世界トップレベルの工科大学として知られるドイツのミュンヘン工科大学(TUM)。QS世界大学ランキング2026で世界22位という輝かしい実績に憧れ、「子どもをここで学ばせたい」「ここで自分の夢を叶えたい」と考える日本のご家庭が急増しています。
しかし、いざ調べ始めると、多くの方がこんな壁にぶつかります。
- 「日本の高校卒業だけでは出願できないって本当?」
- 「IBディプロマがあれば確実に入れるの?」
- 「学費はいくら?生活費は?本当に払えるの?」
- 「ドイツ語ができないと無理?英語だけでは不可能?」
- 「出願書類は何が必要?いつから準備すべき?」
この記事では、2025年現在の最新情報をもとに、TUM進学に必要な情報を一つひとつ丁寧に、そして分かりやすく整理しました。
日本の高校を卒業される方も、国際バカロレア(IB)で学んでいる方も、この記事を最後まで読んでいただければ、ご自身の状況にあった道筋と、今日から始めるべき具体的な準備がクリアになるはずです。
ミュンヘン工科大学(TUM)が世界の優秀な学生から選ばれる3つの理由

世界最高水準の教育環境と研究実績
TUMは単なるドイツの有力大学ではありません。最新の国際的な大学ランキングでは
- QS世界大学ランキング2026:世界22位(2025年は28位から上昇)
- THE世界大学ランキング2025:世界26位(ドイツ国内1位)
- 工学・技術分野:世界19位(QS分野別ランキング)
- 就職力ランキング:世界13位(THE Global University Employability Ranking 2025)
ドイツ国内では10年以上連続でトップの座を維持していて、その教育と研究の質は世界レベルで認められています。特に機械工学、電気工学、情報工学、建築学などの分野では、最先端の研究設備と世界的な研究者陣による指導を受けることができます。
グローバル企業との強力な産学連携
TUMの最大の魅力の一つが、産業界との密接な連携です。
主要連携企業
- BMW(本社:ミュンヘン)
- シーメンス
- アウディ
- SAP
- 多数のテックスタートアップ
学生は在学中から
- 有給インターンシップへの参加
- 企業との共同研究プロジェクト
- 就職直結のネットワーキング機会
これらの機会により、卒業後の就職率は極めて高く、初任給も他大学と比較して高水準となっています。
国際色豊かなキャンパス環境
- 留学生比率:約40%(140カ国以上から学生が集結)
- 英語開講プログラム:学士21コース、修士47コース(2025年現在)
- 複数キャンパス制:ミュンヘン市内、ガルヒング、ヴァイエンシュテファンの3キャンパス
様々な文化的背景を持つ学生同士での交流は、グローバルな視点を養う最良の環境となります。

【最重要】あなたの出願ルート診断|3つのケース別徹底攻略

TUMへの出願資格は最終学歴によって大きく異なります。まず、あなたがどのルートに該当するかを確認しましょう。
ルート1:日本の高等学校卒業者【難易度:★★★】
現実:直接出願は不可能
残念ながら、日本の高校卒業資格だけではTUMの学士課程に直接出願することはできません。ドイツの大学入学資格(Abitur)と日本の高校卒業資格が同等と認められていないためです。
必須ステップ:2段階の準備が必要
- 必要科目:数学、理科2科目(物理・化学・生物から選択)、外国語
- 基準点:各科目で一定以上のスコアが必要(詳細は希望学部により異なる)
- 注意点:センター試験は不可、共通テストである必要があります
TUMへの挑戦権を得るためには、まず共通テストで基準点をクリアすることが第一歩となります。目標達成のために、実績のあるZ会の通信教育
などのオンライン塾などを活用して集中的に対策するのも有効な戦略です。
- 期間:1年間(2学期)
- 場所:ドイツ国内の大学付属機関
- 学習内容:ドイツ語、数学、物理、化学などの専門基礎科目
- 最終試験:FSP(大学入学資格試験)に合格が必要
- 1年目:ドイツ語学習(B2レベル到達目標)
- 2年目:共通テスト受験、Studienkolleg出願
- 3年目:Studienkolleg受講、TUM出願
ルート2:国際バカロレア(IB)DP取得者【難易度:★★】
条件を満たせば直接出願可能
IBディプロマプログラム(IBDP)修了者は、特定の条件を満たすことで、Studienkolleg(大学準備コース)を経ずに直接TUMに出願できます。

