国際バカロレアの数学
2019年度(2021年5月試験)から数学のカリキュラムに変更があるまでは、以下の4つのコースが実施されていました。
Mathematics SL
Mathematics HL
Further Mathematics HL
これらが、AA(Analysis and Approaches)と、AI(Application and Interpretation)という2つになって、それぞれにHLとSLのレベルがあるので、数学(グループ5)からは、これら4つの数学から1つを選択することになりました。
数学AA(HL)
数学AI(SL)
数学AI(HL)
IB数学 変更の理由
この改定は、数学の教育と学習の方法を現代化し、進化する学界と労働市場のニーズに対応するために行われました。
変更の背後にある主要な目標は、数学の様々な分野で適用されるスキルを反映し、数学的な思考や理論の理解を通じて、問題解決と評価のスキルをより一層強調すること。
特に、「数学AA(Analysis and Approaches)」コースは理論的なアプローチと抽象的な思考を強調し、「数学AI(Applications and Interpretation)」コースは実世界での数学の適用と解釈を強調しています。
これにより、学生は自分の興味やキャリアの目標により適したコースを選択することが可能となり、大学進学やキャリアへの適応力を高めることができます。
また、新しいカリキュラムでは、内部評価(IA)を通じて、学生自身が選んだテーマでの研究プロジェクトが導入されました。これにより、学生は数学的な主題をより深く探求し、自らの視点での解釈と評価の機会を得ることができます。
IB数学のコース詳細
国際バカロレア(IB)ディプロマプログラムには、2つの数学コースがあって、SL(Standard Level)とHL(Higher Level)を組み合わせると4タイプの数学から1つを選択することになります。
数学AA(HL)
数学AI(SL)
数学AI(HL)
- AA:解析とアプローチ(Analysis and Approaches)
- AI:応用と解釈(Applications and Interpretation)
両コースともに、数学の基本的な概念やスキルを教えることに焦点を当てていますが、それらのアプローチと応用は異なります。AAコースは抽象的な概念と深い数学的理論の探求に重点を置き、AIコースは数学の実世界の応用に重点を置いています。
まずは各コースの特徴について詳しく説明します。
数学AA|解析とアプローチ(Analysis and Approaches)
このコースは、数学の理論的な側面に重点を置いていて、より抽象的な概念を深く掘り下げます。代数学、幾何学、微積分などのトピックを探求します。
数学AI|(Applications and Interpretation)
このコースは、数学を日常生活や職業生活の問題に適用する方法に重点を置いていて、データ分析、統計、確率などのトピックを含んでいます。
IB数学のカリキュラムの違い
数学AA | 数学AI | |
---|---|---|
SL | 数と代数 関数 幾何と三角法 統計と確率 微積分 個別の探求(内部評価) | 数と代数 関数 幾何と三角法 統計と確率 微積分 数学的探求(内部評価) |
HL | 数と代数 関数 幾何と三角法 統計と確率 微積分 線形代数 個別の探求(内部評価) | 数と代数 関数 幾何と三角法 統計と確率 微積分 確率モデリングと統計 数学的探求(内部評価) |
数学AAは数学の原理と理論をより深く探求することに焦点を当てており、HLでは線形代数のトピックが追加されています。一方、数学AIは数学の実世界の応用に重点を置いており、HLでは確率モデリングと統計のトピックが追加されています。
IB数学 各コースのレベル感
ここでは一般的な比較として、IBディプロマプログラムの要件日本の高等学校の教育要件を比較して見ますが、具体的な部分では各学校によっても違います。
IB数学コースの目的は、学生が数学的思考と問題解決スキルを深め、その知識を実世界の問題に適用できる能力を磨くことです。
また、これらのコースは学生が自己学習のスキルを発展させ、将来の学問やキャリアで役立てる能力を育てることを目指しています。
数学AA(SL)
SLは日本の高等学校の数学の基本的な内容をカバーしていて、加えて微積分などのさらに高度なトピックも含まれています。
このレベルは、ビジネス、経済学、生物学、化学など、数学的な知識を必要とするけれど、高度な数学の専門知識を必要としない分野に進学する学生に適していますので、大学入試における数学の基本的な要件を満たすためのコースと言えるでしょう。
数学AA(HL)
HLは大学の初級数学コースに相当し、線形代数などのさらに高度なトピックも含まれています。物理学やエンジニアリングなどのSTEM(科学、技術、工学、数学)の分野への進学を目指す学生に対してより高度な内容を提供します。
数学AI(SL)
数学AI(SL)は日本の高等学校の数学の基本的な内容をカバーし、その上で統計や確率などの実世界の応用に焦点を当てています。ビジネス、社会科学、または人文科学を含む非STEM分野に進学する学生に適しています。
数学AI(HL)
数学AI(HL)はHLは大学の初級統計コースに相当し、統計学、データサイエンス、経済学、ビジネスなど、高度な統計と確率、確率モデリングに依存する分野に進学する学生に適しています。
「数学AA」を選択がおすすめ
理系学部を目指す場合「数学AA(HL)」
