JASSO海外留学支援制度(学部学位取得型)の倍率と応募条件【2027年度募集】

海外の大学で学位を取るとき、費用の話は避けて通れません。日本学生支援機構(JASSO)の「海外留学支援制度(学部学位取得型)」は、返済のいらない奨学金を原則4年間受け取れる制度です。ただ、この制度の倍率について、ネット上では「約5倍」「定員45名」といった数字が今も出回っています。

これらはいずれも数年前の実績で、いまの姿とはかなり違います。この記事では、JASSOが年度ごとに公表している選考結果を2020年度から2026年度まで並べ直し、国・地域別の内訳、応募できる条件、そして2027年度の日程までを、JASSOの公表資料に沿って整理します。

先に結論
  • 2026年度は408人が応募して140人が採用。応募者数を採用者数で割ると約2.9倍です。
  • よく見かける「5倍」「定員45名」は2021〜2022年度ごろの数字。採用者数はその後4年連続で増えています。
  • ただし授業料の支給は無くなりました。いま支給されるのは奨学金(月額13万9,000円〜35万2,000円)と渡航支援金1万円だけです。
  • JASSOは審査基準を公表していません。不採用の理由も問い合わせに応じないと明記されています。
  • 2027年度募集は動いています。エントリーは2026年9月1日〜9月24日13時、応募書類は10月1日13時が締切です。
目次

JASSO海外留学支援制度(学部学位取得型)の倍率は、いまどのくらいか

2026年度は408人が応募し、140人が採用された

JASSOは毎年3月上旬に、その年度の選考結果をプレスリリースで公表しています。2026年度募集は応募者408人に対して採用者140人でした[1]。応募者数を採用者数で割ると約2.9倍になります。

公表されている7年度分を並べると、次のようになります。

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募集年度応募者数採用者数名目倍率
2020年度207454.60倍
2021年度235455.22倍
2022年度223454.96倍
2023年度250783.21倍
2024年度3051003.05倍
2025年度3711183.14倍
2026年度4081402.91倍
出典:JASSO 各年度「海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」=2020年度[7]/2021年度[6]/2022年度[5]/2023年度[4]/2024年度[3]/2025年度[2]/2026年度[1]※「名目倍率」はJASSOが公表している数字ではなく、応募者数を採用者数で割った当サイトの計算値です。

ここで一つ、断りを入れておきます。JASSO自身は「倍率」という数字を出していません。公表しているのは応募者数と採用者数の実数だけで、補足Q&Aでも合格率を問う質問に対しては、過去の応募・採用状況を掲載したページを見るよう案内しているだけです。上の表の「名目倍率」は、その実数から当サイトが計算したものです。

また、この数字には後述する「都道府県推薦枠」で採用された人も含まれています。通常応募だけを取り出した倍率は、JASSOのプレスリリースと募集要項を見るかぎり示されていません〔2026年8月時点〕。そのため、実際に個人で直接応募する人が向き合う競争は、この数字よりやや厳しいと考えておくのが安全です。

「5倍」「定員45名」という数字はどこから来たのか

検索すると、この奨学金の倍率を「約5倍」とする説明や、募集人数を「45名」とする紹介が今も出てきます。表を見ると出所がはっきりします。採用者数は2020〜2022年度の3年間、45人で固定されていました(2020年度[7]/2021年度[6]/2022年度[5])。そして2021年度の名目倍率は5.22倍、2022年度は4.96倍です。

つまり「5倍・45名」は間違いではなく、4〜5年前の実績です。その後、採用者数は78人(2023年度[4])、100人(2024年度[3])、118人(2025年度[2])、140人(2026年度[1])と増え続けています。応募者数も207人から408人へと倍増していますが、採用の増え方のほうが大きいため、名目倍率は下がってきました。

