「国際バカロレア(IB)を考えているけど、英語力が足りるか不安…」
「IBディプロマを取るには、どれくらいの英語力が必要なの?」
「日本人でもIBの高得点は取れるの?」
こんな疑問や不安を持っている方は多いのではないでしょうか。
国際バカロレア・ディプロマプログラム(IBDP)では、一部もしくは全部(ほとんど)の科目を英語で受講するため、多くの方が英語力に不安を感じています。
この記事では、IBDPに必要な英語レベルから、実際の試験内容、具体的なデータに基づくIBの英語に関する疑問を解決していきます。
国際バカロレア(IB)と英語の関係性
国際バカロレア(IB)は、スイスのジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構(International Baccalaureate Organization: IBO)が提供する国際的な教育プログラムです。1968年に設立され、現在では世界160の国・地域の約5,800校で実施されています。[1]
IBは「探究する人」「知識のある人」「考える人」など10の学習者像を理想とし、グローバル社会で活躍できる人材の育成を目指しています。[2]
IBプログラムは基本的に英語、フランス語、スペイン語で実施されますが、日本では「日本語DP」という特別なプログラムも導入されています。
しかし、日本語DPであっても、一部の科目は英語での履修が必須となっています。
- グローバル基準の教育
世界共通の教育プログラムとして、国際的なコミュニケーション言語である英語を重視しています - 海外大学進学への対応
IBディプロマは世界の大学で入学資格として認められており、英語力は海外大学進学の基礎となります - 批判的思考力の育成
英語で学ぶことで、多様な視点から物事を考える力を養います
つまり、IBと英語は切っても切れない関係にあり、どのレベルでIBに挑戦するにしても、一定の英語力は必要となります。
入学時に必要な英語レベル
日本語DP vs 英語DP
IBプログラムへの入学に必要な英語力は、「公立、私立、インター」などの学校の種類や、「日本語DPと英語DP」で大きく異なります。
日本語DPと英語DPの違い
- 日本語DP
- 6科目中4科目を日本語で履修可能
- 残り2科目(グループ2の外国語ともう1科目)は英語で受講
- 比較的英語力の負担が少ない
- 英語DP
- 基本的にすべての科目を英語で受講
- 英語での理解・思考・表現が常に求められる
- より高い英語力が必要
入学に必要な英語力の目安
学校によって若干の違いはありますが、一般的な目安は以下の通りです。
プログラム | 英検 | CEFR |
---|---|---|
日本語DP | 準2級〜2級 | A2〜B1 |
英語DP | 2級〜準1級 | B1〜B2 |
この表はCEFRと英検の対照関係に基づいています。CEFRは「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠」で、言語能力を国際的に比較できる枠組みです。[3][4]
これはあくまで入学時点での目安であり、プログラム進行とともに英語力を高めていくことが期待されています。特に日本語DPでも、最終的には英語での科目履修や試験に対応できるレベルまで英語力を引き上げる必要があります。
学校タイプ別の英語基準
IBプログラムを提供している学校は、英語の使用度合いによって以下のように分類できます。
- 英検準1級〜1級レベルが求められることが多い
- ネイティブ並みの英語環境での学習
- 英検2級〜準1級レベルが目安
- 徐々に英語の授業比率が高まる傾向
- 英検準2級〜2級レベルから入学可能
- 英語科目に特化して英語力を高める
IB科目選択と英語力の関係
IBディプロマプログラム(IBDP)では、6つのグループから各1科目、計6科目を選択して履修します。この選択が、必要な英語力に大きく影響します。
言語系科目の選択肢
特に英語力と関連が深いのは、グループ1(言語と文学)とグループ2(言語習得)の科目選択です。
- グループ1(第一言語・母語)
- Japanese A
日本語を第一言語として学ぶ(日本人が多く選択) - English A
英語をネイティブレベルで学ぶ(高度な英語力が必要)
- Japanese A
- グループ2(第二言語)
- English B
