自己採点が終わって、思っていた点数に届かなかった。いま、その状態でこのページを開いていると思います。
この記事は「気持ちを整理しましょう」から始めません。国公立を受けるなら、出願の締切までに残された時間は2週間あまりしかないからです。しかも国公立の出願には、知らないまま締切を迎えてしまいやすい決まりがあります。ここでは、その締切の形と、あなたの点数でまだ残っている手、そしてお金の話を親と同じ表で見る方法までを、出典をたどれる数字だけで並べます。
- 国公立の前期・後期は、出願が同じ期間にまとめて締め切られる。前期の結果を見てから後期を選ぶことはできない(2027年度は1月25日〜2月3日)
- ただし出願は同時でも、決断は段階的にできる。前期に合格して手続きをすれば後期は自動的に対象外になり、公立の中期と後期の両方に受かった場合は発表を見てから選べる
- 出願先を決める前に確認する関門がある=二段階選抜(足切り)。ただし予告した学部のうち、実際に足切りをしたのは3割ほどで、予告していても不合格者ゼロの大学が多数ある
- 共通テストの比重は大学ごとに全く違う。東京大学の前期は550点満点のうち共通テストは110点=2割しかない。共通テストで開いた差は、二次試験の配点で薄まる
- 英語で失敗した人・英語だけは取れた人には固有の逃げ道がある=英語資格のスコアで共通テストの英語を置き換えられる大学が実在する(九州工業大学・東京都立大学)
- 浪人を考えるなら、話を動かすのは説得ではなく同じ数字を親子で一緒に見ること。この記事の費用の表は、そのために公的統計だけで作っています
まず、締切を確定する【2027年度入試の日程】
最初にやることは、志望校の情報を集めることではありません。カレンダーに締切を書き込むことです。共通テストの結果が出た直後は時間の感覚が壊れやすく、「まだ考える時間がある」と思っているうちに出願が終わります。
国立大学の日程は国立大学協会、公立大学の日程は公立大学協会が決めています[3]。2027年度(令和9年度)については、どちらもすでに実施要領を公表しています。
| 共通テスト本試験 | 2027年1月16日・17日(追試験は1月23日・24日)[3] |
|---|---|
| 国公立の出願期間 | 2027年1月25日〜2月3日(国立[1]・公立[2]とも同じ期間) |
| 前期日程の試験 | 2月25日から[1] |
| 公立大学中期日程の試験 | 3月8日以降[2] |
| 後期日程の試験 | 3月12日以降[1] |
| 前期の合格発表 | 国立は3月6日〜3月10日[1]/公立は3月1日から[2] |
| 前期の入学手続締切 | 3月15日[1] |
| 後期の合格発表 | 3月20日〜3月24日(できる限り3月23日まで)[1] |
| 後期の入学手続締切 | 3月27日[1] |
前期の結果を見てから後期を選ぶことはできない
ここが最も重要です。上の表を見ると、前期の試験(2月25日)より前に出願期間(2月3日まで)が終わっています。つまり前期・後期の出願を、同じ1回で済ませなければならないということです。「前期はチャレンジして、落ちたら後期で安全なところを選ぶ」という考え方は成立しません。後期をどこにするかも、いま決めます。
出願できる数にも上限があります。国立大学は前期から1つ、後期から1つで合計2つまで[1]。ここに公立大学の中期日程を足すと、国公立あわせて合計3つまでになります[2]。
そして中期日程があるのは公立大学だけです[2]。国立志望のつもりで調べていると中期を見落としますが、公立大学の中期日程は「前期で届かなかった人」にとって実質的にもう1回のチャンスになります。志望の学部系統で中期を実施している公立大学があるかは、いま調べる価値があります。
出願は同時でも、決断は段階的にできる
「3つ同時に出す」と聞くと、全部を今決めきらなければいけないように感じます。実際には、後から効いてくる仕組みが2つあります。
- 前期に合格して3月15日までに入学手続を完了すれば、後期に出願・受験していても後期の合格者にはなりません[1]。つまり後期は「前期がうまくいかなかった場合の保険」として出しておける(前期に受かった場合に困ることはない)