大学で理系に進むことを考えている学生は、数学AA(HL)を選択することをおすすめします。
日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、アジア圏の大学を見ても、点数要件を設けている学校はありますが、基本的にはIB数学のHLであれば、どちらでも構わないという事が多いです。
しかし、一部理系学部の入学資格として数学AAを履修していることを必須要件としている大学も少なくないので、目指している大学が決まっている場合は要件を確認する必要があります。
また、IBを受講している途中で進路が変わることもありますし、まだ進路が決まっていない場合にも、選択肢を減らさないためにも「数学AA(HL)」を選択すると良いかと思います。
国際バカロレア認定校によっては、AAしか開講していない、AIしか開講していないなどもあるので、そこのチェックも必要になってきます。
文系学部を目指す場合「数学AA(SL)」
数学はSLで取るという場合でも、一部の国の大学では数学AI(SL)が入学資格として認められていないので、「数学AA(SL)」を選択しておくことをおすすめします。
よほど数学が苦手だという場合を除き、文系に進む場合でも数学AAを選択しておくことで、国際バカロレアの資格を活用した進学をする際にも、選択肢を減らすことがないかと思います。
IB数学の難易度の違い
数学AAと、数学AIの間には、内容とアプローチの面で顕著な違いがありますが、一方が他方より一律に「難しい」または「簡単」という訳ではありません。
それぞれのコースの難易度は、学生の強み、興味、そして将来の学問やキャリアの目標に大いに依存します。
数学AAは、理論的で抽象的な数学に重点を置いています。このコースは、数学的な証明や抽象的な概念に興味があり、これらを追求する能力がある学生にとってはより適しています。
したがって、物理学、エンジニアリング、または数学そのものなど、数学的理論に大いに依存する分野に進む予定の学生にとって、数学AAは重要であり、そして「難易度」はその目標と一致しています。
一方、数学AIは、実世界の状況に数学を適用することに焦点を当てています。このコースは、統計、モデリング、データ解析などの実践的な応用に興味があり、数学を具体的な状況に適用する方法を理解したい学生にとってはより適しています。
そのため、社会科学、ビジネス、心理学など、数学の実用的な側面を活用する分野に進む予定の学生にとっては、数学AIの「難易度」がその目標と一致します。
難易度が高い | AA(HL)=AI(HL) |
↑ | AA(SL) |
↓ | —[大きな壁]— |
難易度が低い | AI(SL) |
IB数学 評価方法
国際バカロレア(IB)の数学の評価方法は、外部評価と内部評価の2つの主要な要素で構成されています。
外部評価 | 内部評価 |
80% | 20% |
外部評価|HL(Higher Level)
外部評価 | 計算機 | 配点 / 比重 | |
---|---|---|---|
AA | Paper1 | なし | 110点/30% |
Paper2 | あり | 110点/30% | |
Paper3 | あり | 55点/20% | |
AI | Paper1 | あり | 110点/30% |
Paper2 | あり | 110点/30% | |
Paper3 | あり | 55点/20% |
外部評価|SL(Standard Level)
外部評価 | 計算機 | 配点 / 比重 | |
---|---|---|---|
AA | Paper1 | なし | 80点/40% |
Paper2 | あり | 80点/40% | |
AI | Paper1 | あり | 80点/40% |
Paper2 | あり | 80点/40% |
数学で高得点を取るためのポイント
定期的な復習と練習
過去問題の利用
内部評価への取り組み
問題解決の過程を記述
コミュニケーション
健康的な生活習慣
深い理解
数学はただ公式を覚えるだけの科目ではありません。理論や概念を深く理解し、それらを適用する能力が求められます。問題解決のためのさまざまな方法を理解し、新しい状況や問題に適応できるようになることが重要です。
定期的な復習と練習
数学の理解とスキルの向上には、定期的な復習と継続的な練習が欠かせません。新しい概念を学んだら、それを定期的に復習し、さまざまな問題を解くことでその概念を練習してみてください。
過去問題の利用
IBの過去の試験問題を解くことは、試験の形式や問題の種類を理解する上で非常に有益です。これにより、試験のペースを理解し、時間管理のスキルを磨くことができます。
内部評価(IA)への取り組み
数学の内部評価(IA)は、IB数学の評価の20%を占めています。
これは個々の学生が独自の数学的探求を行う部分で、これをよく準備し、自分の興味や強みに基づいてテーマを選ぶことは、高得点を獲得するために非常に重要です。
問題解決の過程を記述する
数学の試験では、最終的な答えだけでなく、解答過程も評価されます。したがって、問題を解くためのステップや思考過程を明確に書き記すことが重要です。
教師やクラスメートとのコミュニケーション
自分が理解できない概念や問題がある場合、教師やクラスメートに質問することは非常に有益です。また、他の人が問題をどのように解決するかを見ることで、新たな視点やアプローチを学ぶことができます。
健康的な生活習慣
健康的な食事、十分な睡眠、定期的な運動は、学習能力と集中力を向上させます。これらを維持することは、試験勉強だけでなく全般的な学業成績にも寄与します。