第二言語としての英語(中級〜上級レベル) - English ab initio
初級レベルの英語(一部の学校のみ提供)
- English B
多くの日本人学生は、グループ1で「Japanese A」を、グループ2で「English B」を選択します。英語力が高い場合は、グループ1で「English A」を選択することも可能です。
SLとHLの違い
さらに、各科目には「SL(Standard Level:標準レベル)」と「HL(Higher Level:上級レベル)」があり、難易度が異なります。
- English B (SL)の特徴
- 試験時間が比較的短い
- ライティングの指定語数が少ない(250〜400語)
- 標準的な語彙と文法で対応可能
- English B (HL)の特徴
- より長い試験時間(SLより15〜30分長い)
- ライティングの指定語数が多い(450〜600語)
- 高度で複雑な語彙・文法・表現力が求められる
英語に自信がある場合はHLに挑戦し、不安がある場合はSLから始めるという選択肢もあります。ただし、海外の有名大学を目指す場合は、HLでの高得点が求められることもあるので、希望進路の条件を確認する必要があります。
他教科の英語負担
日本語DPでも、グループ2以外に1科目は英語で履修する必要があります。この科目選択も重要です。
- 歴史や経済
文献読解や論述が多く、英語での思考力が強く求められる - 数学や理科
専門用語の理解が必要だが、論述よりも計算や実験が中心 - 芸術
実技と理論のバランスがあり、表現に関する語彙が必要
英語に不安がある場合は、数式や図表で表現できる数学や理科系の科目を英語で履修する方が、負担が少ない場合もあります。
最終試験で高得点を取るために必要な英語力
IBの最終評価は45点満点(6科目×7点+コア科目3点)で行われます。特に英語科目で高得点を取るためには、相応の英語力が求められます。
最終試験に必要な英語レベル
英語科目で高得点(6点や7点)を取るために必要な英語レベルは以下の通りです。
科目 | CEFRレベル | 英検換算 |
---|---|---|
English A (SL) | B2+〜C1 | 準1級〜1級 |
English A (HL) | C1〜C1+ | 1級 |
English B (SL) | B2〜B2+ | 準1級 |
English B (HL) | B2+〜C1 | 準1級〜1級 |
これは非常に高いレベルであることがわかります。特にEnglish B (HL)やEnglish Aでの高得点は、日本人学生にとって大きなチャレンジとなります。[5]
IBの英語科目の成績とCEFRのレベルとの相関表

CEFRレベルの意味
- B1
-
日常的な話題について理解・対応できる(留学初期レベル)
- B2
-
抽象的な話題も含め、自然な会話ができる(留学中〜後期レベル)
- C1
-
専門的な内容でも流暢に表現できる(バイリンガルに近いレベル)
- C2
-
ネイティブとほぼ同等の理解・表現が可能(バイリンガルレベル)
高得点を目指す場合、少なくともB2レベル(準1級相当)、理想的にはC1レベル(1級相当)の英語力を身につける必要があります。[6][7]

最終試験での英語評価の実態
実際のIB最終試験の成績データを見てみましょう。2024年11月のEnglish B試験の結果は以下のとおりです[8]。
- English B (HL):平均スコア5.0点(7,950人中)
- English B (SL):平均スコア5.1点(1,380人中)
これを見ると、平均点は5点前後と比較的高いことがわかります。ただし、これは世界中の受験者(英語圏の学生を含む)の結果であることに注意が必要です。日本人学生の平均はこれより低い可能性があります。
IBの英語力を伸ばすための効果的な学習法
入学前の準備
学習分野 | 具体的な取り組み |
---|---|
基礎英語力の強化 | • 英文法の総復習(論理展開に関わる接続詞・前置詞中心)<br>• 語彙力増強(英検2級〜準1級レベル)<br>• 長文読解練習(英字新聞・英語記事の日常読書) |
英語での思考習慣づけ | • 英語日記(毎日100語から始め徐々に増量)<br>• 身の回りのことを英語で説明する練習<br>• 英語で考える時間を意識的に確保 |