- 公立大学の中期日程と後期日程の両方に合格した場合は、それぞれの合格発表を確認した後で、入学する大学を本人が決められます(事後選択制)[2]。これは国立にはない公立固有の仕組みです
「出願の締切は1回きり」なのは事実ですが、「人生の選択を今日1日で決めきる」わけではありません。決めるのは出願先の組み合わせまでで、どこに行くかの最終決定は3月に持ち越せます。
自己採点を「点」ではなく「差」で読む
「7割しか取れなかった」という言い方には、実は情報がありません。共通テストの平均点は年度によって大きく動くので、同じ点数でも年によって位置が変わるからです。
その前に1つだけ。自己採点をしていて解答欄がずれていた形跡に気づいた人は、共通テストのマークミスについて公式が何を書いているかを先に読んでください。受験番号欄・解答科目欄には0点の規定がある一方、公式に定められた救済の事例もあります。何が起きうるのかを知ってから点数を見たほうが、判断がぶれません。
| 科目(満点) | 令和6年度 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|---|
| 国語(200) | 116.50 | 126.67 | 116.37 |
| 数学Ⅰ・数学A(100) | 51.38 | 53.51 | 47.20 |
| 数学Ⅱ・数学B・数学C(100) | — | 51.56 | 54.52 |
| 英語リーディング(100) | 51.54 | 57.69 | 62.81 |
| 英語リスニング(100) | 67.24 | 61.31 | 54.65 |
| 情報Ⅰ(100) | — | 69.26 | 56.59 |
たとえば英語リーディングは、令和6年度の51.54から令和8年度の62.81まで11点以上動いています[19]。リスニングは逆に67.24から54.65へ下がりました。去年の先輩の点数と自分の点数を直接比べても意味がないのは、このためです。
「自分がどのあたりにいるか」を感覚でつかむなら、平均点より得点のばらつき(標準偏差)のほうが役に立ちます。令和8年度の標準偏差は、100点満点に換算すると国語が16.43(200点満点では32.87)、数学Ⅰ・Aが19.41、英語リーディングが23.72、情報Ⅰが15.72でした[19]。英語リーディングのようにばらつきが大きい科目は、平均から離れても順位がそこまで動かない一方、情報Ⅰのようにばらつきが小さい科目は、数点の差が順位に効きます。
ボーダーとの差をどう読むか
まず前提を1つ。ボーダーラインは大学が決めた合否の線ではありません。予備校が過去のデータから出している予測値で、河合塾は合格可能性50%になる地点をボーダーラインと定義しています[13]。だからボーダーを下回っていても出願そのものはできます(出願資格を決めるのは各大学の募集要項です)。
では、どのくらい下までなら出願を検討していいのか。ここについて、当編集部が確認した範囲では、予備校や大学が数値の目安を公表しているものは見つかりませんでした。判定は各社のリサーチや判定システムが担っていて、記事の形で「何点差までなら出せる」と言い切る主体がいないのです。
そのなかで、高校教員が指導で使っている目安を公開しています。「ボーダーラインからのマイナスが、二次試験の配点の10%以内」なら出願を検討する、という考え方です[14]。共通テスト300点・二次450点でボーダーが210点の大学なら、二次配点の10%は45点。40点差なら射程内、50点差なら厳しい、という計算になります。
これは当編集部が保証する基準ではありません。ただ、この考え方には使いどころがあります。「何点足りないか」ではなく「その差が、二次試験の配点のなかでどのくらいの大きさか」という見方に切り替わるからです。
共通テストの比重は、大学ごとに全く違う
その差を実際に薄めてくれるのが配点です。東京大学の前期日程は、共通テスト1000点満点を110点に圧縮し、第2次学力試験440点と合わせた550点満点で判定します[8]。共通テストが総合点に占める割合は2割です。
