国際バカロレアとAレベルの違いを徹底解説!費用対効果や進学実績からも分析

近年、世界はますますグローバル化しています。国境を越えたコミュニケーションや交流が日常的になり、教育の分野でも国際的な選択肢も身近なものとなってきました。

国際的な教育の中でも、国際バカロレア(International Baccalaureate:IB)とケンブリッジAレベル(Cambridge Advanced Level)は、国際的な教育課程として世界中で認知されています

これら2つのプログラムは、学生たちを世界で活躍する準備を整えることを目指している点で共通し、大学への橋渡しとしても高く評価されていて、世界中の名門大学への進学を目指す学生に選ばれています

この記事では、国際バカロレアとケンブリッジAレベルを比較し、それぞれの特徴や魅力を掘り下げていきます。

目次

基本概要
国際バカロレアとAレベル

国際バカロレア(IB)とは?

国際バカロレア(International Baccalaureate:IB)は、1968年にスイスのジュネーブで設立された国際的な教育プログラムです。世界中のどこでも同じ質の高い教育を受けられるよう開発され、生徒たちが国際的な視野を持ち、多様な文化を理解し尊重できる人材に育つことを目指しています[1]

現在、IBは世界160カ国・地域の約5,800校で実施されており、日本国内でも約240校(インターナショナルスクールや国内認定校を含む)が認定されています[2]

ケンブリッジAレベル(A-Level)

ケンブリッジAレベル(Cambridge Advanced Level)は、イギリスの大学入学資格の一つで、16歳から18歳の学生を対象とした2年間の課程です。元々はイギリス国内の教育制度でしたが、現在は世界160カ国以上の10,000校以上で採用されている国際的な資格となっています[3]

Aレベルの特徴は、生徒が自分の興味や将来のキャリアに合わせて3〜4科目を選択し、それらに特化して深く学べる点にあります。

認定校数の比較

世界での認定校
160ヵ国
5,800校以上
2024年12月31日時点
世界での認定校
160ヵ国
10,000校以上
日本の認定校
251校
DP以外も含む
2024年12月31日時点
日本の認定校
20校
A-Level以外も含む
2024年4月時点

カリキュラムと学習内容の違い
国際バカロレアとAレベル

IBのカリキュラム

IBには年齢に応じて4つのプログラムがありますが、高校生が大学入学資格として取得するのは「ディプロマプログラム(DP)」です。IBDPでは、次の6つの科目群から各1科目ずつ、計6科目を選択して学びます[4]

6つの科目

  1. 言語と文学(母国語)
  2. 言語の習得(外国語)
  3. 個人と社会(歴史、経済、地理など)
  4. 理科(物理、化学、生物など)
  5. 数学
  6. 芸術(または他の科目群からもう1科目)

3つの必修科目

  1. 知の理論(TOK)
  2. 課題論文(EE)
  3. 創造・活動・奉仕(CAS)

Aレベルのカリキュラム

Aレベルでは、生徒が自分の興味や進学先に合わせて3〜4科目を選択します。必修科目はなく、50以上ある科目の中から自由に選べるため、将来の専門分野に合わせた学習が可能です[5]

科目は主に以下のグループに分類されています。

Cambridge International AS &A Level
科目グループ
英語数学科学
言語人類学技術
社会科学芸術一般教養

主な違いの比較表

スクロールできます
項目国際バカロレアDPケンブリッジAレベル
科目数6科目+3つのコア要素3〜4科目
学習範囲幅広い分野をバランス良く専門的な科目にフォーカスできる
必修要素あり(TOK、EE、CAS)なし
学習アプローチ探究型・批判的思考重視科目内容の深い理解重視
柔軟性選択の幅が比較的狭い科目選択の自由度が高い

大学入学資格の違い
国際バカロレアとAレベル

国内大学の受け入れ状況

IB資格の評価

国際バカロレア資格を有する者は、日本の大学への入学資格が認められています。多くの大学でIB入試や帰国生入試の出願資格の一つとして明記されており、IB資格を活用した入試を実施する大学は年々増加しています[14]

