「MARCHや早慶に行きたいけど、うちの家計では厳しいかな…」
「私立の難関大学って、やっぱりお金持ちの子どもしか行けない?」
2025年度(令和7年度)に、扶養する子どもが3人以上いる家庭は所得制限なしで授業料等の減免を受けられるようになりました。制度はすでに動いています。
この記事では、年収400万円台の家庭でも活用できる具体的な方法を、実際の数字を使って分かりやすく説明します。
本当にお金持ちしか行けないの?データで見る大学進学の現実
年収と大学進学率の関係
文部科学省の学校基本調査(令和7年度確定値)によると、大学(学部)への進学率は58.6%です。高校卒業者に占める大学・短期大学への進学者の割合は61.4%で、こちらは過去最高を更新しました[1]。
では、家庭の年収で進路希望はどれだけ変わるのか。国立教育政策研究所が高校3年生を対象に行った調査(令和3年度・回答4,930人)では、12月時点で大学(国公立・私立)への進学を希望していた割合は次のとおりでした[2]。
| 世帯収入 | 大学進学希望率 |
|---|---|
| 400万円未満 | 59.9% |
| 400〜650万円 | 70.4% |
| 650〜850万円 | 79.5% |
| 850〜1,050万円 | 84.9% |
| 1,050万円以上 | 92.8% |
年収が上がるほど希望率も上がりますが、400万円未満の層でも約6割が大学進学を希望しています。「お金がないから最初から選択肢に入らない」という状態ではない、ということです。
実際のMARCHや早慶の学生はどんな家庭出身?
東京大学が2023年度に行った学生生活実態調査では、学部学生の生計維持者(親など)の年間収入は「950万円以上1,050万円未満」9.3%、「1,050万円以上1,250万円未満」12.5%、「1,250万円以上」20.4%で、950万円以上が合わせて42.2%でした[3]。「分からない」と答えた26.4%を除くと、950万円以上は約57%を占めます。
裏を返せば、4割前後は年収950万円未満の家庭から進学しています。以上は東京大学の調査で、MARCH・早慶の数字ではありません。それでも、少なくとも「お金持ちだけの世界」ではないことは分かります。
MARCHと早慶の学費は実際いくらかかる?
各大学が公表している2026年度入学者の学費表から、文系学部と理系学部の4年間の合計を拾いました。学部・学科によって数万円から数十万円の幅があるので、代表的な学部の額を載せています。
MARCH(明治・青学・立教・中央・法政)の学費
| 大学 | 文系 (4年計) | 理系 (4年計) |
|---|---|---|
| 明治大学 | 約499万円 | 約698万円 |
| 青山学院大学 | 約505万円 | 約707万円 |
| 立教大学 | 約490万円 | 約661万円 |
| 中央大学 | 約484万円 | 約687万円 |
| 法政大学 | 約455万円 | 約659万円 |
早慶(早稲田・慶應)の学費
| 大学 | 文系 (4年計) | 理系 (4年計) |
|---|---|---|
| 早稲田大学 | 約515万円 | 公式サイトで確認 |
| 慶應義塾大学 | 約543万円 | 約777万円 |
初年度にかかる費用の内訳
大学1年目は入学金が乗るぶん、いちばん高くなります。文部科学省が全国592校を調べた令和7年度の平均は次のとおりです[4]。
| 項目 | 文科系学部 | 理科系学部 |
|---|---|---|
| 授業料 | 850,392円 | 1,195,313 円 |
| 入学料 | 219,951円 | 245,362円 |
| 施設設備費 | 141,892円 | 161,378円 |
| 合計 | 1,212,235 円 | 1,602,053 円 |
MARCHや早慶はこの平均より高い側にあります。一人暮らしをするなら、ここに家賃と生活費が上乗せされます。金額は住む地域で大きく変わるので、志望校の周辺の家賃を調べたうえで、記事末で紹介するJASSOの進学資金シミュレーターに入れてみてください。
経済的負担を軽くする4つの方法
学費を下げる制度はいくつもあります。2025年度(令和7年度)に始まった多子世帯向けの拡充も、そのひとつです。