共通テストで50点差がついていても、110点に圧縮される過程で差は5.5点まで縮みます。一方、共通テストの比重が高い大学(共通テストと二次が同じくらいの配点、あるいは共通テストのほうが重い大学)では、同じ50点差が50点差のまま残ります。
つまり「共通テストで失敗したから終わり」かどうかは、志望校の配点表を見るまで決まりません。いま開くべきは判定システムだけではなく、志望校と、その周辺の大学の募集要項の配点表です。二次の比重が高い大学ほど、まだ勝負になります。
出願先を決める前に確認する関門(二段階選抜)
出願先を決める前に、もう一つ確認しておく関門があります。二段階選抜(足切り)です。志願者が募集人員に対して一定の倍率を超えた場合、共通テストの成績だけで先に絞り込み、通過した人にだけ二次試験を受けさせる仕組みです。
倍率は大学が事前に予告します。東京大学の令和8年度前期日程なら、文科各類が約2.5倍、理科一類が約2.3倍、理科二類が約3.0倍、理科三類が約2.8倍でした[7]。
予告されている=必ず実施される、ではありません。文部科学省が毎年、実施状況の実数を公表しています。
| 予告した大学・学部等 | 66大学176学部等(国立44大学128学部等/公立22大学48学部等) |
|---|---|
| 実際に実施した大学・学部等 | 35大学55学部等=大学ベース53.0%・学部ベース31.3% |
| 第1段階選抜の不合格者 | 4,135人(前年度の同日程は4,459人) |
| 取り止め・緩和で通った人 | 393人(予告どおりの倍率なら4,528人が不合格になる計算だった) |
学部単位で見ると、予告した学部のうち実際に足切りをしたのは31.3%です[5]。
さらに、予告した倍率をそのまま適用していれば4,528人が不合格になる計算だったところ、大学側が取り止めたり倍率を緩めたことで393人が第1段階選抜を通過しています[5]。
そして不合格者は特定の大学に集中しています。令和8年度前期の内訳は、東京大学835人、一橋大学378人、東京都立大学357人、東京科学大学342人[6]。
一方で、予告していながら不合格者が0人だった大学は多数あります。予告した66大学のうち実際に実施したのは35大学で、残る31大学は不合格者が0人でした[6]。
結論として、足切りは「怖いけれど、確率としては予告どおりに動かないことのほうが多い」関門です。志望校が最難関でなければ、足切りを理由に出願をやめる判断は急がないほうがいい。逆に上に挙がった大学のような集中先を志望している場合は、予告倍率と自分の得点を先に確認する必要があります。
あなたの点数で、まだ残っている手
ここから先は、「どの科目で失敗したか」で分岐します。全体の得点率だけを見て志望校を下げるのは、いちばん情報を捨てる決め方です。
英語で落とした人・英語だけは取れた人には、固有の逃げ道がある
共通テストの英語で失敗した場合、英語資格のスコアで共通テストの英語の得点を置き換えられる大学があります。これは「英検が使える」「加点される」という話とは別で、共通テストの得点そのものと差し替わる仕組みです。
九州工業大学は、この方式を公式に「置き換え方式」と呼んでいます。英語資格の換算点と、共通テストの「外国語」の得点を比べ、換算点のほうが高い場合は共通テストの得点を換算点に置き換えます[9]。令和9年度入学者選抜の換算表では、前期日程の換算点の上限は250.0で、そこに届く条件は次のとおりです[10]。
ひとつ注意が要るのは英検です。この上限に届くのは1級と準1級のスコアだけで、級ごとに有効なスコアの範囲が決まっています。
| 試験 | 換算点250.0(上限)に 必要なスコア |
|---|---|
| IELTS | 5.5 以上 |
| 実用英語技能検定 (1級・準1級/CSE) | 2304 以上 |
| TOEFL iBT | 72 以上 |
| GTEC(検定版・CBT) | 1180 以上 |
| TOEIC(L&R)(S&W) | 1560 以上 |
| TEAP | 309 以上 |
| TEAP CBT | 600 以上 |
