東京都立国際高校の基本情報と特徴

基本データ
学校名 | 東京都立国際高等学校 |
区分 | 公立 |
設立年 | 1989年 |
所在地 | 〒153-0041 東京都目黒区駒場2-19-59 |
公式サイト | 東京都立国際高等学校 |
学校の特色と強み
東京都立国際高等学校(以下、都立国際高校)は、都立高校としては唯一の国際学科のみを設置している高校です。1989年に創立され、「Keep Learning, Keep Changing, and Keep Smiling」をモットーに掲げ、国際的な教育環境と高い英語力を活かして、国際社会で活躍できる人材の育成に力を入れています。
最大の特徴は、海外からの帰国生徒や在京外国人生徒が全校生徒の約3割を占め、その出身国は40カ国以上に及ぶという多様性です。この環境の中で日常的に異文化交流が行われ、自然と国際感覚を身につけることができます。
- 進学指導特別推進校として指定され、進学実績向上にも注力
- GE-NET20指定校(Global Education Network)として外国語教育を充実
- 東京グローバル10指定校として国際理解教育を推進
- 2015年5月に日本の公立高校初の国際バカロレア・ディプロマプログラム認定校に


都立国際高校の設置コース
東京都立国際高等学校は、以下の2つのコースに分かれています。
国際学科
国際バカロレアコース
国際学科
国際学科は、英語を中心とした多言語教育と国際理解教育に重点を置いたコースで、世界各国の文化や社会について学びながら、高い言語能力と国際的な視野を身につけることができます。
英語だけでなく、第二外国語としてドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、ハングル語から選択して学習することができ、異文化コミュニケーション能力を高めることが可能です。
国際バカロレアコース
世界共通の教育プログラムである国際バカロレア(IB)ディプロマプログラムを中心に構成されています。2年生、3年生でIBDPの科目を学習し、3年生時に世界共通の統一試験でフルディプロマの資格取得を目指します。
- 総合的な学習スキルや批判的思考能力、独立した研究能力の育成
- DP科目の「日本語A:文学」「日本語B」と一部科目以外はすべて英語で授業
- 日本の学習指導要領とIBDPの両方の要件を満たし、日本の高校卒業資格も取得可能

IBコースは2015年の開設以来、フルディプロマ取得率100%を維持していて、卒業生の平均スコアが40を超えた年もある優れた実績を誇ります。
IBコースはとても魅力的ですが、その分、学習負荷が高いなどの大変な側面もあります。このような専門的で負荷の高いカリキュラムに対応するため、IB対策に特化した家庭教師サービスEDUBALなどを活用し、個別のサポートを受ける生徒もいます。
公立高校でIBを目指すことのメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、より深く知りたい方はあわせてお読みください。

偏差値・入試倍率・難易度
偏差値ランキング
都立国際高校の偏差値は、複数の予備校・教育機関によると64~69の範囲に位置し、東京都内の公立高校の中でも上位にランクされています。
サイト名 | 偏差値 | 備考 |
---|---|---|
みんなの高校情報 | 68 | 東京都35位(2025年度) |
思い出こみゅ | 68 | 全国219位 |
市進 高校受験情報ナビ | 64 | 合格可能性80%の目安 |
学校リサーチ! | 69 | 難関校として紹介(2024年度) |
入試概要
募集人数
入試には以下の種別があり、それぞれ異なる募集人数となっています。
種別 | 募集人員 |
---|---|
一般生徒 | 140名 一般:98名 推薦:42名 |
海外帰国生徒対象 | 日本人学校出身者:15名 外国の学校出身者:25名 |
在京外国人生徒 | 25名 |
IBコース | 日本人生徒:15名 外国人生徒:5名 |
試験科目・内容
国際学科の試験内容
種別 | 検査内容 |
---|---|
一般生徒 (推薦) | 小論文 個人面接 書類 |
一般生徒(学力) | 5教科 |
帰国生徒 (現地校) | 作文(日or英) 個人面接(日or英) |
帰国生徒 (日本人校) | 国語 数学 英語 個人面接 |
在京外国人生徒 | 作文(日or英) 個人面接(日or英) |