1. 国の給付型奨学金(返済不要)+授業料減免
2025年度(令和7年度)に拡充されたのが、多子世帯の授業料等減免です。扶養している子どもが3人以上いる家庭は、所得制限なしで減免を受けられます[12]。
- 対象:生計維持者が扶養している子どもが3人以上いる家庭[12]
- 減免額(私立大学):授業料70万円、入学金26万円[12]
- 年収制限:なし。ただし資産の条件があり、本人と生計維持者の資産の合計が5,000万円以上3億円未満の場合は、授業料等減免の対象にはなりますが、給付奨学金は支給されません[12]
制度全体の説明は文部科学省「高等教育の修学支援新制度」のページにあります[13]。
子どもが3人未満の家庭は、世帯年収で4つの区分に分かれます。下の年収は、両親と本人、中学生の弟妹1人という4人世帯で、親のうち1人に収入がない場合のモデル世帯の目安です。世帯の人数や働き方で基準は変わります[14]。
| 区分 | 年収の 目安 | 授業料減免 (私大) | 給付奨学金 (私立・自宅外) |
|---|---|---|---|
| 第1区分 | 271万円まで | 70万円 | 月 75,800円 |
| 第2区分 | 303万円まで | 区分に応じて減額 | 月 50,600円 |
| 第3区分 | 378万円まで | 区分に応じて減額 | 月 25,300円 |
| 第4区分 | 635万円まで | 文系との差額に着目した額 | 0円 |
2. 日本学生支援機構の奨学金(要返済)
日本学生支援機構(JASSO)には、返す必要のある奨学金が2種類あります。
第一種奨学金(利息なし)
- 卒業後に無利息で返す。成績と家計の基準があります
- 返済中に収入が下がったときは、毎年の所得に応じて返済額が決まる「所得連動返還方式」に変更できます(平成29年度以降に第一種の貸与を受けた人が対象)[20]
第二種奨学金(利息あり)
- 大学の月額は2万円から12万円まで、1万円刻みで選べます[18]
- 利率は貸与が終わった月ごとに決まります。2026年4月から8月に貸与終了した場合、利率固定方式で年2.722%〜3.000%、利率見直し方式で年1.874%〜2.200%でした[19]
- 採用の基準は第一種より緩やかです
利率はここ数年で上がっています。前年度(2025年4月〜2026年3月に貸与終了)は利率固定方式で年1.612%〜2.512%、利率見直し方式で年0.900%〜1.700%でした[19]。借りる前に、最新の推移表を見てください。
返済が苦しくなったときは、減額返還が使えます。
- 減額返還:毎月の返済額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2のいずれかに減らし、そのぶん返済期間を延ばせます。1回の申請で12か月、通算15年(180か月)まで[21]
- 減額返還の年収の目安:給与所得者は年収400万円以下(扶養する子どもが2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下)[21]
返済方法の詳細はJASSO「奨学金の返還について」のページにあります[20]。
3. 各大学の独自奨学金
MARCH・早慶の各大学は、それぞれ独自の奨学金制度を設けています。
金額や採用人数、応募の条件は大学・学部ごとに違い、年度でも変わります。募集要項と併せて確認してください。
4. 地域や企業の奨学金
都道府県や市町村、企業の財団なども奨学金を提供しています。給付型(返済不要)のものも多く、他の制度と組み合わせて使えます。
例えば、お住まいの地域の奨学金制度については、各自治体のホームページで確認できます。また、日本学生支援機構の地方公共団体等奨学金のページでも情報を得られます[22]。
年収別!実際にいくら負担になるかシミュレーション
公表されている学費と支援額を当てはめると、負担がどう変わるかが見えます。以下は、両親と本人、中学生の弟妹1人という4人世帯で、親のうち1人に収入がない場合を前提にした例です。実際の区分は世帯の人数や働き方で変わります[14]。
年収350万円の家庭:MARCH文系に進学する場合
モデル世帯では第3区分(378万円まで)に入ります[14]。