| ケンブリッジ英語検定 | 160 以上 |
この250.0という上限が何を意味するかというと、令和8年度の九州工業大学 前期日程では、共通テスト「外国語」の配点が250点でした[11]。つまり換算点の上限は、共通テストの英語を満点で取ったのと同じ重みにあたります。共通テストの英語が半分しか取れていなくても、IELTS 5.5(英検なら1級・準1級でCSE 2304以上、TOEFL iBT 72)を持っていれば、そこは埋まるということです。
注意点が2つあります。1つは、換算点を使う場合でも共通テストの「外国語」自体は必ず受験していなければならないことです(受験していないと合否判定の対象になりません)[9]。
もう1つは有効期限です。使えるのは選抜実施年度の過去2年度以内に受けたスコアで、令和9年度なら令和6年4月1日以降のものです[9]。なお上の配点250点は令和8年度の募集要項の値です。令和9年度の配点は、公表され次第募集要項で確認してください。
東京都立大学も同じ考え方を採っています。外部英語検定のスコアを出願時に提出した人については、「外部英語検定試験の換算得点」と「大学入学共通テストの外国語の得点」のうち、いずれか高得点の方を合否判定に利用します[12]。
対象は学部・学科と日程で決まっています。2027年度一般選抜では、都市環境学部(前期・後期)、システムデザイン学部(前期・後期)、健康福祉学部(前期のみ)です[12]。同じ大学でも学部によって使えるかどうかが違うので、志望学科が対象に入っているかを必ず確認してください。
都立大の設計で読者にとって重要なのは、スコアを出しても損がないことです。未提出の人は共通テストの得点で判定されるだけなので、「換算されて下がるかもしれない」という心配は要りません。しかも複数のスコアを提出できて、英検を除けば利用のための最低スコア基準もありません[12]。手元に有効なスコアがあるなら、出しておくのが合理的です。
ただし換算の実数については、都立大は公表している表を「換算表のイメージ」と位置づけ、記載どおりに換算するとは限らず調整が生じる場合があると明記しています[12]。事前に換算得点を教えることはできないとも書かれています。何点になるかを計算して出願を決める使い方はできないということです。
この2校は例です。英語資格を使える大学、英語の配点が高い大学、英語だけで受けられる方式を持つ大学は、ほかにもあります。共通テストの英語で崩れた人ほど、ここを一度当たってみる価値があります。


国公立を続ける手(前期・中期・後期の組み方)
国公立を諦めない場合、組み方の自由度は「前期1つ・後期1つ」より広いことを思い出してください。前述のとおり、公立大学の中期日程を挟めば3回受けられます。
組み方の考え方は、得点率ではなく配点で決まります。共通テストで失った点を取り返したいなら、二次の比重が高い大学を前期に置く。逆に共通テストが想定どおり取れている科目があるなら、その科目の配点が高い大学を探す。同じ得点率でも、配点表の形が違えば有利不利は入れ替わります。
後期日程は募集人員が少なく倍率が上がりやすい一方で、前述のとおり前期に手続きすれば自動的に対象外になるため、出しておくことに実質的なデメリットがありません。「後期は考えていない」という理由で空欄にするのは、使える椅子を1つ捨てることになります。
医学部を志望している場合は、後期日程が残っている大学と、その共通テスト得点率を先に把握しておくと出願先を絞りやすくなります。入りやすい国公立医学部で、得点率・倍率と後期日程をまとめています。
私大に切り替える手(共通テスト利用が全滅した場合)
私大志望で、共通テスト利用の判定が全部だめだった。この時期にいちばん多く読まれている悩みです。滑り止めのつもりだった大学の判定まで悪いと、足元が抜けたように感じます。
ここで押さえておきたいのは、共通テスト利用と一般選抜は別の試験だということです。共通テスト利用は共通テストの得点だけで決まるので、失敗した点数がそのまま結果になります。一方、一般選抜はその大学の問題を、その日に解いた結果で決まります。過去問で得点できていた人にとって、共通テストの失敗は一般選抜の予測にはなりません。