出願に必要な条件
科目要件
- 数学:SLまたはHL(どちらでも可)
- 自然科学:物理、化学、生物のいずれか1科目以上
- 第3言語:ドイツ語推奨(英語プログラムの場合は英語可)
レベル要件
- 数学と自然科学のうち最低1科目はHLで履修
- 総合スコア:最低24点以上(希望学部により異なる)
国際バカロレアのスコアはどのようにして決まるのか、詳細は以下の記事でまとめてあります。
言語要件
- ドイツ語プログラム:TestDaF 4×4またはDSH 2
- 英語プログラム:IELTS 6.5またはTOEFL iBT 88
- IBDPプログラム履修中:言語能力向上に集中
- 卒業後:出願書類準備(約6ヶ月)
ルート3:日本の大学在学・卒業者【難易度:★】
最も確実:個別審査による直接出願
日本の大学に1年以上在学または卒業している場合、個別審査により直接出願が可能です。
出願要件
- 在学期間:最低1年間(2学期分)の成績証明書
- 履修科目:希望するTUMの学部と関連する科目の履修歴
- GPA:3.0以上推奨
有利な条件
- 工学部出身者:工学系学部への出願で高い合格率
- 理学部出身者:理系学部全般で評価される
- 研究実績:学会発表や論文がある場合は大きなアドバンテージ
TUM出願準備スケジュール|状況別アクションプラン
計画的な準備がTUM合格の鍵となります。以下のタイムラインに沿って準備を進めましょう。
24ヶ月前:基盤固めフェーズ
言語習得スタート
- ドイツ語学習開始:ゼロからB2レベルまで約18ヶ月必要
- 英語能力向上:IELTS 6.5、TOEFL iBT 88を目標設定
- 学習方法:語学学校、オンライン学習、交換留学の検討
特にIELTSやTOEFLのスピーキングセクションは、独学でのスコアアップが難しいパートです。早い段階からネイティブ講師と話せる【Cambly(キャンブリー)】
のようなオンライン英会話などを活用し、実践的なコミュニケーション能力を鍛え始めましょう。
情報収集と方向性決定
- TUM公式サイトでの最新情報確認
- 希望学部・専攻の詳細調査
- 出願ルートの最終決定
18ヶ月前:本格準備開始
語学能力証明取得
- TestDaF、DSH、IELTS、TOEFLの受験日程確定
- 複数回受験を想定したスケジュール作成
学力要件クリア
- 日本の高校生:大学入学共通テスト出願・受験
- IB生:最終スコア予測と対策強化
- 大学生:成績向上と関連科目履修
12ヶ月前:出願準備本格化
uni-assist登録とVPD申請
- uni-assistアカウント作成
- VPD(予備審査書類)申請開始
- 成績証明書等の英訳・認証手続き
推薦状・エッセイ準備
- 推薦者との調整・依頼
- 志望動機書(Motivational Letter)の執筆開始
- 英文・独文での文書作成技術向上
6ヶ月前:最終準備フェーズ
出願書類完成
- すべての必要書類の最終確認
- オンライン出願システムの操作確認
- バックアップ計画の準備
財政証明準備
- 閉鎖口座(Sperrkonto)開設手続き
- DAAD奨学金等への申請
- 保護者の財政保証書作成
出願期間中(5月中旬〜7月中旬)
オンライン出願完了
- TUM出願ポータルでの申請
- 書類アップロード
- 出願費用支払い
フォローアップ
- 出願確認メールの受信確認
- 追加書類要求への対応
- 面接準備(該当プログラムの場合)
今すぐ始めるべきこと(状況別)
高校1年生の場合
- IB校への転校検討:最も確実なルート
- ドイツ語学習開始:ゼロからでも間に合います
- 理数系科目の強化:数学、物理、化学の基礎固め
高校2年生の場合
- 出願ルートの最終決定:IB・共通テスト・海外大学経由
- 語学能力テスト受験:IELTS・TOEFL・TestDaF
- 成績向上に集中:GPA3.5以上を目標
高校3年生・既卒生の場合
- 出願書類作成開始:志望動機書、推薦状依頼
- uni-assist登録:VPD申請の準備
- 財政証明準備:閉鎖口座開設手続き
大学生・社会人の場合
- TUM国際課への問い合わせ:出願資格の個別確認
- 成績証明書準備:英訳・認証手続き
- 研究計画書作成:修士課程志望の場合
【2025年最新】TUM留学にかかる費用詳細シミュレーション