- 授業料等減免:あり。減免の上限は第1区分の場合で私立大学は入学金26万円・授業料年70万円[12](第2区分以下は区分に応じて減額されます)
- 給付奨学金(私立・自宅外):月25,300円=年およそ30万円[15]
- 第二種奨学金は併用できます。第一種奨学金を併せて利用する場合は、第一種の貸与月額が調整されます[15]
中央大学法学部の2年次以降の学費は年1,151,100円[8]。第3区分は満額より少ない額の授業料等減免を受けられ、そこに給付奨学金が月25,300円[15](年およそ30万円)入ります。負担はゼロになりませんが、無支援の場合との差は年数十万円になります。
年収500万円の家庭:早慶理系に進学する場合
年収500万円は第1〜第3区分からは外れます。ただし私立の理工農系の学科に進むなら第4区分(635万円まで[14])の対象になります[16]。
慶應義塾大学理工学部の2年次以降の学費は年1,893,250円[11]。第4区分の減免は授業料の文系との差額に着目した額にとどまるため[16]、負担の大半は残ります。この層は貸与型奨学金と大学独自の奨学金で埋めるのが現実的です。
子ども3人以上の家庭:早慶文系に進学する場合
ここがいちばん大きく変わります。所得制限がないため、年収に関係なく私立大学で授業料70万円・入学金26万円まで減免されます[12]。
慶應義塾大学経済学部(2026年度)の初年度は、授業料990,000円・入学金200,000円を含めて1,508,350円[11]。減免の対象は授業料と入学金なので、入学金は全額が消え、授業料も70万円が引かれます。残るのは授業料の差額と、減免の対象外である在籍基本料・施設設備費などです。2年次以降も授業料から70万円が引かれ続けます。
より具体的に、ご家庭に合った資金計画を立てるには
ここでは3つのモデルケースを紹介しましたが、実際にはご家庭の状況によって最適な資金計画は異なります。「うちの場合はどうなんだろう?」を確かめるなら、上のモデルケースの数字を自分の世帯年収と志望校に置き換えて、4年間の総額と返済額を1枚に書き出すところから始めてください。

学費を抑えるための5つのコツ
複数の制度を同時に申し込む
給付型奨学金と貸与型奨学金は併せて使えます。ただし第一種奨学金を併せて利用する場合は、第一種の貸与月額が調整されます[15](第二種は調整されません)。大学独自の奨学金も併用できることが多いので、使えそうなものは申し込んでおきましょう。
申し込みのタイミングを逃さない
- 高校3年生の春:予約採用の申し込み開始
- 大学入学後:在学採用の申し込み
- 家計が急変したとき:緊急採用の申し込み
学部選びで費用を抑える
- 私立大学の初年度納付金は、文科系の平均が1,212,235円、理科系の平均が1,602,053円。年およそ39万円の差があります[4]
- 夜間部があるところはさらに安い
- 国際系学部は留学費用が別途かかることが多い
住む場所を工夫する
- 自宅から通えれば、家賃と生活費がまるごと不要になります
- 学生寮がある大学なら、民間のアパートより安く住める場合があります
- 給付奨学金の額は自宅通学か自宅外通学かで変わります(私立・自宅外の第1区分は月75,800円)[15]
大学選びは費用対効果を考える
- 上の表のとおり、MARCHと早慶では4年間の合計に数十万円の差があります
- 就職実績と学費のバランスを比較
- 奨学金制度の充実度もチェック
よくある心配事に回答
奨学金を借りると将来の返済が大変では?
返済額を下げる仕組みがあります。ただし種類によって使える制度が違います。
- 所得連動返還方式:毎年の所得に応じて返済額が決まります。使えるのは第一種奨学金(無利子)だけで、第二種(有利子)には適用されません
- 減額返還:第二種でも使えます。毎月の返済額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2のいずれかに減らし、そのぶん期間を延ばします。通算15年まで
借りる前に返済額を確かめたいなら、記事末で紹介するJASSOの進学資金シミュレーターで、借りる月額と年数を入れて試算してください。第二種の利率は年によって変わるため、いま借りる人と5年前に借りた人とでは総返済額が違います。
子ども3人以上の「多子世帯支援」って、どんな条件?