倍率が下がった時期に、支援の中身も入れ替わっている

ここは見落とされやすいところです。採用者数が45人から78人へ増えた前後で、この制度は支援の設計そのものが変わりました

2023年度募集までは、奨学金(月額5万9,000円〜11万8,000円)に加えて、授業料の実費が各年度250万円(予算の状況によっては300万円)を上限に支給されていました[12]。2024年度募集からは授業料の支給が無くなり、代わりに奨学金の月額が引き上げられています。現在の補足Q&Aは、授業料の支給があるかという問いに「ありません」と答えています[11]

学費の高い大学を目指す人にとっては、この違いは小さくありません。「昔より通りやすくなった」という理解だけで判断すると、受け取れる金額の前提がずれます。

国・地域によって、応募と採用の比はかなり違う

2026年度の国・地域別の内訳

JASSOは選考結果を国・地域別にも公表しています。2026年度の全内訳が次の表です。

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留学希望国・地域応募者数採用者数名目倍率
アメリカ合衆国136482.83倍
カナダ47212.24倍
アイルランド10
イタリア111.00倍
オーストリア313.00倍
オランダ1762.83倍
スイス10
スペイン40
ドイツ515.00倍
ハンガリー212.00倍
フィンランド212.00倍
フランス20
ベルギー20
リトアニア10
英国52232.26倍
オーストラリア60203.00倍
ニュージーランド632.00倍
アラブ首長国連邦10
シンガポール732.33倍
タイ10
フィリピン10
マレーシア2145.25倍
大韓民国1234.00倍
台湾824.00倍
中国522.50倍
香港40
未記入60
合計4081402.91倍
出典:JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」[8]※JASSOの注記により、この国・地域は「応募者の第一希望大学の所在地」で集計されたものです[9]。実際に留学した人数ではありません。「未記入」は留学先を記入しなかった応募者です。名目倍率は当サイトの計算値で、採用者数が0の国・地域は「—」としています。

応募が集まるのはアメリカ(136人)、オーストラリア(60人)、英国(52人)、カナダ(47人)の順です。応募がいちばん多いアメリカについては、アメリカの大学そのものが出している奨学金という別の道もあり、JASSOと並行して調べておく価値があります。一方、名目倍率で見るとカナダ2.24倍・英国2.26倍に対し、マレーシアは5.25倍、韓国と台湾は4.00倍と、順序が入れ替わります。応募者の多い国が必ずしも厳しいわけではありません。

ただし、この差を「国ごとに枠がある」と読むのは誤りです。募集要項に国別の採用枠を定めた記述はなく、JASSOは資格要件を満たす応募者を書面審査と面接審査で総合的に審査するとしています[16]。国別の比はあくまで結果であって、あらかじめ配分されたものではありません。年度によって数字も動きます。

主要な国は、この6年でどう動いたか

年度をまたいで見ると、同じ国でも様子が変わっているのが分かります(各セルは「採用者数/応募者数」)。

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国・地域202120222023202420252026
アメリカ合衆国24/9123/10438/10641/11549/13448/136
英国8/4011/4018/4219/5816/5523/52
カナダ7/353/2111/2717/349/3121/47
オーストラリア2/251/223/3011/4315/5020/60
オランダ2/124/104/113/88/196/17
マレーシア1/40/20/61/72/164/21
出典:JASSO 各年度の選考結果=2021年度[6]/2022年度[5]/2023年度[4]/2024年度[3]/2025年度[2]/2026年度[8]※各セルは「採用者数/応募者数」。6か国とも6年度すべての表に掲載があります。

目立つのはオーストラリアの変化です。2023年度は30人が応募して採用は3人でしたが[4]、2026年度は60人の応募に対して20人が採用されています[8]。一方マレーシアは、応募が4人から21人へ増える間に採用も1人から4人になりましたが、2022年度と2023年度は採用ゼロの年があり、2026年度の名目倍率は5.25倍と全体の2.91倍より厳しい水準です。