国際バカロレアコースの試験内容
検査方法 | 時間 | 満点 | 使用言語 |
---|---|---|---|
① 英語運用能力検査 ・筆記試験 ・面接試験 | 筆記:60分 面接:10分 | 100 | 英語 |
② 数学活用能力検査 | 60分 | 100 | 日本語または英語 出願時に選択 |
③小論文 | 50分 | 200 | |
④個人面接 | 15-20分 | 200 | |
⑤調査書 | 30 | ||
③〜⑤の総合計 | 430 | ※英語運用能力検査と数学活用能力検査の得点は総合成績に含めません。 |
※調査書を除く各検査にはそれぞれ”合格基準点”が設けられていて、1つでも基準に達していない場合は不合格となるため、すべての検査で一定以上の得点を取る必要があります。
入試倍率の推移
近年の入試倍率は次のようになっています。
国際学科(一般生徒)
年度 | 種別 | 募集人数 | 受験者数 | 合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|---|---|
2024 | 推薦 | 42 | 153 | 42 | 3.6 |
一般 | 98 | 195 | 101 | 1.9 | |
2023 | 推薦 | 42 | 178 | 42 | 4.24 |
一般 | 98 | 240 | 100 | 2.38 | |
2022 | 推薦 | 42 | 152 | 42 | 3.32 |
一般 | 98 | 212 | 100 | 2.12 |
国際バカロレアコース
年度 | 種別 | 募集人数 | 受験者数 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
2025 | 日本人 | 15 | ||
外国人 | 5 | |||
2024 | 日本人 | 15 | 73 | 4.87 |
外国人 | 5 | 32 | 6.40 | |
2023 | 日本人 | 15 | 51 | 3.40 |
外国人 | 5 | 31 | 6.20 |
近年の入試倍率は低下傾向にあり、2024年の私立高校授業料無償化政策の影響や、他の都立高校での国際教育プログラムの充実により、国際高校の独自性が相対的に低下している可能性が指摘されています。
入試対策のポイント
都立国際高校を受験する際の対策ポイントをまとめます。
英語対策(自校作成問題)
一般入試では英語のみ自校作成問題となっていて、傾斜配点も2倍となるため、英語の対策が特に重要です。
- リスニング、対話文完成問題、整序問題、長文読解、英作文が出題される
- 2024年度は大問構成が変更され、リスニング3題、長文読解2題、単独の英作文が出題された
- 長文の量が多く、設問数も多いため、時間配分を意識した対策が必要
- 英作文は50語以上の記述が求められる
過去問活用法
自校作成問題に対応するためには、過去問演習が必須です。
- 都立国際高校の公式ウェブサイトで過去問を入手する
- 他の自校作成校の過去問も併せて解くことで、応用力を養う
- 早い段階から英語力を強化し、注釈なしで長文が読める実力をつける
- 特に、50語以上の記述が求められる英作文やリスニング能力は、独学だけでは対策が難しい部分です。ネイティブ講師とマンツーマンで実践的な練習ができるオンライン英会話【Cambly(キャンブリー)】
などを活用して、表現の幅を広げたり、添削指導を受けたりするのも効果的な戦略です。
合格に必要な学力目安
一般的な合格目安
- 都立高校の共通問題で410点(500点満点)程度が取れる学力
- 内申はオール4、できれば”5″が3つ程度ある
- 「基本問題で取りこぼさない」「理社で失敗しない」ことが重要
このように5教科全てで高いレベルが求められるため、特定の塾に通うだけでなく、質の高い教材で網羅的に学習を進めることも重要です。
特に、難関校対策や記述問題の添削指導に定評のあるZ会の通信教育
などを活用し、苦手分野をなくし、総合力を高めていくのが合格への近道です。
学校生活・制服・校則の実態
制服
国際高校の制服は以下のようになっています。

- 冬服:ブレザーにズボン(男子)・スカート(女子)
- 夏服:ズボン(男子)、スカート(女子)
- ネクタイ、リボンの色や柄の指定はありません
制服は比較的自由度が高く、多様性を尊重する校風が反映されています。口コミサイトでも制服の評価が高い傾向にあります。
校則
多様性を尊重する校風を反映し、比較的自由度の高い校則となっています
- 髪型や服装に関する制限が少なく、生徒の個性を尊重する姿勢
- 冬服の時期にはネクタイとブレザーの着用が必要
- 髪染め、ピアス、着崩しなどに対する厳しい規制はない
主な学校行事
都立国際高校の主な行事には以下のものがあります
- 体育祭:5月に開催され、全校生徒が赤・白・青の3つの団に分かれて競う
- 桜陽祭(文化祭):9月中旬の土日に開催される学校最大の行事
- ESCA(English Summer Camp):1年生が参加する2泊3日の英語合宿
- スピーチコンテスト:英語だけでなく他言語でのスピーチも披露される国際色豊かな行事
部活動
体育系クラブ15、文化系クラブ10など、多様な部活動が展開されています。文化系クラブには、他の都立高校にはない「国際教育ボランティア部」があり、国際的な視野を取り入れた活動ができます。
進学実績
国公立・私立大学合格実績
都立国際高校は進学指導特別推進校として、難関大学への進学実績も優れています。2024年度の現役生の合格実績を見てみましょう。
国公立大学 | 私立大学 |
---|---|
東京大学:1名 (現役合格率0.45%) | 早慶上理:113名(現役合格率50.45%) 早稲田大学:38名(現役合格率16.96%) 慶應義塾大学:15名(現役合格率6.7%) 上智大学:60名(現役合格率26.79%) |
東京一工医:3名 | GMARCH:190名(全体の26.3%) |
旧帝大(東大・京大除く):9名 | 成成明学國武:52名(7.2%) |
関東圏国公立:12名 | 日東駒専:86名(11.9%) |
IB生は具体的にどのような入試方式で大学進学を目指すのでしょうか。その多様な出願パターンについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