正確な費用把握は留学計画の成功に不可欠です。2024年に導入された新しい授業料制度を含め、リアルな費用を詳しく解説します。
授業料|非EU圏学生への新制度詳細
TUMの授業料(2025年現在)
2024年冬学期より導入された授業料制度では、非EU圏学生は以下の費用が必要です。
課程 | 1学期あたり | 年間 | 円換算(年間)※ |
---|---|---|---|
学士課程(一部) | 1,500ユーロ | 3,000ユーロ | 約50万円 |
学士課程(一般) | 2,000〜3,000ユーロ | 4,000〜6,000ユーロ | 66万〜99万円 |
修士課程 | 3,000〜6,000ユーロ | 6,000〜12,000ユーロ | 99万〜198万円 |
※1ユーロ=165円で概算。為替変動により変動します。最新の授業料はTUM公式授業料ページで必ずご確認ください。
その他の必要費用
- 学期費(全学生対象):約85ユーロ/学期
- 学生証発行費:約150ユーロ(初回のみ)
生活費|ミュンヘンでの現実的な月間支出

ミュンヘンはドイツで最も生活費が高い都市の一つです。以下は実際の学生の月間支出データです。
月間生活費詳細
費目 | 節約型 | 標準型 | 余裕型 | 備考 |
---|---|---|---|---|
家賃 | 400ユーロ | 600ユーロ | 800ユーロ | 学生寮/WG/一人暮らし |
食費 | 200ユーロ | 300ユーロ | 400ユーロ | 自炊中心/外食併用 |
健康保険 | 120ユーロ | 120ユーロ | 120ユーロ | 学生保険必須 |
交通費 | 0ユーロ | 50ユーロ | 50ユーロ | 自転車/学生定期 |
通信費 | 20ユーロ | 30ユーロ | 40ユーロ | 携帯・インターネット |
雑費 | 100ユーロ | 200ユーロ | 300ユーロ | 書籍・娯楽・衣類 |
月額合計 | 840ユーロ | 1,300ユーロ | 1,710ユーロ | 15万〜30万円 |
年額合計 | 10,080ユーロ | 15,600ユーロ | 20,520ユーロ | 176万〜359万円 |

奨学金制度|日本人学生が申請可能な支援制度
高額な留学費用を軽減する奨学金制度を積極的に活用しましょう。
DAAD(ドイツ学術交流会)奨学金
- 対象:修士課程・博士課程学生
- 給付額:月額900〜1,200ユーロ + 渡航費
- 期間:最大24ヶ月
- 申請条件:優秀な学業成績、明確な研究計画
- 申請時期:毎年10月頃(翌年度分)
TUM独自奨学金
- TUM Scholarship:成績優秀者対象、月額500ユーロ
- Research Assistantship:研究補助として時給10〜15ユーロ
- Corporate Sponsorship:企業協賛による給付型奨学金
その他の支援制度
- JASSO海外留学支援制度:月額6〜12万円
- ロータリー財団奨学金:年額30,000ドル
- 各種財団奨学金:条件により異なる
初期費用チェックリスト
渡独前に必要な初期費用をまとめました。
- ビザ申請費:約75ユーロ
- 閉鎖口座開設:11,904ユーロ(2025年法定最低額)
- 健康保険加入:約150ユーロ
- 航空券:10〜20万円
- 小計:約210万円
- 住居保証金:家賃2〜3ヶ月分
- 生活用品購入:約500ユーロ
- 各種登録手続き:約200ユーロ
- 小計:約20〜30万円
TUM留学には、学費と生活費を合わせて相応の資金計画が必要です。ご家庭だけで準備することに不安がある場合は、家計見直し無料相談サービス「マネドア」のような専門家に一度無料で相談し、具体的なシミュレーションを立ててみることをお勧めします。
失敗を避けるための重要注意点
よくある失敗パターンとその対策
- 原因:翻訳・認証手続きの不備、締切間際の準備
- 対策:6ヶ月前からの準備開始、プロの翻訳サービス利用
- 原因:TestDaF 4×4の難易度を軽視
- 対策:2年以上の学習期間確保、複数回受験計画
- 原因:生活費の過小見積もり、為替変動の未考慮
- 対策:余裕をもった資金準備、奨学金の積極的申請
- 原因:古い情報での準備、公式サイト確認不足
- 対策:定期的な公式サイトチェック、最新情報の入手
よくある質問|TUM志望者からの疑問に回答
英語のみで学位取得は可能?