国内の主要大学でIB入試を実施している例

東京大学京都大学早稲田大学
筑波大学東北大学慶應義塾大学

IB入試では、IBスコアに加えて、面接や小論文などを組み合わせた選抜が一般的です。

Aレベルの評価

Aレベルも日本の大学への入学資格として認められていますが、IB入試のように専用の入試枠がある大学は少ないのが現状です。多くの場合、帰国生入試や総合型選抜(AO入試)の枠で出願することになります[15]

順天堂大学医学部などでは、出願資格として「ケンブリッジ・インターナショナルAレベルまたはGCE Aレベルのカリキュラムにおける3科⽬のうち物理、化学、⽣物から1科⽬および数学を合格していること」といった条件が明記されています[16]

国際バカロレア資格を有する者で18歳に達した者に対しては、日本の大学への入学資格が認められます。

文部科学省 IB教育推進コンソーシアム

ケンブリッジAレベルを保有していれば、大学への入学資格が認められます。

文部科学省 入学資格に関するQ&A(平成31年1月31日現在)

海外大学の受け入れ状況

国際的評価

🌍 IB
世界中の大学で広く認められており、特に欧米の大学では高い評価を受けています。

🏫 Aレベル
Aレベルはイギリスの教育制度が基盤のため、イギリスや旧英連邦国では特に評価が高いです。

大学で入学資格として認められている学校数

アメリカの大学

約1,600大学
アメリカの大学

約800大学
イギリスの大学

全大学
イギリスの大学

全大学
日本国内の大学

入試に利用できる大学あり
日本国内の大学

入試に利用できる大学はなし
出典:BOSTON CONSULTING GROUP
令和3年度「日本及び主要国におけるインターナショナルスクールに関する調査」
最終報告書|令和3年 (2021年) 6月25日

評価方法と難易度の違い
国際バカロレアとAレベル

IBの評価方法

IBDPの評価は45点満点で、6科目(各7点満点、計42点)と3つのコア要素(最大3点)の合計で表されます。各科目は内部評価(約20-25%)と外部評価(約75-80%)の組み合わせで評価されます[6]

45点満点で評価
6科目×7点(最大42点)
コア科目(最大3点)
内部評価と外部評価の組み合わせ

内部評価(IA)
学生のコースワークやプロジェクトを基に、教師が行う評価。各科目における総得点の約20%〜25%を占めます。

外部評価(EA)
主に最終試験による評価。各科目における総得点の約75%〜80%を占めます。

IBディプロマ資格の取得には、45点満点中、最低24点以上を取得する必要があります。

Aレベルの評価方法

Aレベルでは、各科目がA*(最高)からE(最低の合格点)までの等級で評価されます(最低基準を満たしていない場合はU)評価は主に最終試験の結果に基づいていて、科目ごとに独立したスコアが与えられます[7]

評価統一得点率(PUM)
A*90%以上
A80%
B70%
C60%
D50%
E40%

難易度の比較

難易度については一概に比較できませんが、一般的に以下のように考えられています。

🌍 IB
幅広い科目を学ぶ必要があり、批判的思考力やエッセイライティング、探究活動など多面的な能力が求められるため、全体的な負担が大きい傾向

🏫 Aレベル
特定科目に特化するため、その分野については深い知識が求められるが、科目数が少ないため全体的な負担は相対的に小さい傾向

成績の相関については、以下のような対応関係があると言われています[8]

IBA-Level偏差値
43-45A*A*A*70
42A*A*A68
40-41A*AA64
38-39AAA61
37AAB59
36ABB58
34-35BBB54
31-33CCC以上50
28-30DDD以上45
26-27EEE以上42
24-25EE40

※国際バカロレア(IB)は6科目+コア科目の合計値、A-Levelは3科目の成績を人数比で対比
※偏差値は人数比から正規分布表より世界で生きる教育推進支援財団が独自に試算した数字であり参考値

性格・学習タイプ別
向いているのはどっち?
国際バカロレアとAレベル

IBに向いているタイプ

IBプログラムは以下のようなタイプの学生に向いています

  1. オールラウンダータイプ
    様々な科目に興味があり、幅広い分野を学びたい学生
  2. 探究心が強い学生
    自分から課題を見つけ、深く掘り下げることを楽しめる学生
  3. チームワークを得意とする学生
    グループプロジェクトやディスカッションが多いため
  4. 時間管理が得意な学生
    複数の課題を同時に進める必要があるため
  5. 国際的な視野を持ちたい学生
    グローバルな問題に関心があり、多様な文化を理解したい学生
  6. 将来の専門が決まっていない学生
    多様な科目を学ぶことで、自分の興味や適性を発見できる

