシャルアーツ、水泳、スケートボード、スノーボード
- ジャーナリズム、ディベート、モデル国連、演説
その他、陶芸などの伝統工芸にチャレンジしてみるといったことも、こもアクティビティに含まれます。
Service|奉仕
- 社会福祉(介護施設や老人ホームのボランティア)
- 環境保護(リサイクル、海岸清掃、自然保護団体の支援)
- 学習支援(小学生や中学生の教育支援、ボランティア図書館)
- 国際協力(国際NGOの支援、海外ボランティア)
- 地域貢献(地域の祭りやイベントのサポート、地域団体の活動支援)
- チャリティー(募金、マラソン、バザー)
その他、学校内でカフェを運営してみたりすることも、このサービスに含まれます。また、上記リストをもう少し詳しく活動内容として紹介します。
社会福祉活動
- 老人ホーム活動
- 高齢者の見守り、訪問活動
- 病院でボランディア活動
- 交流の場作り
- 社会参加支援
- 点訳・朗読・手話など
環境保護活動
- 森林や海辺などの自然清掃活動
- 公園や駅などの清掃活動
- リサイクル活動
- 動物保護活動
- 植樹イベントを開催
- プラスチック回収イベント
学習支援活動
- スポーツ教室の支援
- キャンプの支援
- レクリエーション活動
- 手づくり工作
- 相談窓口開設
- 未熟児の為に帽子や衣類を編んで作る
地域貢献活動
- スポーツイベント
- エコイベント
- 地域の交流イベント
- 国際イベント
- 炊き出しイベント
- お祭りやフェスティバル
- パソコンの設定や操作指導
チャリティー
- チャリティー募金
- チャリティーマラソンに参加
- チャリティーラッフルを開催
- チャリティーバザーを開催
- チャリティー洗車を開催
- チャリティーコンサート開催
- 不要な衣料品を回収し寄付
- 学校でショーを開催して集めた参加費を寄付
- チャリティーサンタ
生徒に期待されること
- 自発的にCASに取り組む
- CASで期待されていること、およびCASの目的を明確に理解する
- IBの学習者像と使命を参照し、自分の価値観、態度、特質を高める
- 自分なりの目標を定める
- CAS活動についての計画をCASコーディネーターまたはアドバイザーと話し合う
- CASの段階表を理解し、必要に応じて活用する
- CAS活動に参加し、時には自発的に活動するほか、少なくとも1回はCASプロジェクトに取り組む
- 自分の興味、スキル、才能を的確に認識し、CASのプログラム期間中にこれらがどのように発展していくかを観察する
- CASポートフォリオに活動の記録をつけて、7つの学びの成果に達成した根拠を示す
- 振り返りのプロセスを理解し、CAS活動を振り返るべき時期を確かめる
- CASプログラムで自分が達成したことを示す
- CASのコーディネーター、アドバイザー、またはスーパーバイザーと公式・非公式な面談を行い、コミュニケーションをとる
- 自分のCASのプログラムで、創造性、活動、奉仕の適度なバランスがとれているかを確認する
- 適切かつ倫理的に判断し行動する