学士課程(Bachelor)
2025年現在、TUMでは約200の学位プログラムが提供されていて、その中で英語で完全に学位取得可能なプログラムは限定的ですが存在します。主な例として
- Management and Technology
- Aerospace
- Engineering Science
- Informatics(一部プログラム)
修士課程(Master)
英語プログラムは大幅に充実していて、様々な英語開講コースと教育プログラムが用意されています:
- 工学系:20以上のプログラム
- 情報系:10以上のプログラム
- 経営系:5以上のプログラム
日本の大学との併願は現実的?
結論:可能だけど綿密な計画が必要
スケジュール比較
- TUM出願:5月中旬〜7月中旬
- 日本私立大学:9月〜2月(AO・推薦・一般)
- 日本国立大学:1月〜3月(共通テスト・二次試験)
併願戦略
- 早期準備:TUM出願に必要な書類を先行して準備
- 費用計画:両方の初期費用を確保
- 明確な優先順位:合格後の最終決定基準を事前設定
TUM卒業後のキャリアパスについて
ドイツでの就職
- 就職活動期間:卒業後18ヶ月の滞在延長が可能
- 主要就職先:BMW、シーメンス、SAP、コンサルティング会社
- 想定年収:45,000〜65,000ユーロ(工学系修士、2024年データ参考)
- 必要スキル:ビジネスレベルのドイツ語(B2〜C1)
日本での就職
- 高い評価:外資系企業、研究開発職で特に高評価
- 想定年収:500万〜800万円(新卒、企業規模により差あり)
- 活用できるスキル:語学力、国際経験、専門技術
グローバルキャリア
- 選択肢:ヨーロッパ、北米、アジアでの就職機会
- TUMネットワーク:全世界のTUM卒業生とのネットワーク活用
- 起業・研究:博士課程進学、スタートアップ起業の機会
ビザ申請の流れを簡単に教えて
基本的な流れ
- 書類準備:TUM合格通知、財政証明、健康保険等
- 大使館予約:在日ドイツ大使館でオンライン予約
- 面接・申請:必要書類持参で大使館訪問
- 審査・受領:通常4-8週間で結果通知
財政証明書類
- 閉鎖口座開設証明(11,904ユーロ以上)※2024年9月より増額。最新要件は在日ドイツ大使館で必ずご確認ください。
- または奨学金給付証明書
- または保護者の財政保証書+銀行残高証明
住居確保のコツはある?
学生寮への申請
- TUM合格通知受領後、即座にミュンヘン学生サービス機構に申請
- 複数の寮に同時申請することが重要
WG(シェアアパート)探し
- WG-Gesucht等のサイトを活用
- ドイツ語での自己紹介文準備が必須
- 競争が激しいため、複数の選択肢を同時進行
まとめ|ミュンヘン工科大学合格への確実な道筋
ミュンヘン工科大学(TUM)への道は決して平坦ではありませんが、この記事で解説した情報と戦略に基づいて準備を進めれば、合格は十分に実現可能です。
重要ポイントの再確認
出願ルートの選択
- IB取得者:最も確実なルート
- 日本の高校卒業者:2年間の追加準備が必要
- 大学在学・卒業者:個別審査による直接出願
準備期間の確保
- 最低2年間の計画的準備
- 語学能力証明の取得に1年以上
- 出願書類準備に6ヶ月以上
費用計画の重要性
- 年間200〜300万円の費用想定
- 奨学金の積極的活用
- 初期費用200万円以上の確保
今日から始めるべきこと
あなたの現在の状況に関わらず、今日から以下のアクションを開始してください。
- TUM公式サイトでの最新情報確認
- 語学学習の開始または強化
- 出願ルートの最終決定
- 準備スケジュールの具体化
- 情報収集ネットワークの構築
最後に
TUMで学ぶことは、あなたの人生に計り知れない価値をもたらします。世界最高水準の教育、多様な文化との出会い、グローバルなキャリアの扉が開かれます。
この記事があなたのTUM合格への第一歩となることを心から願っています。準備は大変ですが、その先に待つ素晴らしい学びの体験は、すべての努力に値するものです。
免責事項:本記事に記載された情報は2025年6月24日時点のものです。授業料、ビザ要件、出願条件等は変更される可能性があります。出願前には必ず上記公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事の情報により生じた損害について、筆者は一切の責任を負いません。