1桁の数字を扱っている以上、1〜2人の差で比が大きく動く点には注意が必要です。志望先を決める材料としては、単年の比よりも複数年の傾向を見るほうが確かです。

自分は応募できるのか──資格要件を先に確かめる

倍率より先に確かめたほうがよいのが資格要件です。JASSOは、募集要項の資格要件を全て満たしている人を対象に書面審査と面接審査で総合的に審査すると書いており[16]、要件を欠くと審査の土俵に乗りません。応募をためらう前に、まずここを確認してください。

数字で決まっている4つの条件

国籍日本国籍を有する人、または日本への永住が許可されている人(特別永住者を含む)[35]
学業成績在学した全ての高校の全履修科目の評定平均値が、5段階で3.7以上に相当すること[13]
語学留学先大学の主たる使用言語が英語ならIELTS 6.0以上、またはTOEFL iBT(基準は受験日で異なる=後述)。英語以外ならその言語でCEFR B2レベル以上[14]
家計家計支持者の2025年の合計所得金額が2,000万円以下(共働きは合算)[15]
出典:JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」Ⅳ 資格要件。※上記のほか、高等教育機関に在籍していないこと、日本に居住していること等の条件があります。全条件は募集要項を確認してください。

誤解されやすいのが家計の条件です。基準は「年収」ではなく「合計所得金額」で、募集要項は各種所得控除を差し引く前の金額と定義しています[15]。給与収入の場合は給与所得控除後の額なので、年収の額面がそのまま2,000万円と比べられるわけではありません。

評定平均の計算方法も要項に書かれています。在籍した高校ごとの評定平均値を全て足して、学校数で割ります[37]。海外の高校と日本の高校の両方に在籍した人は、単純平均になります。3.7を満たしているか自分で判断がつかない場合は、在学校または卒業校に問い合わせるようQ&Aが案内しています。

数字では決まらない、見落としやすい条件

評定や所得のように数字で示されない条件のほうが、実は足切りとして効きます。とくに次の3つは見落とされがちです。

  • 大学に在籍したことがないこと。応募締切時までに国内外の高等教育機関(大学院・大学・短期大学・高等専門学校の第4学年以上・専修学校の専門課程等)や大学入学準備コースに在籍した経験があると対象外です[42]
  • 入学許可が「条件付」では支援が始まらない。支援期間の開始までに留学先大学の入学許可を得る必要があり、募集要項は条件付の入学許可は認められないと明記しています[44](大学入学準備コースに進む場合のみ例外があります)。
  • 採用後に義務が付く。留学で得た経験を日本社会に還元すること、JASSOが依頼するイベントへの参加や執筆・調査に協力することが要件に含まれ、支援期間中と支援終了から5年間、年1回の状況報告が求められます[43]

2つめは実務上とくに重要です。海外大学の合格通知は、最終成績や語学スコアの提出を条件にした「conditional offer」の形で届くことがあります。JASSOの支援を受けるには、その条件を外した正式な入学許可まで到達している必要があります。

留学の道筋にも制限があります。募集要項は支援の対象を「学士の学位を授与できる諸外国等の大学」と定めたうえで、コミュニティカレッジなどに入学してから大学へ編入して学位を取る計画は支援対象外だと明記しています[46]。アメリカ留学の費用を抑える方法としてよく紹介される経路ですが、この制度では使えません。支援期間中に他大学へ転学・編入することも、留学計画の変更にあたるため原則として認められないとされています。

IB・Aレベルなど外国の大学入学資格でも応募できる

日本の高校を卒業した人だけの制度ではありません。募集要項は応募できる学歴を7つの類型で示しており、その一つに外国の大学入学資格が挙げられています[41]。国際バカロレア、アビトゥア、フランスのバカロレア、GCE Aレベル、国際Aレベル、欧州バカロレア資格が対象です。