やることは2つです。1つは一般選抜の出願先を、共通テスト利用に頼らない前提で組み直すこと。もう1つは、共通テスト利用を「合格の可能性がある得点帯」で出し直すことです。判定が悪かったのは志望帯の大学であって、判定ツールでA判定が出る大学がないとは限りません。共通テスト利用の出願締切がまだ来ていない大学があれば、出し先を入れ替える余地があります。志望校の要項で締切を確認してください。
専門学校・短期大学という手
就職状況の数字だけを見ると、専門学校は強く見えます。令和7年度の調査(令和8年3月卒業者・4月1日現在)では、就職率は大学98.0%、短期大学97.4%、専修学校(専門課程)98.6%、高等専門学校99.2%でした[17]。
ただし、この数字を「専門学校のほうが就職に強い」と読むのは正確ではありません。文部科学省が同じ資料に書いているとおり、ここでいう就職率は卒業者全体ではなく「就職希望者に対する割合」です[17]。
そして就職を希望する人の割合そのものが学校種で大きく違います=大学75.6%、短期大学80.4%、専修学校(専門課程)88.2%、高等専門学校59.0%[17]。分母が違うものを並べているので、そのままでは比べられません。
もう1つ。この調査は全数調査ではなく抽出調査で、対象は112校6,250人。うち専修学校は20校560人です[17]。「98.6%」という数字の精度は、その規模から想像される程度のものだと考えておくのが誠実です。
専門学校・短大を選ぶ理由になるのは、就職率の小数点以下ではなく「その分野の仕事に就くための最短路になっているか」です。そこが噛み合っていれば強い選択肢で、噛み合っていなければ「大学に行けなかったから」という理由だけで進むことになります。
お金の話を、親子で同じ表で見る
ここからが、この時期にいちばんこじれる話です。子どもは志望で判断し、親は費用で判断します。同じ食卓で話しているのに、見ている表が違う。だから話が進みません。
そこで、公的な統計から取れる数字だけを1つの表にします。予備校の相場や留学費用の目安のような「調べても出典が辿れない数字」は入れていません。
| 進む先 | 初年度に納める額 | 卒業後の初任給(学歴別) |
|---|---|---|
| 私立大学 文科系 | 121.2万円(実験実習料等も含む総計=130.1万円) | 大学 約26.2万円 |
| 私立大学 理科系 | 160.2万円(同 171.7万円) | 大学 約26.2万円 |
| 私立大学 全平均 | 138.1万円(同 150.8万円) | 大学 約26.2万円 |
| 私立の短期大学 全平均 | 114.1万円(同 128.8万円) | 高専・短大 約23.6万円 |
| 専門学校 | (学校ごと) | 専門学校 約23.1万円 |
| 浪人して翌年進学 | 上記+浪人1年の費用 | 同じ(社会に出るのが1年遅くなる) |
この表で最初に確認してほしいのは、「初年度納付金」という同じ言葉で2つの数字が流通していることです。文部科学省の調査は、授業料+入学料+施設設備費を「合計」、そこに実験実習料などを加えたものを「総計」として別に出しており、文科系なら合計121.2万円/総計130.1万円、理科系なら合計160.2万円/総計171.7万円です[16]。
ネットで見る金額がばらつくのは、このどちらを引いているかが違うためです。親子で話すときは、どちらの数字で話しているかを先に合わせてください。
筆者の体験
我が家でも、子どもの中学のときに英語重視の学校やインターナショナルスクールを候補に入れて、情報を集めていました。子どもが行きたいと言ったわけではなく、私が入れたいと思って調べていたほうです。それでも結局は、家からの距離と費用で断念しました。近くにあったとしても、我が家では入れなかったと思います。
親が乗り気だった進路でも、距離と費用で消えることはあります。だから親が金額の話を持ち出すのは、必ずしも子どもの希望に反対しているからではありません。先に金額をはっきりさせるほど、話は前に進みます。
浪人の費用は「相場」ではなく、自分の家の見積りで出す