IBの学習者像として、「探究する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念をもつ人」「心を開く人」「思いやりのある人」「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」という10の特性が掲げられています[1]

Aレベルに向いているタイプ

Aレベルは以下のようなタイプの学生に向いています

  1. スペシャリストタイプ
    特定の分野に強い興味があり、深く学びたい学生
  2. 将来の進路が明確な学生
    医学、工学など専門分野が決まっている学生
  3. 自己学習能力が高い学生
    科目数は少ないが、各科目を深く掘り下げる必要があるため
  4. 試験型の評価が得意な学生
    評価の大部分が最終試験によるため
  5. 効率的に学びたい学生
    関心のある分野に集中してエネルギーを注ぎたい学生
  6. 柔軟な学習環境を求める学生
    オンライン受講など学習形態の自由度が高いため

具体的な例で比較

例1
将来、医学部への進学を考えている場合

  • IBの場合
    6科目すべてを学ぶ必要があるため、理系科目以外も勉強する時間が必要。ただし、批判的思考力や研究スキルが身につき、医師として必要な総合的な能力の育成につながる。
  • Aレベルの場合
    生物、化学、数学など医学部進学に必要な科目に特化できるため、効率的に専門知識を深められる。

例2
文系・理系の両方に興味がある場合

  • IBの場合
    6つの科目群から各1科目を選ぶため、文系・理系両方の科目をバランスよく学べる。
  • Aレベルの場合
    3〜4科目を自由に選べるので、文理混合の科目選択も可能だが、専門性を考えると同じ分野から選ぶことが多い。

費用と受講方法の比較
国際バカロレアとAレベル

IBの費用と受講方法

IBを受講するには、基本的に認定校に通学する必要があります。日本国内のIB認定校は主に以下の3タイプに分かれます[10]

インターナショナルスクール年間授業料は100〜300万円程度
私立学校(認定校)年間授業料は50〜150万円程度
公立学校(認定校)年間授業料は公立高校の通常料金
(数十万円程度)

さらに、IB試験の受験料として、1科目あたり約1万円、全科目とコア要素を含めると約10万円程度の追加費用がかかります。

日本国内のIBDP認定校は2024年3月時点で71校、候補校が7校あります[11]

Aレベルの費用と受講方法

Aレベルの受講方法は以下の3つが一般的です[12]

インターナショナルスクール年間授業料は100〜300万円程度
イギリスへの留学300〜500万円程度
オンライン受講Nisaiなどのオンラインプログラムで、2年間で400〜600万円程度

Aレベルの試験費用は1科目あたり約2万円で、3〜4科目で6〜8万円程度かかります。

日本国内のケンブリッジ国際認定校は2024年4月時点で24校ですが、Aレベルのカリキュラムを提供している学校はさらに少なくなります[13]

受講方法の比較表

スクロールできます
項目国際バカロレアAレベル
受講形態認定校への通学が必須通学またはオンライン受講が可能
国内認定校数約70校(IBDP提供校)約24校(全カリキュラム含む)
平均的な費用インター:年間100〜300万円
私立:年間50〜150万円
公立:公立高校の通常料金
インター:年間100〜300万円
オンライン:2年間で400〜600万円
試験費用全科目で約10万円3〜4科目で6〜8万円
柔軟性通学が必要で地理的制約ありオンライン受講可能で地理的制約が少ない