条件は取得の時期です。応募締切時において取得後3年以内、または支援期間開始までに取得する人が対象になります。2027年度募集の場合、2023年10月1日以前に取得していると応募できません[41]

同じ枠組みは他の経路にも適用されます。文部科学省が指定した外国人学校の修了者、国際的な評価団体(WASC・CIS・ACSI・NEASC・Cognia)の認定を受けた教育施設の12年課程の修了者、在外教育施設の高等部の修了者も、それぞれ修了後3年以内という同じ枠組みで対象に含まれています。

語学スコアには、細かい扱いが決まっている

語学の条件は「留学先大学が求める語学能力にかかわらず」満たす必要があると明記されています[14]。志望校の要件が緩くても、JASSOの水準は別に効きます。

スコアの扱いについて、補足Q&Aが答えている点をまとめます[36]

  • 有効期限を過ぎた語学能力試験の結果でも認められる
  • IELTS OnlineやTOEFL iBT Home Editionも認められる(IELTSはAcademic Moduleのみ)
  • TOEFLのMy Best Scoreは認められない
  • 第1希望と第2希望で使用言語が違う場合は、両方の試験結果が必要

なお、TOEFL iBTは2026年1月にスコア体系が変わったため、募集要項は受験日で基準を分けています。2026年1月21日以降に受験した場合はOverall Score 4.0以上、1月20日以前ならTotal Score 80以上です[14]

要件は「応募時までに」取得していることが条件なので、いまIELTS 5.5で止まっている人にとって、後述する9月24日のエントリー締切は「あと0.5をどう作るか」の期限でもあります。残り時間から逆算して何をやるかだけ整理しておきたい、という段階なら、無料のカウンセリングで方針だけ聞く手もあります。

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何で合否が決まるのか──JASSOは審査基準を公表していない

「審査基準は公表していません」が公式の回答

この制度でいちばん情報が錯綜しているのが選考基準です。「成績が第一」「志望理由書は審査対象ではない」といった説明がネット上で食い違ったまま流通しています。

JASSO自身も、この問いに答えています。募集要項の補足Q&Aは、審査で何が重要視されるかという質問に対して「審査基準は公表していません。」と回答し、資格要件を全て満たしている人を対象に書面審査と面接審査で総合的に審査する、と続けています[16]

募集要項の「Ⅷ 審査方法」を読んでも、審査の観点や評価項目、配点は書かれていません。書かれているのは審査の手順と日程だけです。さらに同じ節の末尾には「審査結果の理由に関する問い合わせには応じかねます。」と明記されています[18]

不採用になった理由が分からないのは、調べ方が足りないからではありません。制度としてそうなっています。

唯一、名指しされている観点がある

基準は非公表ですが、補足Q&Aには手がかりが一つだけ残されています。語学力や成績が審査に影響するかという問いに、JASSOは「総合的に審査します」と答えたうえで、語学力や成績評価が高くても、留学計画等の実行性が乏しいと判断される場合には不合格になると書いています[17]。留学先大学のレベルについての質問にも、同じ言い回しで答えています。

つまり「留学計画等の実行性」は、募集要項の「Ⅷ 審査方法」と補足Q&Aの審査方法の節を通して、JASSOが自ら名前を出した唯一の観点です。裏を返すと、「成績が高ければ通る」「レベルの高い大学を書けば有利」という理解は、この2つの回答とかみ合いません。JASSOはどちらの問いにも「総合的に審査します」と答え、高くても不合格になりうると付け加えているからです。

審査の材料そのものは、提出書類から見当がつきます。応募者が自分で作成するのは、留学を志す理由・留学計画・学位取得後の進路計画(日本語と留学先での使用言語の両方)、日本社会への貢献について、留学をテーマとした自己PRです[20]。これらが必須の提出物である以上、「志望理由書は審査対象ではない」という説明は、提出書類の構成と噛み合いません。ただし、それが加点されるかどうかは公表されていない以上、書けません。