浪人の費用について、ネット上には「大手予備校なら年間80〜120万円」のような相場がたくさん流れています。この記事はそれを載せません。予備校の授業料は、公表の形が「コースごと」になっていて、一律の相場という形では存在しないからです。
たとえば河合塾の大学受験科は、学費を「入塾金+授業料」と定義し、入塾金は70,000円、授業料はコースにより異なると明記しています。授業料の金額は各コースの詳細ページで確認する形で、さらに学費以外に、タブレット端末代、小論文の添削料、オプション講座や各講習の受講料がかかることも書かれています[21]。
つまり「浪人はいくらか」は、通う校舎とコースを1つ決めて初めて数字になります。親と話す前にやるべきことは、相場を調べることではなく、候補を1〜2つに絞って、そのコースの授業料を公式サイトで拾い、諸費用を足した1つの金額にすることです。「だいたい100万円くらい」と「〇〇校の〇〇コースで、入塾金7万円+授業料〇万円+講習〇万円で合計〇万円」では、話の進み方がまったく違います。
借りる場合の条件は、2026年に変わっている
「借りればいい」という話になったときに、条件を古い記憶で話すと計算が狂います。日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)の条件は次のとおりです。
| 金利 | 年4.05%(令和8年7月1日現在・固定金利・保証料別) |
|---|---|
| 金利の優遇 | 交通遺児家庭、母子家庭、父子家庭、世帯年収200万円以内、子ども3人以上かつ世帯年収500万円以内は▲0.4% |
| 融資限度額 | 子ども1人につき350万円以内。自宅外通学・修業年限5年以上の大学・大学院・海外留学のいずれかなら450万円以内 |
| 返済期間 | 20年以内 |
| 在学中 | 元金を据え置いて利息のみの返済にできる |
この金利は動いています。同じ公庫が令和8年2月に配っていたリーフレットの返済例は年3.55%で計算されていました[24]。数年前の記事や、以前に調べた記憶のまま話すと、返済総額の見積りが大きくずれます。いま借りるならいくら返すのかは、いまの金利で計算してください。
在学中は利息のみの返済にできる[15]点は、家計の見通しを立てるうえで大きい仕組みです。「入学時に一括で払えないから無理」と即断する前に、支払いの時期をずらせるかどうかを含めて計算してみてください。


親と意見が割れたとき、何を見せれば話が進むか
「浪人は絶対に許さない」「確実に受かるところに下げろ」と言われて、納得できないまま出願の日が近づいている。この時期に、回答がいちばん伸びていた悩みです。
ネット上の助言は「まず親の話を聞こう」「気持ちを伝えよう」に集まりがちですが、それだけでは動かないことがあります。親の反対は、気持ちの問題に見えて、実際には見積りの問題であることがあります。反対の理由には型があり、型ごとに見せるものが違います。
| 親が反対する理由 | そのとき見せるもの |
|---|---|
| お金が出せない | 相場ではなく1つに絞った実額(校舎・コースを特定した見積り)と、教育ローンの現在の条件・在学中は利息のみにできること |
| 浪人しても伸びるとは思えない | 志望校の配点表。共通テストの比重が2割の大学もある=伸ばす対象が「共通テスト」ではなく「二次」だと具体的に示す |
| 受かるところに出しておけばいい | 前期に手続きすれば後期は自動的に対象外になること=安全校と挑戦校は二者択一ではないと示す |
| もう決めた時間がない・迷っている場合ではない | 締切のカレンダー。決めるのは出願の組み合わせまでで、進学先の決定は3月に持ち越せると示す |
順番も大事です。「行きたい」から始めると、親は費用の話で返します。逆に、費用の実額を自分で調べて先に出すと、話が「出せるか出せないか」の現実的な相談に変わります。子どもの側から金額を出すという行為そのものが、「本気で考えている」という証拠になります。