リスニング・スピーキング強化 | • 英語ポッドキャスト・YouTube視聴習慣化<br>• シャドーイング練習(聞いた英語を即座に再現)<br>• オンライン英会話・ディスカッション参加 |
入学後の継続学習
学習分野 | 具体的な取り組み |
---|---|
授業の予習・復習 | • 事前教材読み込みと未知語リストアップ<br>• 専門用語単語帳の科目別作成<br>• 授業ノートの英語での再構成 |
アクティブラーニング | • ディスカッションへの積極参加<br>• プレゼンテーション機会の自発的創出<br>• 英語での質問・発言習慣の確立 |
ピアラーニング | • 英語学習グループの形成<br>• 課題の相互レビュー<br>• 英語上級者からのフィードバック獲得 |
試験対策
学習分野 | 具体的な取り組み |
---|---|
過去問演習 | • 時間制限付き演習<br>• 模範解答との比較分析<br>• 時間配分の最適化訓練 |
ライティング強化 | • 英語特有の論理構成習得(主張→根拠→例示)<br>• 評価基準に沿った文章作成練習<br>• 定期的な添削指導 |
オーラル試験対策 | • 想定質問への回答準備<br>• 録音による自己発音チェック<br>• 模擬環境でのスピーキング練習 |
【PR】
英語力を伸ばすには
「話す」トレーニングが重要
「AI英会話Speak」は
🤖 ネイティブ講師との対話再現
💬 実践的な英会話練習
⏰ 24時間いつでもできる
よくある疑問と解説
- 英語が苦手でも国際バカロレアに挑戦できるか?
-
日本語DPなら英検準2級〜2級レベルから挑戦可能。継続的な学習意欲が大切です。[9]
- IBの英語の授業は日本の高校の英語とどう違うか?
-
実践的コミュニケーション能力と批判的思考力を重視し、ディスカッション、文学分析、エッセイ作成などアウトプット中心です。言語スキルと思考力の統合的な育成を目指しています。[10]
- English AとEnglish Bの違いは?
-
English Aはネイティブレベル向けの文学・言語分析、English Bは第二言語学習者向けのコミュニケーション重視です。
English Aは第一言語(母語または母語に近いレベル)として、English Bは外国語として学ぶ生徒向けに設計されています。[11]
- 高得点に必要なスキルは?
-
文法・語彙だけでなく「批判的思考力」と「論理的表現力」が重要です。言語運用能力だけでなく分析力や創造的思考も評価対象となります。[12]
- 海外大学進学には追加の英語試験が必要?
-
大学により異なりますが、多くの場合IBスコアに加えTOEFLやIELTSが求められます。特に英語圏の大学では、English Bの高得点でもIELTSやTOEFLのスコア提出を求められることがあります。[13]
- 日本人学生が苦労する分野は?
-
「スピーキング」と「アカデミックライティング」が課題となることが多いです。特に口頭試問と論理的エッセイ構成が難しいとされています。[14]
- 日本語DPと英語DPはどちらが有利?
-
進学先によって異なります。海外大学進学を目指すなら英語DPが有利ですが、国内大学でも国際バカロレア入試を採用するところが増えており、日本語DPでも十分対応可能です。最終的には総合得点と科目選択が重要となります。[15]
参考情報、引用情報
- 国際バカロレア機構(IBO)公式サイト
- 文部科学省IB教育推進コンソーシアム
- 文部科学省「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」
- 旺文社 教育情報センター「新CEFR対照表(2025年3月版)」
- 国際バカロレアの英語レベルに関する分析
- 国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEIC Program各テストスコアとCEFRとの対照表」
- 文部科学省「外国語教育政策資料」
- 国際バカロレア機構「DP Statistical Bulletin」
- 文部科学省「外国語教育政策資料」
- 国際バカロレア機構「IBの教育とは」
- 国際バカロレア機構「ディプロマプログラムのカリキュラム」
- 国際バカロレア機構「DPの評価と試験」
- 国際バカロレア機構「大学入学」
- EDUBAL「IB英語対策」
- 国際バカロレア機構「大学入学資格としてのIB」