二次審査はオンライン面接。AIの利用は禁止されている

一次の書面審査を通過した人だけが、二次の面接審査に進みます。2027年度募集の面接日は2027年1月30日または31日のいずれか1日で、日時の変更はできません[30]。実施方法はオンラインの予定です[19]

注意しておきたいのは、面接中の禁止事項について事前に同意書の提出を求められる点です。募集要項は、録音・録画や他所への中継をしないこと、事前作成のメモやインターネット検索、AIを利用しないこと、第三者の関与を利用しないことを挙げ、同意書の内容に反した場合は不合格になると書いています[19]。パソコン・ヘッドフォン・マイク・カメラと通信環境は応募者が自分で用意します。

もう一つの応募ルート──都道府県推薦枠

通常応募と何が違うのか

この制度には、個人が直接JASSOに応募する「通常応募」のほかに、都道府県教育委員会を通じて推薦を受ける「都道府県推薦枠」があります。2027年度も両方の募集が行われており、併願することができます[39]

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通常応募都道府県推薦枠
応募先JASSO(学位応募システム)都道府県が指定する提出先[22]
対象高校卒業後3年以内など幅広い(高卒認定・海外校卒も可)[41]その都道府県の高校に在籍し、令和9年3月に卒業見込みの人だけ[23]
人数2027年度は未定(参考:2026年度は140名)[31]各都道府県1名[22]
選考JASSOの書面審査+面接審査[19]各都道府県が行う[24]
締切2026年10月1日13時(応募書類)[29]都道府県ごとに異なる[26]
出典:JASSO「2027年度募集要項」および「2027年度募集要項(都道府県推薦枠)」「都道府県推薦枠 応募者向けのFAQ」。

いちばん大きな違いは対象者です。推薦枠は令和9年3月に卒業見込みの高校生に限られます[23]。既卒の人、高等学校卒業程度認定試験の合格者、海外の学校やインターナショナルスクールの出身者は、通常応募なら資格がありますが、推薦枠では応募できません。

選考の進み方も違います。推薦枠の募集要項は「選考は、各都道府県が行います。」の一文だけで、通常応募の要項にある一次・二次審査に相当する節がありません。応募者向けFAQは、推薦された人について「資格要件を全て満たしていること等を事務局でも再度確認し、問題がなければ採用候補者となります」と説明しています[25]。ただし、最終的な採否結果の通知までは採用候補者の扱いである、とも書かれています。

両方に応募した場合、重複したときは都道府県からの推薦が優先されます[22]。推薦枠のFAQは、その場合「通常の応募枠の方では審査対象とはせず」と書いています[55]

推薦枠は採用者の2割強を占めている

推薦枠は小さな仕組みではありません。JASSOは選考結果に出身高校の所在地別の採用者数を載せており、括弧内に推薦枠での採用者数を示しています。2026年度は140人中31人、2025年度は118人中32人が推薦枠での採用でした(2026年度[27]/2025年度[2])。

同じ表からは、出身高校の地域が偏っていることも読み取れます。推薦枠が無かった2024年度は採用100人のうち55人が東京都の高校出身でした[28]。推薦枠のある2026年度は140人のうち56人です[47]

なお、この推薦枠が何を目的に設けられたのかを説明した記述は、JASSOの募集要項・プレスリリース・FAQには見当たりません〔2026年8月時点〕。2025年度と2026年度の選考結果には「試行を実施しました」と書かれています[40]

地方の高校に在籍している高校3年生にとっては、検討する価値のあるルートです。ただし締切と受付方法は都道府県ごとに違い、FAQも都道府県の担当に問い合わせるよう案内しています[26]

JASSOは47都道府県すべての提出先・問い合わせ先を一覧のPDFで公開しているので、まずそこで自分の都道府県の窓口を確認するのが早道です[38]。JASSO側の期限は、都道府県から推薦書類が提出される2026年10月1日13時です[49]