海外大学進学状況
国際バカロレアコースを中心に、毎年多くの生徒が海外大学に進学しています。
海外大学への合格者は卒業生の約15%(100名以上)を占めていて、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、オランダ、ベルギー、ハンガリー、韓国、シンガポールなどの名門大学にも合格者を輩出しています[1]。

IBコース生の進学実績
以下はIBコース生の大学合格実績です
区分 | 海外大学 | 国内大学 |
---|---|---|
IBコース5期生 (既卒生も含む) | 75名 | 14名 |
IBコース4期生 (既卒生も含む) | 62名 | 17名 |
IBコース3期生 | 53名 | 15名 |
IBコース2期生 | 31名 | 10名 |
IBコース1期生 | 67名 | 12名 |
学費など費用について
年間授業料と諸費用
都立高校としての基本的な学費構成となっています。
項目 | 学年 | 一般 | IB |
---|---|---|---|
授業料 | 各学年 | 118,800円 | 同左 |
学年積立金 | 1年 | 100,000円 | 160,000円 |
2年 | 124,000円 | 220,000円 | |
3年 | 28,000円 | 同左 | |
PTA会費 | 1年 | 4,000円 | 同左 |
2年 | 4,000円 | 同左 | |
3年 | 7,500円 | 同左 | |
生徒会費 | 各学年 | 5,000円 | 同左 |
なお、国際バカロレア(IB)コースの学費は、公立か私立か、あるいはインターナショナルスクールかによって大きく異なります。以下の記事で詳しく比較解説しているので、他の選択肢とも比べてみたい方はぜひ参考にしてください。

授業料免除・奨学金制度
経済的負担を軽減するための様々な支援制度が用意されています
- 就学支援金制度
世帯年収910万円以下の世帯を対象に授業料に充てる支援金 - 授業料免除制度
就学支援金の対象とならない生徒について、都が授業料を全額免除 - 多子世帯における都立学校授業料等支援事業
23歳未満の子等が3人以上いる世帯に対して、授業料等が半額になる制度 - 奨学のための給付金制度
授業料以外の教育費の負担を軽減するための返済不要の給付金 - 端末購入支援金補助
タブレットや端末を購入する際、保護者負担額を原則3万円以内に軽減する制度
著名な卒業生と進路実績
主な著名卒業生一覧
都立国際高校からは多くの著名人が巣立っています。
- KREVA(ミュージシャン):1976年生まれ。ヒップホップユニット「KICK THE CAN CREW」のメンバーとして活躍。都立国際高校卒業後、慶應義塾大学環境情報学部へ進学。
- ホラン千秋(タレント、キャスター):1988年生まれ。都立国際高校から青山学院大学文学部英米文学科へ進学。
- 水野真裕美(アナウンサー):1983年生まれ。TBSアナウンサー。都立国際高校から明治大学文学部英文学科へ進学。
- そのほか、鈴木ともこ(漫画家)、坪内一樹(鹿児島テレビアナウンサー)など、各界で活躍する卒業生を多数輩出しています。
在校生・保護者の口コミと評判
在校生・保護者からの良い評判
生徒や保護者からは以下のような良い評判が寄せられています
- 多様な背景を持つ生徒が集まる国際的な環境
- 自由な校風と緩い校則で自分らしさを発揮できる
- 英語力やコミュニケーション能力が自然と身につく
- 文化祭などの行事が充実している
- 留学や国際交流の機会が豊富
気になる点・デメリット
一方で、以下のような課題点も指摘されています
- 課題が多く、自由時間が限られる
- 英語ができないと授業についていくのが厳しい
- 「陽キャ」な校風が合わない生徒には少し居づらい面もある
- 校舎の設備面に一部古い部分がある
まとめ
都立国際高校は、国際的な視野を持つ人材育成と高度な学力向上を両立させる教育環境を提供している学校です。
全校生徒の約3割を占める帰国生や在京外国人生徒との日常的な交流、充実した語学教育、そして日本の公立高校初の国際バカロレアプログラムの提供など、グローバル人材の育成に力を入れる一方で、国内外の難関大学への進学実績も着実に積み上げています。
自由な校風の中で、生徒一人一人が自分の目標に向かって主体的に学び、その過程で国際感覚も自然に身につけられる環境は、将来グローバルに活躍したい生徒にとって大きな魅力となっています。
入試は難関ですが、英語力と国際感覚を磨きたい意欲ある生徒には、大きな成長の機会を提供してくれる学校と言えるでしょう。