親が「無理」と言うとき、子どもの目にはそれが結論に見えます。ただ、その言葉が出るまでに何を見て計算していたのかは、子どもには共有されていないことがあります。だから覆すために必要なのは、気持ちを強く伝えることよりも、その計算をもう一度、二人で同じ数字でやり直すことです。
正直に書くと、浪人が向かない場合もある
親の心配に一理あるケースもあります。ここを飛ばすと、この記事は「浪人を勧める記事」になってしまうので、はっきり書きます。
- 共通テストの失敗が、当日の事故ではなく実力どおりだった場合。1年あれば伸びるのは事実ですが、伸ばすための課題を自分で言語化できていない状態で1年を始めると、同じ結果になりやすい
- 費用の負担が、家計に無理をさせる場合。この記事の趣旨は「借りれば行ける」ではありません。返すのは20年以内で、返すのは家計です
- 行きたい理由が「その大学の名前」しかない場合。1年を賭ける対象が名前だけだと、途中で崩れやすい
逆に言えば、この3つに当てはまらないなら、親の反対は「事実で動かせる反対」です。上の表の右列を、順番に用意してください。
3つのうち、費用と「大学の名前だけになっていないか」は、家の中で答えが出ます。残るのは1つ目です。何を変えれば結果が動くのかを、自分の言葉で説明できるかどうか。学校の先生でも予備校の面談でも構いません。もう1年を始めると決める前に、それを人に説明してみてください。
「やってはいる。でも伸びない。」
まず60分、原因を見てもらう。
大学受験|全国対応(地域により対面/オンライン)
共通テスト・各大学の対策と、苦手科目の克服に対応
✓ 勉強しているのに成績が上がらない
✓ 第一志望に学力が届くのか分からない
✓ 何を優先すればいいのか決められない
学研の家庭教師はカウンセリング(学習相談)と体験指導で約60分・無料。進路面談もでき、いまの答案から「何が抜けているか」を先に聞けます。高校生コースは1時間あたり4,950円(税込)〜の月謝制で、高額教材の販売はありません。
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3月末まで、まだ椅子は動く
最後にもう1つ、この時期にほとんど語られない事実があります。国公立大学には欠員補充第2次募集という仕組みがあり、出願受付は3月28日から始まり、3月31日までに合格発表が行われます[4]。
後期の入学手続締切(3月27日)を過ぎた時点で欠員が出た大学が、その後に募集をかけるものです。対象になるのは、3月24日の時点でどの国立大学にも合格していない人、または合格していても入学手続をとっていない人です[4]。数も学部も年によって違うので、当てにして出願計画を緩めるものではありません。
ただ「3月に入った時点で全部終わり」ではないことは、知っておいて損がありません。私立大学や短期大学の日程は大学ごとに違うので、まだ出願できる入試が残っていないか、志望校の入試日程を確認してください。
今年の受験が終わった後に考える道
ここまでは「締切までの2週間」の話でした。以下は今年の出願とは切り離して、3月以降に考える選択肢です。いま急いで決める話ではないので、出願を終えてから読んでください。
1つは海外の大学です。日本の大学受験と併走させるのは時期的に無理がありますが、浪人という1年をどう使うかを考えるとき、選択肢として乗ってきます。当サイトはIB(国際バカロレア)と海外進学を専門に扱っているので、必要な条件と費用は個別の記事にまとめています。
もう1つ、アメリカのコミュニティカレッジから4年制大学へ編入するルートについて、ネット上には「成功率7割」といった数字が流れています。これは公的な統計と合いません。全米学生情報センターの調査では、2018年秋にコミュニティカレッジに入学した人のうち6年以内に4年制大学へ編入したのは31.6%、そのうち学士号まで到達したのは48.7%でした[20]。
「7割」に近い数字は編入した人の中の別の割合であって、編入そのものの成功率ではありません。安く抜けられる裏道として計算するのは危険です。
ただし費用と語学の要件はどちらもハードルが高く、思いつきで進められる道ではありません。条件は当サイトの留学記事で先に確認してください。
IBで目標の点に届かなかったときは?