いくら受け取れるのか

支給されるのは奨学金と渡航支援金です。奨学金の月額は留学先の国・地域によって8つの区分に分かれています[10]

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区分奨学金月額主な国・地域
A352,000円カナダ・アメリカ合衆国・英国・シンガポール
B297,000円オーストラリア・ニュージーランド
C294,000円フィンランド・オランダ
D239,000円マレーシア
E244,000円(募集要項の「主な国・地域」欄は空欄)
F189,000円中華人民共和国・大韓民国・ハンガリー
G194,000円フランス・ドイツ・イタリア・スペイン
H139,000円台湾
出典:JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」Ⅴ 支援内容[10]※見出しは「奨学金月額(2026年度実績)」で、2027年度予算の成立状況により変更する場合があると注記されています。区分の記号順に並べているため、金額は降順になっていません(原文どおり)。国ごとの正確な区分は募集要項の別紙1に一覧があります。

このほかに、新規採用者には支援開始時に渡航支援金1万円が支給されます[10]。支援期間は原則4年です[48]。これは学位取得に必要な最短修業年限をもとにした支援の長さで、在学できる年限のことではありません。

この制度は貸与ではなく給付型で、原則として返済は要りません[53]

ただし募集要項は、採用後に返納があり得る場合を2つ定めています[54]。1つは採用の取消しで、資格要件を満たさなくなったとき、応募書類の記載事項に虚偽が発見されたときなど14の事由が挙げられ、すでに支給した奨学金等の全部または一部を返納させることがある、とされています。もう1つは支給の休止で、外務省の危険情報・感染症危険情報が「レベル2」以上の地域へ渡航または留学している場合などが対象です。ただしレベル2の場合に限り、渡航に係る誓約書等を提出して状況が確認されれば支援が認められることがある、とも書かれています。

授業料は支給されません[11]。奨学金の使途に指定はなく、この金額の範囲内で学修活動に必要な経費をまかなう設計です。区分Aの月額を12か月分に換算すると年422万円ほどになりますが、これは当サイトの計算であって、JASSOが年額として公表している数字ではありません。区分Hなら月13万9,000円なので、年に直すと167万円ほどです。留学先によって受け取れる額はかなり違います。

なお、JASSOの貸与奨学金(第二種奨学金(海外))や、他団体の奨学金との併給は可能です[32]。ただし相手側が併給を認めない場合があるため、その団体に確認するよう募集要項は案内しています。柳井正財団や孫正義育英財団など民間財団の給付型奨学金と組み合わせる前提で考えるなら、それぞれの募集時期を早めに並べておくと動きやすくなります。

2027年度募集の日程と、いま何をするか

2027年度募集の要項はすでに公開されています。日程は次のとおりです。

エントリー2026年9月1日〜9月24日13時(日本時間)[29]
応募書類提出2026年9月1日〜10月1日13時(日本時間)締切[29]
推薦状等提出(高校)2026年9月1日〜10月1日13時 締切[29]
一次審査(書面)結果2027年1月上旬を目途[30]
二次審査(面接)2027年1月30日または31日[30]
採否結果2027年3月上旬を目途[30]
出典:JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」Ⅵ 応募受付・審査実施日程、Ⅷ 審査方法。※都道府県推薦枠の応募締切は都道府県ごとに異なります。

エントリーは9月24日13時で締め切られ、その後は応募書類の提出だけができる期間になります。エントリーを逃すと書類は出せません。

意外と時間を取られるのが志望校の記入です。留学先大学の情報は第1希望から第4希望まで様式に記入し、それぞれ根拠書類を添えます。さらに第5希望から第8希望まで書いておくことができ、採用後にやむを得ず第4希望までに進学できなくなった場合、第5〜第8希望に書いておいた大学に限って変更の審査(再審査)が認められます[21]。書いていなければ、その道は残りません。