扶養している子どもが3人以上いることが条件です
- 子どもの数は、奨学金の申込時(在学中に申告する場合はその時点)に申告した人数で判定されます
- 数えるのは、生計維持者が扶養している子どもです。扶養から外れた子どもは数に入りません
- そのため、上の子が就職して扶養から外れると、下の子の進学時に条件から外れることがあります
いつ、何を申し込めばいい?スケジュールガイド
高校3年生がやること
4月~7月:予約採用の申し込み
- 高校を通じて申し込み
- 結果が分かるのは、おおむね秋から年内にかけてです
- 大学に合格したら「進学届」を提出します(提出しないと採用されません)
入学前:多子世帯支援の申し込み
- 扶養している子どもが3人以上いる家庭は忘れずに申請してください。自動では適用されません
- 子どもの人数は、申込時(在学中に申告する場合はその時点)の申告で判定されます
- 条件と手続きはJASSO「多子世帯支援について」で確認できます
大学生がやること
4月~5月:在学採用の申し込み
- 予約採用で落ちた人や、申し込んでいなかった人向け
- 結果が分かるのは、おおむね初夏です
- 支給が始まるのは採用が決まったあとです
随時:緊急採用
- 親の失業や病気など、家計が急に苦しくなったとき
- 年間を通じて申し込める
必要な書類
- マイナンバー(世帯全員分)
- 課税証明書(マイナンバーで取得できない場合)
- 資産を証明する書類(給付型奨学金の場合)
- 成績証明書
- 志望理由書(大学独自の奨学金)
申込みの時期と必要書類は年度と学校によって変わります。高校の奨学金担当か、進学先の学生支援窓口で最新の日程を確認してください。
まとめ:諦める前にまずは情報収集を
MARCHや早慶への進学は、適切な支援制度を活用すれば、多くの家庭で実現可能です。
大切なポイント
- 2025年度からの多子世帯支援で、扶養している子どもが3人以上いる家庭は所得制限なしで減免を受けられます
- 減免と給付奨学金と貸与型は組み合わせられます(第一種は給付と併せると貸与月額が調整されます)
- 返済が苦しくなったときの制度もあります。所得連動返還方式は第一種のみ、減額返還は第二種でも使えます
- 申込みは高校3年の春が最初のチャンスです。日程は高校で確認してください
今すぐやるべきこと
- 家庭の状況を整理する(年収、子どもの人数、資産)
- 使える制度をリストアップする
- 志望大学の独自支援制度を調べる
- 申し込みスケジュールを確認する
- 必要書類の準備を始める
経済的理由で進学を諦める前に、まずは利用できる支援制度を調べてみてください。適切な情報と準備があれば、MARCHや早慶への道は決して閉ざされていません。
世帯年収と志望校を入れて4年間の総額と返済額を見るなら、JASSOの進学資金シミュレーターが使えます[23]。
参考情報・出典
- 文部科学省「令和7年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値」(2025年12月26日公表・調査期日2025年5月1日)
- 国立教育政策研究所「高校生の高等教育進学動向に関する調査研究 第二次報告書」(2023年3月・令和3年度調査(PDF))
- 東京大学「2023年度(第73回)学生生活実態調査報告書」(PDF・学部学生の生計維持者の年間収入はp.80。調査の一覧ページ)
- 文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(2025年12月公表・調査校592校)
- 明治大学「学費等一覧(2026年度入学者用)」(PDF。入学金・学費等一覧のページ)
- 青山学院大学「2026年度入学者学費等一覧」(PDF。学費について(学部)のページ)
- 立教大学「2026年度の学費について(学費その他の納入金一覧表)」(PDF。学費・納入金のページ)
- 中央大学「学部学費一覧」(2026年度)
- 法政大学「2026年度学費一覧(学部学費)」(PDF。学部学費のページ)
- 早稲田大学 政治経済学部「学費・奨学金」(2026年度。全学部の一覧表は大学の「入学金や授業料など納付金」ページ)
- 慶應義塾大学「【学部】学費」(2026年度)
- JASSO「多子世帯支援について」(令和7年度〜)
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- JASSO「進学前(予約採用)の給付奨学金の家計基準」
- JASSO「給付奨学金の支給額」
- JASSO「高等教育の修学支援新制度の中間所得層への拡大に係る対応について(第4区分)」(令和6年度〜)
- JASSO「進学前(予約採用)の給付奨学金の学力基準」
- JASSO「第二種奨学金の貸与月額」
- JASSO「貸与利率の推移」(令和8年度は2026年8月貸与終了分まで公表・2026年9月確認)
- JASSO「奨学金の返還について」(定額返還方式・所得連動返還方式)
- JASSO「減額返還制度の概要」
- JASSO「地方公共団体等奨学金」
- JASSO「進学資金シミュレーター」(奨学金と学費の試算ツール)
本記事の学費・支援制度の数値は2026年9月時点で各機関が公表しているものです。学費は年度ごとに改定され、支援制度の基準も変わります。申し込む前に各機関の公式サイトで最新の情報を確認してください。