共通テストではなく、IB(国際バカロレア)で目標の点に届かなかった、という人もここに辿り着きます。制度も時期も共通テストとは違うので、この記事の日程表はそのまま使えません。
ただし、置かれている状況は似ています。「点が出た後に、まだ手が残っているかどうか」という問いは同じで、IBには再受験(リテイク)と再採点(リマーク)という固有の手段があります。どちらを選ぶか、いつまでに決めるかの判断基準は別記事にまとめています。


よくある質問
まとめ
共通テストの結果が出た直後にやることは、気持ちの整理ではなく締切の確定です。国公立の出願は前期・中期・後期をまとめて締め切られ、前期の結果を見てから後期を選ぶことはできません。それを知らないまま2月を迎えると、あとから取り返せません。
そのうえで、全体の得点率だけで志望校を下げないでください。共通テストの比重は大学ごとに違い、失敗した科目によって残っている手も変わります。英語で崩れたなら、英語資格で共通テストの英語を置き換えられる大学があります。二次の比重が高い大学なら、開いた差は圧縮されます。
そして親と意見が割れているなら、伝えるべきは気持ちではなく数字です。相場ではなく1つに絞った実額を、自分で調べて持っていく。それが、この2週間でいちばん効く準備です。
あわせて読みたい記事を置いておきます。



参考情報・出典
- 国立大学協会「国立大学の2027年度入学者選抜についての実施要領」(令和8年6月29日改訂)https://www.janu.jp/cms/wp-content/uploads/2026/06/nyuushi_2027.pdf
- 公立大学協会「公立大学の2027年度入学者選抜についての実施要領」(令和8年6月18日一部改訂)https://www.kodaikyo.org/wordpress/wp-content/uploads/2026/06/00c5687095f604fa138d7bab73550ec5.pdf
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」https://www.mext.go.jp/content/20260529-mxt_daigakuc02-000005144_1.pdf
- 国立大学協会「国立大学の2027年度入学者選抜についての実施要領」Ⅴ 欠員補充第2次募集(p.6)https://www.janu.jp/cms/wp-content/uploads/2026/06/nyuushi_2027.pdf
- 文部科学省「令和8年度国公立大学2段階選抜実施状況の概要(前期日程分)」(令和8年2月18日公表)https://www.mext.go.jp/content/20260218-mxt_daigakuc02-000047311_02.pdf
- 同上「大学別2段階選抜実施状況(前期日程)」(p.2)https://www.mext.go.jp/content/20260218-mxt_daigakuc02-000047311_02.pdf
- 東京大学「令和8年度東京大学入学者募集要項(前期日程)」第1段階選抜の予告倍率(p.24)https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400200766.pdf
- 東京大学「令和8年度東京大学入学者募集要項(前期日程)」学力試験の配点(p.24)https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400200766.pdf
- 九州工業大学「英語資格・検定試験の利用[令和9年度入学者選抜]」https://www.kyutech.ac.jp/examination/gs-english-proficiency-test.html
- 九州工業大学「英語資格・検定試験の換算表」(令和8年6月23日版・令和9年度入学者選抜)https://www.kyutech.ac.jp/archives/015/202606/kansanhyo_260623.pdf
- 九州工業大学「令和8年度 一般選抜 学生募集要項」教科・科目の配点(p.9)https://www.kyutech.ac.jp/archives/015/202511/20251105_i.pdf
- 東京都立大学「一般選抜における外部英語検定試験の利用について」(2027年度一般選抜)https://www.tmu.ac.jp/entrance/faculty/36235.html
- 河合塾 Kei-Net「入試用語集|ボーダーライン」https://www.keinet.ne.jp/exam/basic/term/ha_10.html
- 太田みのる(高校教師)「その国公立大学に出願する?しない?」note、2024年1月15日https://note.com/cc_kthm/n/n2590cea7916a
- 日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)ご利用条件・金利・ご返済方法」(令和8年7月1日現在の金利)https://www.jfc.go.jp/n/finance/ippan/sim.html
- 文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果」(令和7年12月26日公表・私立大学592校)https://www.mext.go.jp/content/20251226-mxt_sigakujo-000046463_1.pdf
- 文部科学省・厚生労働省「令和7年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)」(令和8年5月22日公表)https://www.mext.go.jp/content/20260521-mxt_gakushi01-000049954_1.pdf
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」新規学卒者の学歴別にみた賃金(令和8年3月24日公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/14.pdf
- 大学入試センター「令和8年度大学入学共通テスト 実施結果の概要」https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=2126&f=abm00006108.pdf
- National Student Clearinghouse Research Center「Tracking Transfer」(2026年3月18日更新)https://nscresearchcenter.org/tracking-transfer/
- 河合塾「大学受験科 学費・入塾手続き方法」(2026年度)https://www.kawai-juku.ac.jp/daiju/apply/
- 国立大学協会「国立大学の2026年度入学者選抜についての実施要領」https://www.janu.jp/wp/wp-content/uploads/2024/06/nyuushi_2026.pdf
- 国立大学協会「国立大学の2028年度入学者選抜についての実施要領」https://www.janu.jp/cms/wp-content/uploads/2026/06/nyuushi_2028.pdf
- 日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」リーフレット(令和8年2月)https://www.jfc.go.jp/n/finance/ippan/pdf/kyouiku_leaflet.pdf