もう一つ、提出の作法にも厳しい規定があります。必要書類の欠落や記入漏れがあると審査の対象になりません。そして一度提出した後の差替えと訂正は一切認められません[45]。提出期限を過ぎた場合は、いかなる理由があっても書類を出せないとも書かれています。締切間際に一気に仕上げる進め方とは、相性がよくない制度です。

逆算すると、9月1日から10月1日までのひと月で、志望校を最大8つ選び、その根拠書類を集め、留学計画と進路計画を日本語と留学先の使用言語の両方で書き上げることになります。

手が止まりやすいのは志望校リストのほうで、出願要件と合格の見込みを大学ごとに調べ直す作業が丸ごと乗ってきます。ここを自力でひと月に押し込むのが難しそうなら、海外大学の出願を扱っているエージェントに、志望校リストの現実性だけでも一度見てもらう選択肢があります。

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JASSOの貸与奨学金(海外)との違い

JASSOには、海外留学向けの貸与奨学金もあります。給付型と混同されやすいので、要点だけ整理しておきます。

海外の大学の学部で使えるのは第二種奨学金(海外)で、これは利子付きです[33]。無利子の第一種は、海外の大学院学位取得型の採用者向けであり、学部の留学には使えません[50]。貸与月額は2万円から12万円まで、1万円刻みの選択制です[34]

利率は貸与が終了した時点で決まります[33]。貸与開始月の利率ではない点に注意してください。ここに具体的な数字を書くとすぐ古くなるため、申し込む前にJASSOの各年度貸与利率一覧で最新の値を確認してください[52]

もう一つ、入学時特別増額貸与奨学金(10万円から50万円の選択制)という上乗せの制度がありますが、入学前には振り込まれません[51]。渡航前の準備資金として当てにできるものではない点は、知っておいたほうがよい部分です。

Q

評定平均が3.9です。応募しても意味がないでしょうか。

A

募集要項が定めている基準は5段階で3.7以上なので、3.9は要件を満たしています。JASSOは資格要件を満たす人を対象に総合的に審査するとしており、成績の高さだけで合否が決まるとは書いていません。むしろ、語学力や成績が高くても留学計画の実行性が乏しければ不合格になる、と明記されています。

Q

不採用になった理由を教えてもらえますか。

A

教えてもらえません。募集要項の審査方法の節に「審査結果の理由に関する問い合わせには応じかねます。」と明記されています。審査基準そのものも公表されていません。

Q

通常応募と都道府県推薦枠の両方に出せますか。

A

併願できます。ただし都道府県から推薦された場合は、通常応募のほうは審査対象とされず、推薦枠での取り扱いが優先されます。また推薦枠に応募できるのは、その都道府県の高校に在籍していて令和9年3月に卒業見込みの人だけです。

Q

高校を卒業してから応募できますか。

A

通常応募であれば、高校卒業後3年以内などの条件のもとで応募できます。ただし都道府県推薦枠は卒業見込みの在校生に限られるため、既卒の場合は通常応募のみになります。詳しい区分は募集要項の資格要件を確認してください。

Q

授業料は出ますか。

A

出ません。補足Q&Aが「ありません」と答えています。授業料の実費支給は2023年度募集の採用者までの仕組みで、2024年度募集からは奨学金の月額に一本化されています。

まとめ

JASSOの海外留学支援制度(学部学位取得型)は、この数年で姿がかなり変わりました。採用者数は45人から140人へ増え、名目倍率は5倍台から3倍を切るところまで下がっています。一方で授業料の支給は無くなり、支援は奨学金の月額に一本化されました。数年前の情報のまま判断すると、通りやすさも受け取れる金額も見誤ります。

審査基準は公表されていません。分かっているのは、資格要件が足切りとして効くこと、そしてJASSOが審査方法の記述で「留学計画等の実行性」という観点だけを名指ししていることです。裏を返せば、成績や語学スコアが基準を超えていても、それだけで決まるわけではありません。JASSOが名前を出しているのは「留学計画等の実行性」という一語だけで、それがどう評価されるかは公表されていません。