選択の判断基準と具体的なアドバイス
国際バカロレアとAレベル

選択の判断基準

以下の基準を考慮して、自分や子どもに合ったプログラムを選びましょう。

選択の判断基準
学習スタイルと強み
  • 幅広く学びたい → IB
  • 特定分野を深く学びたい → Aレベル
選択の判断基準
将来の進路
  • 進路が未定で選択肢を広げたい → IB
  • 特定の専門分野が決まっている → Aレベル
選択の判断基準
地理的条件
  • IB認定校に通える環境にある → IB検討可能
  • 地理的制約がある → オンライン受講可能なAレベル検討
選択の判断基準
費用面
  • 公立のIB認定校がある → 費用面でIBが有利
  • それ以外 → 個別に比較検討が必要
選択の判断基準
受験する大学
  • 日本の大学でIB入試がある → IBが有利な場合も
  • イギリスの大学志望 → Aレベルが有利な場合も
選択の判断基準
英語力
  • 英語力が高い → どちらも検討可能
  • 英語に不安がある → 日本語DPのあるIBか、Aレベルの科目選択で調整

失敗しない選択のためのアドバイス

失敗しない選択のためのアドバイス
  1. 両プログラムの説明会に参加する
    認定校のオープンキャンパスや説明会に参加し、実際のカリキュラムや学習環境を確認しましょう。
  2. 在校生や卒業生の話を聞く
    実際に経験した人からの生の声は貴重な情報源です。SNSや学校紹介イベントなどを活用しましょう。
  3. 自分/子どもの学習スタイルを客観的に分析する
    「これまでどのような学び方が合っていたか」「どのような科目に興味があるか」を振り返りましょう。
  4. 柔軟性を持つ
    どちらのプログラムも素晴らしい教育機会です。最初から「これが絶対正解」と考えず、状況に応じて判断しましょう。
  5. サポート体制を確認する
    学校のサポートだけでなく、塾や家庭教師など外部リソースの必要性も検討しましょう。

よくある質問FAQ
国際バカロレアとAレベル

国際バカロレアとAレベル、難易度はどちらが高い?

一概には言えません。IBは6科目+コア要素と幅広い学習が求められる分、全体的な負担が大きい傾向があります。

一方、Aレベルは3〜4科目に特化するため科目数は少ないですが、各科目の深さは相当なものです。ご自身の学習スタイルや得意分野によって、どちらが「難しい」と感じるかは変わってきます。

日本の大学受験では、どちらが有利?

日本の大学ではIB向けの特別入試枠を設けている大学が増えているため、現状ではIBの方が入試制度として整備されている傾向があります。

ただし、Aレベルも入学資格として認められており、帰国生入試や総合型選抜で評価されます。志望大学の入試要項を確認することをお勧めします。

オンライン受講はどちらが可能?

Aレベルはオンライン受講が可能で、Nisaiなどのプロバイダーがオンラインコースを提供しています。一方、IBは基本的に認定校への通学が必要で、完全オンラインでの受講は現時点では一般的ではありません。

英語が苦手でも大丈夫?

IBには日本語DPという選択肢があり、一部の科目を日本語で受講することができます。

Aレベルは基本的に英語での受講が前提ですが、科目選択によって言語的負担を調整することは可能です。いずれにしても、ある程度の英語力は必要となります。

途中で変更することはできる?

IBからAレベル、あるいはAレベルからIBへの途中変更は技術的には可能ですが、カリキュラムの違いからスムーズな移行は難しい場合があります。

特にIBからAレベルへの変更は比較的容易ですが、その逆は難しいことがあります。変更を検討する場合は早めに学校やカウンセラーに相談することをお勧めします。

違いをまとめ
国際バカロレアとAレベル

国際バカロレア(IB)とケンブリッジAレベルはどちらも国際的に認められた優れた教育プログラムです。選択に際しては、以下のポイントを考慮しましょう

  • IBは:幅広い学びを求める「オールラウンダー」タイプの学生に向いています
  • Aレベルは:特定分野に特化したい「スペシャリスト」タイプの学生に向いています
  • 地理的条件:IBは認定校への通学が必要
  • Aレベルはオンライン受講も可能
  • 費用:公立IB校があれば比較的安価、それ以外は個別に比較が必要
  • 進学先:どちらも世界中の大学で認められていますが、国やエリアによって評価が異なる場合も

最終的には、ご自身や子どもの個性、学習スタイル、将来の目標に合わせて選択することが大切です。どちらのプログラムも素晴らしい教育機会であり、しっかりと取り組めば、将来のグローバルな活躍への確かな足がかりとなるでしょう。


参考文献・引用情報

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