2027年度募集のエントリーは2026年9月24日13時まで、応募書類は10月1日13時までです。地方の高校に通う3年生であれば、都道府県推薦枠という別のルートも併願できます。まずは自分の都道府県の窓口と締切を確かめるところから始めてください。

費用の全体像を組み立てるなら、こちらもあわせてどうぞ。


参考情報・出典

  1. JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2026年3月9日)(最終確認:2026年8月21日)
  2. JASSO「2025年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2025年3月6日)(最終確認:2026年8月21日)
  3. JASSO「2024年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2024年3月6日)(最終確認:2026年8月21日)
  4. JASSO「2023年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2023年3月6日)(最終確認:2026年8月21日)
  5. JASSO「2022年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2022年3月9日)(最終確認:2026年8月21日)
  6. JASSO「2021年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2021年3月10日)(最終確認:2026年8月21日)
  7. JASSO「2020年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2020年)(最終確認:2026年8月21日)
  8. JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2026年3月9日)(最終確認:2026年8月21日)
  9. JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」印刷用PDF(2026年3月)(最終確認:2026年8月21日)
  10. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  11. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項補足Q&A」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  12. JASSO「2023年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2023年3月6日)(最終確認:2026年8月21日)
  13. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  14. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  15. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  16. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項補足Q&A」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  17. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項補足Q&A」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  18. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  19. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  20. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  21. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  22. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項(都道府県推薦枠)」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  23. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項(都道府県推薦枠)」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  24. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項(都道府県推薦枠)」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  25. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)都道府県推薦枠 応募者向けのFAQ」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  26. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)都道府県推薦枠 応募者向けのFAQ」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  27. JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」印刷用PDF(2026年3月)(最終確認:2026年8月21日)
  28. JASSO「2024年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2024年3月6日)(最終確認:2026年8月21日)
  29. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  30. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  31. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  32. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  33. JASSO「第二種奨学金(海外)」制度概要(最終確認:2026年8月21日)
  34. JASSO「第二種奨学金(海外)」制度概要(最終確認:2026年8月21日)
  35. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  36. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項補足Q&A」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  37. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項補足Q&A」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  38. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)都道府県推薦枠 提出・お問い合わせ先一覧」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  39. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)」(2026年7月公表)(最終確認:2026年8月21日)
  40. JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2026年3月9日)(最終確認:2026年8月21日)
  41. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  42. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  43. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  44. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  45. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  46. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  47. JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」印刷用PDF(2026年3月)(最終確認:2026年8月21日)
  48. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  49. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項(都道府県推薦枠)」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  50. JASSO「第一種奨学金(海外大学院学位取得型対象)制度概要」(最終確認:2026年8月21日)
  51. JASSO「第二種奨学金(海外)」制度概要(最終確認:2026年8月21日)
  52. JASSO「各年度貸与利率一覧」(最終確認:2026年8月21日)
  53. JASSO「2026年度海外留学支援制度(学部学位取得型)選考結果について」(2026年3月9日)(最終確認:2026年8月21日)
  54. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)募集要項」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)
  55. JASSO「2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)都道府県推薦枠 応募者向けのFAQ」(2026年7月公表・PDF)(最終確認:2026年8月21日)

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この記事を書いた人

Masakiのアバター Masaki IBDP修了生の父/教育・進路メディア運営

我が子のIB経験と海外留学準備で奮闘した保護者としての実体験が原点。「同じ保護者の目線」で膨大な情報を整理・分析し、後悔しない進路選択を共に考えるパートナーとして「国際バカロレアIB広場」を運営。大学選びから留学手続き、その先のキャリア形成までを見据えた情報を提供しています。→ 運営者プロフィール・お問い合わせ

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